小惑星「エロス」は太陽系形成初期に起源を持つ?

【2000年6月2日 APL Press Release (2000/5/30)

エロス北極の緯度経度

エロス北極の緯度経度 エロス北極領域をとらえた画像に30°ごとに緯度・経度線を書き込んだもの。画像は2000年3月31日、207kmの距離からの撮影。エロスが全く非球形の異形な小惑星であることがわかる。

50km軌道からの初画像

50km軌道からの初画像 2000年5月1日の撮影。NEARがエロス中心から半径50kmの円軌道に乗ってからは、初めての画像。エロス表面の1.8km四方の領域をとらえており、8m級の多数の岩・クレーターまで確認できる。右上の巨岩は45m程度の大きさ。

低空から地平線を望む

低空から地平線を望む 2000年5月18日、50kmの距離からの撮影。1.4km四方の領域をとらえており、4m程度の構造まで確認できる。中央付近の巨岩は高さ60m。

小惑星「エロス」(小惑星番号433)の上空を周回探査中の小惑星探査機「NEARシューメーカー」により得られた新たなデータから、「エロス」が太陽系形成初期に起源を持つらしいことがわかった。もし本当にそうであれば、「エロス」の探査は、地球のような岩石惑星の誕生過程を知る上での重要な手がかりとなる。探査チームでは、さらなる観測により裏付けを目指す。

NEARは4月30日からエロス中心から50kmの円軌道で探査を行なっている。この軌道はNEARの主目標軌道で、この軌道に到達してはじめて全ての搭載機器の運用が可能となった。

そして5月4日、太陽で起きた大規模な爆発現象の影響で、エロス表面にX線放射が発生。この放射は、NEAR搭載のX線/ガンマ線分光器により半時間にわたって観測された。このとき得られたエロス表面の約6km四方の地域のX線分光データを分析した結果、エロスの化学組成は、コンドライト隕石に似ていることがわかった。コンドライト隕石は、太陽系形成初期に、太陽系の原料となったチリとガスの星雲の中で形成されたと考えられており、同様の岩が太陽系の惑星の原料となったと思われる。

ただ、エロス表面の別の地域では組成が異なる可能性もあるため、裏付けにはさらなる観測が必要。

なお、NEARは7月7日に再度降下を開始し、エロス中心から35kmの軌道を目指す。