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ふたご座流星群(2019年)

冬の定番天文現象「ふたご座流星群」。毎年12月14日ごろに多く流れ星が見られます。

今年も14日宵から15日明け方が一番の見ごろですが、月明かりの影響が大きく、条件は良くありません。

寒さ対策を万全にして、安全やマナーに気をつけて、明るい流れ星を待ってみましょう。

一番の見ごろは14日宵から15日明け方

極大時刻は15日2〜4時ごろ

2019年のふたご座流星群の流れ星が最も多く流れる「極大時刻」は、12月15日未明2〜4時ごろと予想されています。つまり、12月14日の宵から15日の明け方ごろにかけてが、一番の観察チャンスです。

満月直後の月明かりの影響が大きい

流れ星の観察は普通の星空観察と同じく、街明かりや月明かりの影響を大きく受けます。じっくり見ることができないという点では、星空観察以上に影響が大きいとも言えます。

今年は12月12日が満月ですので、その数日後となる14〜15日ごろは宵のころから夜明けまでほぼ一晩中、月が夜空を照らします。この点で今年は、条件が良くありません。

14日深夜22時から15日未明4時まで、南の空を眺めた様子。場所の設定は東京(ステラナビゲータでシミュレーション)。

他の動画は ›› アストロアーツYouTubeチャンネル [YouTube]

見える数の予想

見晴らしが良く空が開けた場所であれば、14日宵から15日明け方には1時間あたり15個程度の流れ星が見えると予想されています。郊外では5〜10個ほどになるでしょう。1時間あたり50個以上も見えることがあるふたご座流星群としては、今年はかなり控えめな出現数となりそうです。

月明かりがあるため、街明かりの影響はあまり関係ないと思われますが、視界の広さや空気の透明度といった点で、郊外よりは街から離れたところのほうが少し見やすくなります。また、ふたご座流星群の流れ星は明るいものも少なくないので、市街地でもいくつかは見えるかもしれません。流れ星の速度は中程度です。

極大の前後の日や異なる時間帯の場合、見える流れ星の数はさらに減ってしまいますが、それでも普段の(活発な流星群のない)時と比べれば流れ星を目にできる可能性が高い時期です。寒い時期なので無理は禁物ですが、暖かい服装で少し長めに空を見上げて流れ星を待ってみましょう。

参考リンク:

「アストロガイド 星空年鑑 2019」

「アストロガイド 星空年鑑 2019」

アストロガイド 星空年鑑

「アストロガイド 星空年鑑」は1年間の天文現象を書籍とDVD番組で詳しく紹介。付属の天文シミュレーションソフトで、現象の見え方や時刻などを調べることもできます。

「アストロガイド 星空年鑑 2020」は11月29日(金)発売です。来年も、6月21日の日食や10月の火星最接近など楽しみな天文現象がたくさんあります。星空年鑑で、1年分のスケジュールを確認しておきましょう。

観察のポイント

空を広く見渡そう

流星群の流れ星は放射点(›› 解説)を中心として四方八方に飛びますが、いくつもの流れ星の流れた跡をたどっていくと放射点で交わるのであって、実際には空のいたるところに流れます。したがって、放射点の方向だけをじっと見つめるのではなく、空を広く見渡すのがポイントです。その点で、広場や校庭、河川敷など視界の開けたところが観察に適しています。

住宅地や自宅ベランダなど視界があまり開けていないところでは、街明かりの影響を避けるために街灯がない方向を眺めれば、流れ星が見つけやすくなります。同じ理由で、月から離れた方向を中心に眺めたほうが良いでしょう。

14日深夜22時から15日未明4時まで、空全体に流れ星が飛ぶ様子。場所の設定は東京。

15分くらいは見続けてみよう

1時間に15個の流れ星が見えるとすると、計算上は平均して4分に1個のペースで見えることになりますが、流れ方はランダムですので、立て続けに数個見えることもあれば10分以上も見えないことも珍しくありません。1つも見えないからと数分で諦めるのではなく、少なくとも15分くらいは見上げてみましょう(寒いので、あまり無理はしないように)。

この時期、宵のころであれば西の空に「夏の大三角」、天頂付近に「秋の四辺形」、北から東の空に「カシオペヤ座」や「プレアデス星団(すばる)」などが見えています。深夜になると放射点のある「ふたご座」が天頂に、「冬の大三角」や「オリオン座」が南の空に広がり、華やかな星々が流れ星の通り道を彩ります。明け方には南東の空に「しし座」、北東の空に「北斗七星」が高く上ります。こうした星々を楽しみながら、流れ星が飛ぶのを待ってみましょう。

15日未明3時に、南→東→北→西→南の空を眺めた様子。場所の設定は東京。

ステラナビゲータで見え方をシミュレーション

天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」を使うと、流れ星が飛ぶ様子や周りの星座の見え方、撮影の構図などを調べられます。

ステラナビゲータでふたご座流星群をシミュレーション

モバイルツールでシミュレーション

流れ星を待つ間は、星座探しをしてみましょう。iOS用の「iステラ」「iステラ HD」やアンドロイド用「スマートステラ」などのモバイルアプリを使えば、星や星座の名前がすぐにわかります。

※まぶしくないように、画面の明るさを調整しておくとよいでしょう。

他の製品は ›› モバイル製品情報

スマートステラでのシミュレーション

12月15日未明の星空の様子をスマートステラで表示。ふたご座や周りにある星座、星の名前もわかる。シミュレーション画面にも流れ星が飛ぶので、天候に恵まれないときには画面を眺めて空の様子を想像することもできる。画像クリックで表示拡大。

