「はやぶさ」小惑星イトカワに到着

【2005年9月14日 宇宙航空研究開発機構 プレスリリース2005

小惑星イトカワを目指していた第20号科学衛星「はやぶさ」は、2003年5月に打ち上げられ、2004年5月の地球スウィングバイを経て順調に飛行を続けてきた。そして、日本時間9月12日10時、化学推進機器による秒速7cmの減速噴射を行い、イトカワから地球方向に約20キロメートルの距離に静止した。現在、「はやぶさ」は、地球から約3億2000万kmの距離に位置しており、小惑星の科学観測、サンプル・リターンという目的を果たすための最初の大きなステップを踏んだといえる。

(「はやぶさ」が撮影したイトカワの合成カラー画像) (9月10、11日に撮影されたイトカワの自転の様子)

(上)「はやぶさ」が撮影したイトカワの合成カラー画像(9月11日19時24分(日本時間)撮影、距離約25km、視野は2度角)、(下)9月10、11日に撮影されたイトカワの自転の様子(提供:JAXA)クリックで拡大

「はやぶさ」は、搭載された科学観測カメラで、小惑星イトカワを多波長域、および多点から撮影することに成功している。静止位置から小惑星イトカワをみると、太陽光がほぼ正面から入射し、濃淡や起伏はわかりにくくなっているが、9月10日、11日に撮影され合成されたカラー画像、および複数の位相角から捉えた画像では、クレーターや表面の凸凹がはっきりと捉えられている。なお、その他の撮影された写真は、JAXAメインサイト(http://www.jaxa.jp)及び宇宙科学研究本部ウェブサイト(http://isas.jaxa.jp)にて公開されている。

「はやぶさ」探査機のシステムは、3基あるリアクションホイール(姿勢制御装置)のうち1基が故障しているものの、残り2基で問題なく運用されており、搭載の可視、近赤外、X線の科学観測器やレーザー高度計なども正常に動作していることが確認されている。「はやぶさ」は、11月末までイトカワ近傍に滞在。この間、科学観測を行うとともに、イトカワ表面への降下・試料採取を行う予定になっている。


日本の小惑星探査機「はやぶさ」は、小惑星にランデブーし、サンプルを回収して地球に持ち帰る。先進的な実験要素はいくつかあるが、もっとも大きなものはそのイオンエンジンだ。実用化されたこのエンジンは、長時間の連続噴射が可能なので、小さいパワーながら、トータルで見ると大きな力を発揮する。アメリカやヨーロッパも競ってこの技術の実用化にチャレンジしている。(「スペースガイド 宇宙年鑑2005」より一部抜粋)