小惑星にも季節がある (NEAR)

【2000年6月22日 NASA Space Science News (2000/6/21)

NASAの小惑星探査機「NEAR-シューメーカー」が小惑星「エロス」の周回軌道に乗った今年2月、エロスの北半球はちょうど真夏で、北極地方は一日中太陽が沈まない白夜、逆に南極地方は一日中闇に閉ざされていた。

NEARに搭載された観測機器のうち3つは、太陽光が当たっている部分しか観測できないため、NEARによる初期の観測成果の多くは北極地方で得られたものだった。

科学者達はエロスのまだ見ぬ南極地方を早く観測したがっていたが、6月25日には太陽直下点が赤道より南になり、ついに南極地方に昼が訪れ、南半球に春が到来する。

このように、小惑星にも季節がある。エロスは1.76年の周期で太陽の周りを公転しており、季節もその周期でめぐる。しかし、エロスの場合、季節の長さは春と秋とで大きく異なる。真円に近い公転軌道を持つ地球とは異なり、エロスは近日点(太陽に最も接近する点)と遠日点(太陽から最も遠ざかる点)では2倍近くも太陽との距離が違う楕円軌道を持っているためだ。近日点付近では公転速度が早いため季節は短くなり、遠日点付近では公転速度は遅いため季節は長くなる。北半球の場合は春が短く、秋の半分ぐらいの長さに過ぎない。

また、エロスの自転軸は公転面に対して89度も傾いている(地球の場合は23.5度)ため、北半球が真夏のとき、南半球にはほとんど太陽が当たらない。極地方での冬と夏の温度差は、液体水素と沸騰したお湯ぐらいの差がある。エロスでの季節は実に風変わりだ。

なお、NEAR-シューメーカーは現在エロス中心から半径50kmの軌道でエロスを周回探査中。NEARは初の小惑星を周回する人工衛星だ。7月7日には再度軌道を下げ、半径35kmの軌道を目指す。2001年2月――エロスの南半球に再び冬が訪れたすぐ後――の任務完了までには、エロス表面から数kmにまで高度を下げる予定。