土用の丑

【1999年7月22日 国立天文台天文ニュース(276)】

今年は7月24日が土用(どよう)の丑(うし)の日です。 「うなぎ」を食べる日としてご記憶の方も多いでしょう。 「うなぎ」にどんな意味があるのかは知りませんが、暦の上で、「土用の丑」とはいったいどういう日なのでしょうか。

これは、古い時代の中国から伝わった五行説(ごぎょうせつ)に由来します。 五行説では、天地間のすべての出来事はすべて、木火土金水(もっかどごんすい)の五つの要素からなり、その盛衰、消長などによって定まると考えます。 たとえば、夏は火の要素があるから暑いといった程度の単純なものです。 五行説はもともと天の5惑星から考え出されたものでしょうが、科学的根拠はまったくありません。 むしろ、迷信の根拠として、さまざまな禍根を残した考え方です。

五行説では、あらゆるものを木火土金水の五つに分類して当てはめます。 四季もこれに当てはめようとしました。 春を木、夏を火、秋を金、冬を水に対応させたまではよかったのですが、土が余ってしまいました。 これでは都合が悪いので、春夏秋冬からそれぞれ終わりの18日を削り、合計72日を土の分として割り当てることにしました。 つまり、これが土用です。 したがって土用は夏だけではなく、春、秋、冬にもあります。 ただ、昨今は夏の土用だけが暑い季節として話題になり、その他の土用はほとんど取り上げられることはありません。

現在は、太陽黄経がそれぞれ27度、117度、207度、297度に達した日を土用の入りの日とし、立夏、立秋、立冬、立春の前日までを土用としています。 そのため、それぞれの土用の日数は必ずしも18日ではなく、19日のこともあります。 しかし、この決め方は、もともとほとんど意味がなかった土用に、太陽黄経などというもっともらしい衣を着せて、科学的に見せかけようとしているだけという気がします。

一方、丑の日は、子丑寅卯…の十二支を1日ごとに割り当てていくだけのものですから、12日ごとに回ってきます。 したがって、夏の土用の間に、丑の日が1回だけの年と、2回くる年とがあります。 今年は、夏の土用の入りが7月20日で、8月7日までが土用ですから、丑の日が2回あります。 7月24日がいわゆる土用の丑、8月5日が二の丑です。 「うなぎ」にとっては受難の年かもしれません。