寒さ対策を万全に

寒さ対策は、ふたご座流星群の観察で一番大切なことといえるかもしれません。寒いと注意力や判断力が低下し、落ち着いて空を見上げるのが難しくなったり動作が鈍って思わぬ事故につながったりすることもあります。

  • 重ね着をし、帽子やマフラー、手袋などの防寒具も。
  • 携帯カイロ、夜食、温かい飲み物なども準備。
  • 家の近くで見るのであれば、無理をせず時々室内で休憩を。
  • ヒーター等を利用の場合は明かりや音、安全に気をつけて。

そのほかのポイント

  • 流れ星を観察するために長時間夜空を見上げ続けていると首が痛くなります。アウトドア用のチェアやベッドがあればベストですが、安全な場所であればグラウンドシートに寝転がって見るのも快適です。
  • 大騒ぎしない、車や足元に注意する、子供だけで行動しないなど、マナーや安全にもじゅうぶん気をつけましょう。

ソラリラ(星空ベッド)

ベッドに寝転んで観察すれば、楽に広い範囲を見渡せます。

観察や撮影にあると便利なグッズ

□
折りたたみ星座クッション

座って星空を眺めるときに便利なクッション。

デジタル一眼レフやミラーレス一眼で流星撮影にチャレンジ。「スカイメモS」や「NEW ナノ・トラッカー」も。

カメラレンズの結露を防止する電熱線式ヒーター。

流星撮影のポイントは「星ナビ」特集で!

月刊「星ナビ」で流星群の撮影特集を掲載。過去の記事ですがポイントは同じなので、流星撮影をしたい方は参考にしてみてください。

星ナビ2018年12月号「流星スペクトル『虹色の流れ星』『流れ星の物理』」

2018年12月号「流星スペクトル『虹色の流星』『流星の物理』」:流れ星のスペクトル撮影を紹介。流れ星が光るメカニズムについても解説。

星ナビ2017年12月号「『ふたご座流星群を迎え撃つ』4Kムービーによる流星群の撮影」

2017年12月号「『ふたご座流星群を迎え撃つ』4Kムービーによる流星群の撮影」:高感度デジタルカメラによる流星群の動画撮影について解説。

流れ星が見える仕組み

ふたご座流星群とは

一年のうちある決まった時期に、星空の中のある点の付近を中心として流れ星が飛ぶ現象が流星群です。流星群は現在100個近くが知られていますが、ふたご座流星群はしぶんぎ座流星群(1月4日ごろ)、ペルセウス座流星群(8月13日ごろ)とともに「三大流星群」の一つとして数えられる、活動が活発な流星群です。

ふたご座流星群は、毎年12月14日前後に多くの流れ星が飛びます。活動が安定しており、ほぼ期待どおりに流れ星を見ることができます。「夜が長い」「放射点が一晩中地平線上にあり、深夜に高く上る」ということもあり、寒さを別とすれば一年で最も見やすい流星群といえます。

2014年のふたご座流星群

ふたご座流星群。2014年12月14日 伊豆大島にて(撮影:大熊正美)。画像クリックで表示拡大。

ダイジェスト動画。

放射点

流星群の流れ星は、天球上のある点の付近を中心として四方八方に放射状に流れるように見えます。この点を「放射点」と呼び、放射点の位置する(または放射点の近くの)星座や恒星の名称が流星群の名前として付けられます。ふたご座流星群の場合は、ふたご座の2等星カストルの近くに放射点があるので、この名前で呼ばれています。

実は平行に降る、流星群の流れ星

流れ星(流星)は、宇宙空間に散らばっている小さな塵(流星物質)が地球の大気圏に飛び込んで大気中の原子や分子と衝突し、上空100km前後でプラズマ発光する現象です。

地球が塵の集まりとぶつかると、流星群の流れ星は雨のように平行に降ります。

平行に降る流れ星

平行に降る流れ星。画像クリックで表示拡大。

平行に飛び込んでくる流れ星が放射点を中心として放射状に流れるように見えるのは、一直線の道路の両端が遠方の一点から伸びてきているように見えるのと同じ理由です。

塵が宇宙空間を同じように移動した場合の、流れ星の見かけの動きを考えると、放射点付近では経路が短くなり、放射点から離れるほど経路が長く見えます。とくに放射点では、流れ星は観察者に向かってくるように見えます(静止流星)。

流れ星の実際の動きと見かけの動き

流れ星の実際の動きと見かけの動き。画像クリックで表示拡大。

ふたご座流星群の起源

塵を放出して流星群の原因となる天体を母天体と呼びます。この母天体の軌道と地球の軌道が交差していると、毎年同じ時期に地球がその交点付近を通る際に、塵の集まりと地球がぶつかることになります。したがって、流星群の流れ星は毎年同じころに同じ方向から飛んでくるように見えるのです。

母天体は、多くの場合は彗星ですが、ふたご座流星群の場合は約1.4年周期で太陽系を巡っている小惑星ファエトン((3200) Phaethon)と考えられています。小惑星は彗星のように尾をたなびかせ塵を放出することはありません。反対に考えると、ふたご座流星群の母天体がファエトンであるとすれば、かつてファエトンは彗星であったかもしれないということになります。

塵が多く(濃く)集まっていれば流れ星の数も増えますが、ふたご座流星群の場合、塵はファエトンの軌道上の一部に偏在しているのではなく、軌道全体に広がって分布していると考えられます。塵もファエトンと同じ軌道を運動しているので、毎年のように多くの塵と地球とがぶつかることになり、ふたご座流星群の流れ星はファエトンの位置に関わらず毎年多く見られるのです。

流星群とファエトンの関係

流星群とファエトンの関係。画像クリックで表示拡大。