デジタル一眼 天体写真入門
天体別実践編:
オリオン座大星雲を撮ろう

明るい空でも撮影できる「オリオン座大星雲」

オリオン座大星雲(M42)は非常に写しやすい天体です。撮影の実際を見ていきましょう。

次の画像は、市街地でノータッチガイド(オートガイドなし)で撮影したもので、羽を広げたような星雲の姿までわかります。とても明るく撮影しやすいM42は、市街地などの身近な場所で天体撮影の練習をするのに適した対象です。

オリオン座大星雲

市街地で撮影した画像
総露出時間約27分(40秒×40枚)、ISO1600

まずは身近な場所で撮影

手始めとして、自宅の庭やベランダなどで撮影できれば理想的ですが、視界がさえぎられていたり、北極星が見えなくて極軸合わせができないといった場合には、近くの公園などに行きましょう。市街地では街灯を避けられませんが、街灯の光が直接当たらないところを探します。また住宅街などでは、家屋のある方向に望遠鏡を向けると誤解を招くので気を付けましょう。車の往来にも注意してください。

構図のポイント

撮影の準備段階として、M42を撮影する構図を決めます。M42を中心に、ほぼ一体となるM43、少し離れた北側にはM42の赤に対抗するように青い星雲NGC 1973があります。焦点距離600mmでは、縦構図でNGC 1973まで含めることができます。天体写真は通常横構図なので、カメラを縦構造に付け直しておきます。

オリオン座大星雲

天文ソフト「ステラナビゲータ」の星図での写野角表示

撮影のポイント

機材の組み上げ、極軸合わせ、ピント合わせが終わったら、さっそく撮影を始めましょう。

  1. M42を指定して導入が終わったら、露出5秒、ISO感度は最高感度、画質はJPEGでテスト撮影をします。
  2. 予め考えた構図になるよう、画面の中心をクリックします。「導入補正」をクリックして「クリックした位置を中央」を選択します。位置の調整が終わったら、もう一度撮影して構図を確認しましょう。
  3. 構図が決まったら、次のように段階的な露出で仮撮影を行います。
    • 露出:15秒、30秒、60秒
    • ISO感度:最高感度の半分
    • 画質:RAW+JPEG
  4. 撮影した画像が表示されたらヒストグラムを確認します。ヒストグラムの山が左から4分の1から3分の1になる露出を探ります。
  5. 総露出時間が10分以上になるように露出時間と枚数を設定します。
  6. 設定を確認して、撮影を開始します。
    • 撮影が進行して画像が表示されると、M42の近くに横方向に延びた線が写ることがあります。これは静止衛星で、後の画像処理で消すことができますのでそのまま撮影を続けます。
  7. 天体の撮影が終わったらライトフレームの4分の1程度の枚数を目安にして、ダークフレームを撮影します。

画像処理

撮影が終わったら画像処理をしましょう。

  1. 「ステライメージ」の「自動処理モード」で、コンポジットパネルからライトフレームとダークフレームを指定します。
  2. コンポジットの「方式」は「加算平均(σクリッピングあり)」、σクリッピングの「しきい値」は1に設定します。
    「σクリッピング」は、同じ位置のピクセルを画像ごとに比較して明るさが極端に異なる画像をコンポジットから取り除く処理で、一部の画像に写り込んだ人工衛星などの光跡を消すことができます。
  3. 設定が完了したら、コンポジットを実行します。
コンポジットパネル

ステライメージのコンポジットパネル

コンポジットが終わったら[画像調整パネル]で調整します。

  1. 「シャドウ」を調整して、背景の明るさを調整します。背景は真っ黒ではなく、ほのかに明るいのが理想的です。
  2. 「ハイライト」を調整して、一番明るい部分の明るさを調整します。
  3. 「中間調」で淡い部分の明るさを調整します、
  4. 「白飛び」で、ハイライトの白く飛んでしまったところの白飛びを抑えます。
  5. 「カラー強調」で色を強調します。
    市街地で撮影した画像はノイズが多いので、調整は適度に留めておきましょう。
画像調整パネル

ステライメージの画像調整パネル

暗い空での撮影

冬の天の川が見えるような空でM42を撮影してみましょう。作例は静岡県・天城高原で撮影しています。

空が暗い場所では、じゅうぶんな露出時間をかけて撮影できますが、ノータッチガイドでは星が流れてしまいます。作例は長時間露出を行うためにオートガイダーを使って撮影したもので、市街地で撮影した場合に比べると、淡く広がった星雲の細部まで写っています。

オリオン座大星雲

暗い空で撮影した画像
総露出時間約71分(180〜360秒×16枚)、ISO800

トラペジウムも写したい

市街地で撮影した画像でも星雲は美しく表現できたのですが、M42の明るい部分が白く飛んでしまって、トラペジウム(M42を輝かせる中心付近の4つの星)が判別できない点が気になります。これを解決するには、先ほどの本撮影より短い時間で段階的に撮影します。それらを合成して明るいトラペジウムからM42の外側の淡い部分まですべてを写し込んだ画像を作り出すことができます。

撮影

本撮影が60秒露出の場合、露出を30秒、15秒、8秒のように段階的に半分、さらに半分にして撮影を行います。ISO感度、枚数は本撮影と同じにします。ダークもそれぞれの時間に対応したものを撮影します。

画像処理

同じ露出時間ごとにコンポジットします。コンポジットが終わったらそれぞれFITS形式で保存しておきます。コンポジットされた4枚の画像をライトフレームに指定します。ダークはすでに処理済みですので何も指定しません。高階調の結果を得るために、コンポジットの「方式」は「加算」にしておきます。コンポジットを実行したら、[画像調整パネル]で処理してみましょう。

オリオン座大星雲

多段階露出で撮影したM42とトラペジウム付近
総露出時間約8分(30秒、15秒、8枚、4秒×各8枚)、ISO1600

まとめ

M42の撮影を通じて、様々な撮影テクニックを実践できます。画像処理もまだまだ奥が深いので、いろいろな処理を試したり、ネット上の情報も参考にしながら試行錯誤してみましょう。

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