デジタル一眼 天体写真入門
星雲・星団を撮影しよう

鳥が羽を広げたようなオリオン座大星雲、見事な渦巻き構造を見せる回転花火銀河。目で見るだけでも楽しいのですが、写真に撮ることで、より細かい部分や淡い構造など、その全貌を見い出すことができます。

そのような星雲・星団の撮影は、一昔前までは高価な機材とそれを使いこなす高度なテクニックが必要でした。しかし、銀塩写真からデジタル写真に移行するにしたがって、リーズナブルな天体撮影機材も増えて、手軽に星雲・星団を撮影できるようになりました。

ここでは、天体写真を撮影するための機材やノウハウなどを紹介していきます。

あなたも深宇宙からのメッセージを映像に収めてみませんか。

オリオン座大星雲

オリオン座大星雲(M42)

デジタル時代の星雲・星団撮影術

銀塩写真時代の天体写真は、できる限り長時間の露出を行って現像処理で増感し、天体からのかすかな光を目に見える像としてとらえるものでした。

デジタル時代の星雲・星団の撮影は、露出を何回も繰り返して撮影後にPCソフトなどの処理で仕上げる手法が一般的です。撮影枚数を増やすことによって、露出時間を加算した効果が得られ、一晩だけでなく数日かけて撮影することも可能です。

また、撮影した画像をPCソフトなどで処理すれば、光害によるカブリを取り除くことができるため、空が明るい市街地でも手軽に星雲・星団を撮影できるようになりました。

天体画像がきれいに仕上がるかどうかを左右する決め手は、撮影50%、画像処理50%といったところでしょうか。これらの作業はすべてパソコンを使って行うことになります。

オリオン座大星雲

撮影した複数の画像をPCソフトで処理して1枚に仕上げる

必要な機材

星雲・星団の撮影に必要な機材は以下の通りです。

自動導入機能付き赤道儀

星を追尾するためには赤道儀が必要になります。赤道儀とは、鏡筒を載せる架台の種類のひとつです。星の日周運動に合わせてモーターで回転し、同じ天体を視野の同じ場所にとらえ続ける(追尾する)ことができます。星を点像として撮影したい場合には必須の機材です。

また、指定した天体の方向に自動的に鏡筒を向けてくれる自動導入機能があると便利です。

価格は10万円から60万円以上と幅がありますが、高価なものほどより重い、つまり大口径の鏡筒を載せることができます。はじめは低価格(軽量級)の赤道儀で始めて、本格的に追求したくなったら高価(重量級)な赤道儀に変更して望遠鏡の口径をアップするのもよいでしょう。いずれにせよ、搭載する鏡筒の重さとのバランスが重要です。

赤道儀

鏡筒などの撮影機材一式を搭載する赤道儀

鏡筒

口径が大きいほど集光力が上がり、焦点距離が長いほど天体を大きく写すことができます。また屈折式や反射式などさまざまな光学系があります。価格も5万円から100万円以上と大きな幅がありますが、最初は焦点距離600mm程度の廉価な屈折式が取り扱いやすいでしょう。鏡筒にカメラを取り付けるには、カメラのマウントに合ったアダプターリングなどが必要になります。

鏡筒

アダプターリングで鏡筒にカメラを取り付ける

オートガイダー

オートガイダーは星の追尾を安定させるもので、数分以上の長時間露出をする際には必須になります。最初のうちはオートガイドが不要な短時間露出で撮影に慣れたほうがよく、ステップアップとして露出時間を長くしたい場合や、追尾のずれが気になる場合に必要となるオプション的な機材です。価格は、ガイド鏡(オートガイド用のサブ望遠鏡)とオートガイダーを合わせて5万円から10万円程度です。望遠鏡をセットで購入する際には、まとめて購入してもよいかもしれません。

