東北大学の学生2人、流星群観測衛星の実現を目指す

【2000年9月1日 SPACE.com (2000.8.29)

日本機会学会などの主催による『第7回 衛星設計コンテスト(1999年)』においてアイデア大賞を受賞した東北大学の学生2人が、大賞を受賞したその衛星の実現を目指している。

その衛星は、「BottleSat(B-Sat)」と呼ばれ、複数のペットボトルサイズの小型衛星を低軌道に打ち上げ、近年中に大出現が予想されている「しし座流星群」の流星および流星痕を、地上FM放送局を送信源とするレーダで地上と軌道上から立体的に多点観測を行うというもの。考案したのは、東北大学工学部・吉田研究室の当時4年生、浜野博史さんと安孫子聡子さんの2人。実現すれば、世界初の流星観測衛星の誕生となる。

「私たちは、アイデアの実現のため、みなさんの協力を必要としています。」吉田和哉助教授は、最近開催された『第14回 小型衛星カンファレンス(The 14th annual Conference on Small Satellites)』に出席した何百人もの専門家たちを前にしてこう語った。

衛星の実現のためには少なくとも100万ドルの資金が必要と見込まれるが、しかし、「我々にはそんな莫大な資金はありません」と吉田助教授。吉田助教授は、東北大学の東北大学の大学院工学研究科・航空宇宙工学専攻・宇宙航空制御学講座に所属する。

吉田助教授によると、2002年11月の「しし座流星群」の観測のため、その数か月前までに衛星を打ち上げることを目指しており、衛星の製作と、何らかのロケットの副積載物として衛星を打ち上げるため、協力者を探しているという。

質量約30kgの衛星のミッションは、2002年の「しし座流星群」の活動が極大に達すると見込まれる2002年11月19日前後の約1週間。吉田助教授によると、以前は、より大出現の可能性が高いとされる2001年の「しし座流星群」に間に合わせることを目標にしていたが、残念ながらもう2001年には間に合わないという。

吉田助教授は既に、アメリカ・カリフォルニア州のサンタクララ大学の協力をとりつけている。サンタクララ大学は、今年1月にカード・デッキ大の超小型衛星を打ち上げた実績を持つ。

吉田助教授によると、流星は上空150km〜200kmぐらいで輝き始め、上空およそ50kmで消滅する。そして流星観測衛星は、上空およそ300kmの円軌道から流星を見下ろす形で観測するという。つまり、地上から観測するよりも近くから流星をとらえることができるわけだ。また、地上から観測する場合より広い範囲を観測できるのも特長。

「これは、実にユニークな視点です。」吉田助教授は語る。「宇宙からのみ実現可能な視点なのです。」

衛星はおよそ30cm四方の大きさの立方体型で、悪天候や都市からの光害に影響されること無く観測可能。また、流星からの紫外線放射――地上からでは大気により散乱されてしまうので観測は難しい――の観測が出来るのも大きな特長であると吉田助教授は言う。

衛星に搭載される観測機器は、1基の広角カメラと、流星の科学組成を分析するための2基の紫外線分光器だ。

彼らは、インターネット・ウェブページ「しし座流星群の軌道上からの観測計画概要およびスポンサー募集について (英文)」でも協力を呼びかけている。それにはこう記載されている。

「このミッションは、政府の宇宙機関や民間の商用のものではなく、学生による低コストの衛星プロジェクトです。たとえわずかな資金提供であっても、大きな助けになります。」

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