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天文の基礎知識

3.天球の回転

さて、夜空に輝く星は常に決まった場所に静止しているわけではありません。ここでは、天球の動きについて基礎的なことがらを簡単に説明しておきましょう。

■日周運動

日周運動 夜空の星をじっくりと観察してみてください。 非常にゆっくりとした速度ですが、見る方向によって実に様々な動きをしていることに気がつきます(右図)。 北の空の星々は北極星を中心に反時計周りに動いていますし。南の空の星々はなだらかな円弧を描いて動いていきます。 また、東の空の星々は地平線から斜めに昇ってきますが、西の空の星々は斜めに地平線に向かって沈んでいきます。

こうした星空の動きは、方向によってバラバラなようですが、注意して全天を見渡すと、ある一定の規則を持って動いていることに気がつきます。

天球の星々は、ある軸を中心に西周りに回転しています。 この軸は、地球の地軸です。つまり、地球の自転運動による影響なのです。 地球は1日に1回東周りに自転しています。 この動きを地球上からみると、天球が1日に1回西周りに回転しているように見えるわけです。 こうした星々の動きを日周運動といいます。

日周運動の中心にある北極星は、地球の地軸を北に延長したところに位置しているわけです。 北極星の高度はその観測地の緯度と等しくなります。 ですから、東京での北極星の高度は地平線から約36゚になります。北極では天頂に見え、赤道では地平線上に見えることになります。 南半球からは地平線下になってしまい北極星は見えません。 当然、それぞれの観測地によって日周運動による星の動きも大きく変化します。

地球上の各地点での日周運動の様子を、図に掲げておきましょう。


北極での日周運動 赤道での日周運動

南半球での日周運動 南極での日周運動

■年周運動

さて、「太陽は1日に1回、東から昇って、西に沈む。」こんなことはもう皆さんよくご存知のことですね。 なんだか当り前のようですが、太陽も星々と同じように日周運動の影響を受けています。 では、太陽の動きと星々の動きは全く同じでしょうか?

答えはNOですね。黄道座標の項で説明したように、太陽は1年かかって天球上を1周しています。 その通り道を黄道と言うのでしたね。ですから、1日に約1゚ほどのスピードで天球上を西から東に向かって移動しているわけです。 もし、太陽と夜空の星々の動きが全く一緒だとしたら、「四季の星座」なんて言葉は生まれなかったでしょう。 なぜなら、1年中同じ範囲の星空しか見えないことになってしまうからです(宵の星空、深夜の星空、明けの星空とでも区別するのでしょうか?)。

黄道

太陽が1日に1゚ずつ東に移動するということは、星々は太陽に対して1日に1゚ずつ西に向かって動いて行くように見えるということです。 1゚は時間(時角)にして約4分ですから、星々は毎日約4分ずつ早く昇って、4分ずつ早く沈んでいきます。 ということは、1カ月で120分、つまり2時間(=30゚)も早く昇って来るということになります。 1年で24時間(=360゚)ですから、ちょうど1周分ということです。 地上から見ていると、太陽は1年間に 365回転しますが、その間に天球は 366回転しているわけです。 こうした動きを年周運動といいます。

四季の星座といっても、ある時点でいきなり星空の様子が変わってしまうわけではありません。このようにゆっくりと変化していくのです。

■歳差運動

日周運動や年周運動は、地球の運動によって起こるものでした。さて、ここでもう1つ大切な運動について説明しておかなくてはなりません。

首振り運動 地球の地軸は一定ではなく、大きな円を描いて回転しています。ちょうどコマの「首振り運動」とおなじようなものです(右図)。 地球の地軸は黄道面に対して23.5゚の傾きを持っていますが、傾きはじめたコマが見せるような運動をしているのです。 これを「歳差」といいます。

コマの首振り運動は目に見えるほど大きなものですが、地球の場合の歳差運動は実にゆっくりしたもので、1回転するのに25,920年もかかります。

さて地軸が動いてしまうということは、日周運動の中心が変わってしまうことを意味します。天の北極は黄道の北極を中心として描かれた半径23.5゚の円周上を25,920年かかって1周します(図右)。 つまり1年間に約50秒(360゚×60'×60"÷25,920年)ほどの角度で移動しているわけです。


天の北極の移動 現在の北極星は、天の北極から0.85゚ほどの所に位置していますが、2100年頃に天の北極に 0.46゚まで接近します。 しかし、それ以降は徐々に離れていってしまいます。 紀元前3000年頃に栄えたエジプト王朝の時代には、りゅう座のα星(ツバン)を北極星としていました。 また、紀元前12000年頃には七夕の織り姫星であること座のα星(ベガ)が、紀元前 17000年ころには、はくちょう座のα星(デネブ)が天の北極の近くにあったことが分ります。


北極星と天の北極の移動 さて、日周運動の軸が最大で 47゚もずれてしまいますので、見える星空の様子も一変してしまいます。 現在、東京から見ることの出来ない南十字星も、西暦13,000年10月22日午前0時には高度 23゚に南中して見えるようになるはずです。 また、このとき北の空には夏の大三角形が周極星として輝いていることでしょう。