オートガイダー

ガイド鏡に取り付けたオートガイダー

一眼レフカメラ

望遠鏡に取り付けるためには、デジタル一眼レフカメラが必要です。カメラに内蔵されたイメージセンサー(撮像素子)の大きさは、フルサイズ、APS-Cサイズと様々ですが、近年は入門クラスのカメラでもじゅうぶん撮影を楽しむことができます。

フルサイズのカメラは、APS-Cサイズと比べると写せる範囲が広いので、周辺部まで良好な像で撮影できる鏡筒が必要になります。

カメラ

カメラ用のUSBケーブルでPCに接続

Windows PC

赤道儀とカメラを制御するためにWindows PCが必要です。野外で使うのでノートPCが便利です。画像処理を行うことも考えると最低でも10万円クラスで、バッテリー駆動でも数時間以上使える機種がよいでしょう。

ノートPC

ノートPCのUSBポートに望遠鏡・カメラなどを接続して制御

ステラショット(撮影用ソフト)

「ステラショット」は、これらの機材を統合して操作する天体撮影ソフトです。このソフトを使って星雲・星団の撮影を行います。

「ステラショット」は、キヤノンとニコンの主なデジタル一眼レフカメラに対応しています。

「ステラショット」

望遠鏡・カメラ・オートガイダーを制御して天体撮影を行う「ステラショット」

ステライメージ(画像処理用ソフト)

「ステライメージ」は、撮影した画像を処理するためのソフトです。ノイズ低減に欠かせないダーク処理や、複数枚の画像を重ね合わせるコンポジットなど、天体画像の処理に必要な機能がすべて揃っています。

ステライメージ

天体画像処理ソフト「ステライメージ」

そのほか必要なもの

赤道儀やカメラは、USBケーブルでPCに接続します。赤道儀をPCに接続するには、望遠鏡接続ケーブルに加えてUSBシリアル変換ケーブルが必要となることが多く、機種によってはLANケーブルを用いることもあります。

また、赤道儀を駆動するためには通常12VのDC電源を用います。PCの予備電源としても使える大容量のリチウムイオンバッテリーが便利です。

さらに、PCを置くテーブルやイスがあると楽に操作できます。

USBシリアル変換ケーブル

赤道儀とPCを接続するUSBシリアル変換ケーブル

望遠鏡・カメラ一式の組み立てイメージ

すべてを組み立てると、例として写真のようになります。

設置・接続した機材一式

設置・接続した機材一式
鏡筒:SkyWatcher BKP130(口径 130mm、焦点距離 650mm (F5))/赤道儀:セレストロン ADVANCED-VX/カメラ:キヤノン EOS Kiss X3/オートガイダー:QHY5-IIM/ガイド鏡:口径 60mm、焦点距離 240mm (F4)/PC:ノートPC(Intel Core i7)/その他:USBハブ

撮影のポイント

ここでは、きれいな星雲・星団写真を撮るためのポイントをまとめておきます。以下のピント合わせは望遠鏡を直接操作する必要がありますが、それ以外の天体の導入から撮影まではすべてステラショットでPCから操作できます。露出時間やISO感度の設定などもすべてステラショットから制御します。必要最低限の操作で撮影ができるため、撮影の手間を大幅に省けます。

ピント合わせ

天体のディテールやより暗い星を写すためには、フォーカスを正確に合わせる必要があります。

しかし、天体は暗いのでカメラのオートフォーカスやフォーカスエイドは使えません。ライブビューで星を見ながらピントを合わせることもできますが、望遠鏡は焦点距離が長くジャスピンの位置が非常に掴みにくくなっています。

そこで、鏡筒の前に「バーティノフマスク」を取り付けて、片側3本ずつのひげの間隔が均等になるようにピントを調節すると、ジャスピンの状態となります。ピントのズレがひげのズレとして見えるので、直観的にピント調整できます。望遠鏡のピントは外気温が数度違っただけでずれてくることがありますので、素早くピント調整ができることが大事なポイントになります。

