低軌道衛星撮影システムの開発

【2000年2月24日 国立天文台ニュース(328)

スペースシャトル、宇宙ステーション、人工衛星などを、その形のまま撮影す るシステムが開発されました。  (天文ニュース324)で、富山市天文台が、宇宙ステーション・ミールの画像を撮影したことをお伝えしました。 これもひとつの衛星撮影システムです。 このような場合、宇宙ステーション、スペースシャトルなどは数100キロメートルから数1000キロメートルの遠距離にある上に、かなりの角速度で移動していますから、形がわかるように撮影するのはかなり困難です。 これは、たとえば、通常の100倍の速度で名古屋付近を走る新幹線の車両を、東京から撮影するようなものです。 これを成功させるには、長焦点の望遠鏡を、きわめて高精度に制御する必要があります。 通常の天体望遠鏡は恒星の移動を追尾することはできますが、人工衛星のように高速で移動する目標を追尾するようには設計されていません。

NHK松山放送局とNHK技術局開発センターは、平成10年度からこのような目標を撮影できる「低軌道衛星撮影システム」の開発に取り組んできました。 今回その装置を使って、群馬県高山村の「県立ぐんま天文台」で、毛利衛(もうりまもる)さんが乗り組んだスペースシャトル、エンデバーの形を撮影するのに成功しました。 この画像は2月17日、18日にNHKニュースで放映されましたから、ご覧になった方も多いでしょう。

このシステムの中心となるものは、200万画素、1インチの大きさのモノクロCCDハイビジョンカメラを取り付けた口径25センチ、焦点距離4.8メートル、カセグレン方式の望遠鏡で、これを、高度、方位角軸の他にもうひとつ追尾軸を加えた3軸で制御しています。 それぞれの軸には高分解能のエンコーダがつけられ、追尾軸と高度軸に付けられた1秒あたり2度までの回転が可能なステップ・モーターが回って目標を追跡します。 目標天体の軌道要素を入力しさえすれば、コンピュータ制御で、カメラは人工衛星、スペースシャトルなどを自動的に追尾するようになっています。 必要に応じて、手動で微調整することも可能です。 この装置の全重量は100キログラムを超えますが、7個に分解できますから、移動はそれほど困難ではありません。

NHKは、この装置によって、最近建設が始められた国際宇宙ステーションなどを撮影することも計画しているそうですから、今後、これまで見られなかった新しいさまざまな画像を見せてくれることでしょう。

参照 NHK報道資料、技術資料(Feb.22,2000)

関連情報 近藤弘之さんが撮影したスペースシャトル・エンデバー