2007年6月の星だより

【2007年6月1日 アストロアーツ】

6月といえば、梅雨と夏至。雨が降り続けて夜が短いので、今月は星見もひと休み? いえいえ、今月こそ空を見上げるべきです。すべての惑星が一晩で見られるのですから。いやな天気も吹き飛ばす、注目の現象や天文学の話題を紹介します。


4つの惑星が見やすくなっている

(6月2日の空)

6月2日夜8時、東京の空。このころには水星は地平線近くまで沈んでしまい観察は難しいが、4つの惑星が空に出ている。夜半過ぎには天王星と海王星が、日没前には火星がのぼる。クリックで拡大(ステラナビゲータ Ver.8で作成)

日本各地が梅雨に入り、曇りや雨ばかりになりがちな6月。貴重な晴れ間に空を眺めると、北から南にかけておおぐま座の北斗七星・うしかい座のアルクトゥールス・おとめ座のスピカをつなぐ「春の大曲線」をたどることができます。そして、南東にはさそり座を、西にはしし座を簡単に見つけることができるのですが、今年はその前に惑星たちが目に飛び込んでくるはずです。

さそり座の1等星アンタレスは、赤い色がよく目立ちます。しかし、今年はすぐ北に明るく輝く木星がいるおかげで、存在感はやや薄め。6日には木星が私たちから見てちょうど太陽の反対側にまわります。つまり、この前後なら木星が夜の間に必ず見えていることになり、観望の絶好期です。

一方、しし座の1等星レグルスのすぐ西側には、土星があります。土星がレグルスより明るいことは一目でわかりますが、時間帯によっては、その土星でさえ平凡な星に思えてしまうかもしれません。なぜなら、さらに西には宵の明星・金星が輝いているからです。金星は9日に東方最大離角、すなわち太陽の東にもっとも離れて見える状態となります。地球の内側を回っているため、深夜には決して見えない金星ですが、東方最大離角前後は日没後の西空における位置がとても高く、ひじょうによく目立ちます。

もし今月上旬の日没直後に西空が開けている場所へ出かける機会があれば、金星のさらに西、地平線付近にも注目してみてください。2日に水星も東方最大離角をむかえるのです。水星は金星よりもさらに内側を回っているので、太陽から一番離れたときでさえ、見るのがとても難しい惑星です。しかし、今月上旬は比較的条件がよく、日没30分後でも高度が14度あります。高度約30度の金星を目印にすれば、見つけやすいはずです。

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惑星をぜんぶ見よう!

(惑星ぜんぶ見ようよ☆)

「惑星ぜんぶ見ようよ☆」キャンペーンのロゴ(提供:(惑星の画像)NASA/JPL)

さて、ここまでで8個ある惑星のうち4個が登場しました。残りはどこにあるのでしょう。

天王星と海王星は、夜半過ぎに東の空に登場します。肉眼で見ることはできませんが、双眼鏡やフィールドスコープがあれば挑戦できます。火星はもう少し遅く、日の出前にやっと昇ってきますが、こちらは肉眼でも簡単に確認できるでしょう。

このように、今月上旬に限れば7個の惑星を一晩で見ることもできるのです!さらに注目していただきたいのは、惑星の中でも暗い天王星や海王星でさえ、双眼鏡やフィールドスコープがあれば観察できる点です。これが1年前ならそうはいきませんでした。今は「準惑星」に分類された冥王星があったからです。

その冥王星も、19日に衝となり見ごろをむかえます、しかし、「見ごろ」といっても、よほど大きな望遠鏡がないと存在を確認することができないのです。

こうなればすべての惑星をこの目で見てみようではありませんか。今月から、国立天文台と日本望遠鏡工業会が主催するキャンペーン「惑星ぜんぶ見ようよ☆」が始まります。よく天体観察をする方でも、水星・天王星・海王星となると案外見ていないもの。まったく星を見たことがない方なら、それ以外の惑星が街中でも目にすることができるほど明るいことを知っていただきたいものです。

一晩でとはいいません。1年間という長い期間中に、できるだけ多くの惑星を、自分の目で見てみませんか。おっと、もう1つの惑星を忘れていましたね。まずは足もとを見て…さあ、残り7個を夜空で探しましょう。

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太陽と月もめったにない「見ごろ」

惑星で盛り上がる今月ですが、太陽系といえばさらに明るい天体が2つありますね。そう、太陽と月です。いまさら?と思われてしまうかもしれませんが、今月は太陽と月にとっても、ちょっと特殊な1か月なのです。

まず、今月は満月が2回もあります。もともと1か月といえば「新月から新月までの時間」だったのですから、あり得ない現象です。しかし、今は太陽の動きをもとに暦(こよみ)が作られていて、1か月も少し長めなので、こんなこともあるわけです。最初の満月は6月1日、2回目は6月30日です。

一方、太陽についていえば、6月22日が夏至です。この日は昼、つまり太陽が地平線上に出ている時間がもっとも長くなります。今月は、太陽系の住人がことごとく見ごろをむかえるというわけですね。とはいえ、専用の観測機器がない限り、一番明るい太陽だけはやめておきましょう。肉眼で見るだけでも目を傷めますし、双眼鏡などで見ようものなら失明の危険さえあります。

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