バーティノフマスクの取り付け

バーティノフマスクの取り付け

バーティノフマスクでのピント合わせ

バーティノフマスクでのピント合わせ

天体の導入、構図決定

まずは、構図をしっかり決めておきましょう。対象の天体が画面の中央にあり、視野の上側(長辺または短辺)が天の北極方向というのが一般的な構図の向きです。

自動導入望遠鏡の普及によって、天体の導入が簡単になりましたが、特に移動式の望遠鏡では「完全に正確な」導入を望むことはできません。自動導入後に目的の天体を画面の中央に追い込む作業が必要になります。目的の天体が淡い場合は、短時間の露出では写らないため、以前の天体撮影では星の並びを目安にして視野を少しずつ動かしては撮影という作業を繰り返していました。これは面倒な作業で、数分から数十分かかることもありました。

また、自動導入の精度を上げるためには、赤道儀の初期設定で複数の恒星に位置合わせをするアライメント(望遠鏡の向きと天体位置の同期)が必要で、これも数分から数十分の時間を要する作業でした。

ステラショットの導入補正機能

写真に写った星の並びと星図データベースとを比較して、ずれの分だけ望遠鏡の向きを修正する「導入補正」機能

ところが天体撮影ソフト「ステラショット」を使うと、導入と構図合わせを自動で処理することができます。自動導入後に撮影を行い、写っている恒星をデータベースと比較してズレを自動的に計算し、目標の天体が中央になるように赤道儀の向きを微調整します。これでどんなに暗い天体にでも狙いを定めることができます。また、複数の銀河や彗星の尾など、画面の中央を目標天体から少しずらしたいときも、画面でそのポイントを指定することで簡単に調整できます。

露出時間と枚数

星雲・星団写真の画質を決める一番のポイントが、露出時間です。露出時間が長くなるほどSN比(天体像とノイズの比率)が向上して、より淡い部分がはっきりと見えてきます。夜の時間は限られているので、構図調整やピント合わせなどを手早く済ませて、なるべく露出時間を稼ぎたいところです。

数分以上の露出時間では、オートガイダーが必要になってきます。まずはノータッチガイド(オートガイダーを使わない撮影)で、30〜90秒程度の露出で複数枚撮影することで、総露出時間を長くします。

枚数の目安は、総露出時間が少なくとも10分程度(例:30秒露出で20枚撮影)以上を目安にすると、画像処理で良好な結果が得られます。

短時間のノータッチガイドで追尾がほぼ流れないように撮影できなければ、オートガイダーを使っても追尾は安定しません。まずはノータッチガイドをマスターしましょう。

オートガイドで長時間露出

同じ機材、同じISO感度の設定で10分露出で1枚撮影した画像と、1分露出で10枚撮影してコンポジットした画像を比較すると、前者の方がよく写ります。天体の淡い部分を写すには、なるべく露出時間を長くしたいのですが、ノータッチガイドで長時間の露出を行うと赤道儀の追尾誤差により、星が点像ではなく線状に伸びる頻度が高くなります。追尾のずれを自動的に補正するたには、オートガイダーを用います。

オートガイドを行うには、オートガイダーをガイド鏡に取り付けて鏡筒やプレートにしっかりと固定し、最初にキャリブレーションを行い補正の仕方を学習させます。オートガイドをすると撮影中に視野のずれを監視して、星像が点になるように赤道儀の方向を自動的に補正し、高い精度で追尾できます。

空の暗いところでは、カブリが少なく長時間の露出ができますので、オートガイダーを使って淡い天体の撮影を目指してみるとよいでしょう。

画像処理

星雲・星団写真をより見栄えのあるものにするのが画像処理です。ノイズを減らすダーク処理やコンポジット機能などの基本的な処理は、ステライメージを使えばファイルを指定するだけで処理を行うことができます。さらにコントラストや色を調整して、自分好みの画像を作り出すことができます。撮影が終わった後にじっくりと画像処理に取り組みましょう。

撮影〜画像処理の流れ ▶