小惑星パラスによる恒星の掩蔽の観測計画

【1999年9月23日 佐藤 勲 氏 ONM No.471】

月刊天文9月号、天文ガイドおよびスカイウオッチャー10月号に掲載されているように、来る9月26日(日)と10月2日(土)に、小惑星(2)パラスによる恒星の掩蔽が連続して日本で見られます。 特に後者は好条件で、東北地方を中心とする多数の固定および遠征観測者による観測によって、パラスの詳しい大きさと形が明らかにされることが期待されています。

今日の週間天気予報によれば、台風18号の去った26日(日)からは、全国的に晴天が見込まれており、26日(日)26h46m(JST)ごろのパラス(8.9等)によるACT2381070(赤経07h07m26.7s, 赤緯-12゚09'50", 10.22等)の掩蔽は、観測成功の期待が持てます。 ただし、減光が最長18秒間にわたってわずか0.3等ですので、眼視では検出困難で、エンコーダー付きの比較的大口径の望遠鏡によるビデオ、光電管、CCD写真などによる客観的な観測が必要となります。

現象は、関東から中国・四国地方にかけて見られることが確実で、現在のところ、東京都の電気通信大学、茨城県の今谷拓郎氏などが観測する予定であることを表明していますが、この方面の公開天文台などでの観測が期待されています。

次に、10月2日(土)28h05m(JST)ごろ、パラス(8.8等)によるHIP035217(赤経07h16m42.4s, 赤緯-13゚27'17", 7.73等)の掩蔽は、最長19秒間にわたって1.4等級の減光が起こりますので、小望遠鏡による眼視観測でも十分観測可能な現象です。 現象は、北海道南端から東北、北関東、北陸地方にかけて見られることが確実で、しかも週末の現象であるため、これらの地方の固定観測者のみならず、可能ならば、東北地方まで遠征観測することをお勧めします。 観測地は、当日の天気予報を見て、晴れそうな場所を選びましょう。

現在のところ、岩手県の一関天文同好会、茨城県の今谷拓郎氏、東京都の電気通信大学、滋賀県の井狩康一氏、千葉県の内山茂男氏および私が遠征を含めた観測予定を表明していますが、北限界線が通る北海道南部では、函館方面への観測者はまだいない模様で、パラスの北側の形が明らかにならない可能性があります。 一般的に言って、都市部では観測者が期待できますので、東北自動車道などを使って遠征する方は、積極的に山間部に布陣することをお勧めします。

さて、観測方法ですが、眼視観測の場合は、電話時報を受信し、時報と現象が起こった時の声を録音して、後で再生して潜入と出現の時刻を0.1秒単位で求めます。 現象を見てから声が出るまでの反応時間は、適当に見積もって補正します。 眼視観測は信頼性が低いので、近くの人とペアを組んで2人以上で観測すると、信頼性が向上します。

ビデオ観測の場合は、できればI.I.や高感度の白黒ビデオを使用し、時報を同時録音します。 周囲の星が映るような倍率で観測すると、雲の通過による減光を区別することができます。

まずは、9月26日の現象で練習し、10月2日の現象でその成果を発揮するように計画的に準備をしましょう。

掩蔽帯の地図は、「1999年8月以降の掩蔽の初期予報」に掲載されています。

この情報は、お近くの観測者にも伝え、なるべく多くの観測が得られるよう御協力下さい。 現在、10月2日の現象を東北地方周辺で観測される方を募集しております。 観測者の分布が最適な配置になるよう、移動観測可能な方は、是非御協力下さい。

観測報告は、現象が起こらなくても、曇っても、観測地の詳しい経緯度や高度、望遠鏡、観測方法、観測状況などを添えて、佐藤勲氏(satoois@cc.nao.ac.jp)まで是非御報告下さい。 結果は、11月13〜15日に東北大学で開催される日本惑星科学会で発表する予定です。