宇宙の年齢は137億歳?!

【2003年2月28日 国立天文台天文ニュース(621)

新聞などのメディアをにぎわせたように、NASA(アメリカ航空宇宙局)が中心となって進めているWMAP衛星プロジェクトチームは、宇宙年齢が137億歳と非常に精度よく決めることができたと発表しました。

この結果は、NASAが打ち上げたマイクロ波観測衛星、WMAP(Wilkinson Microwave Anisotropy Probe)の取得した一年分のデータを解析した結果から導かれました。WMAPは初期宇宙からの光である宇宙マイクロ波背景放射を全天にわたって、詳細に観測する衛星です。2001年6月30日に打ち上げられ、地球から約160万キロメートル離れた、L2と呼ばれるラグランジュ点にいて、観測を行っています。

観測結果を理論計算をもとに解釈すると、宇宙は「普通」の物質が4パーセント、23パーセントが正体不明のダークマター、残り73パーセントがダークエナジーによって構成されていることがわかりました。また、宇宙で最初の星は、宇宙誕生からわずか2億年後に輝き始めただろうということもわかりました。宇宙誕生後2億年というのは、多くの科学者が考えていたよりもずっと早い時期です。さらに、宇宙は平らで、永遠に膨張し続けるであろうという結果も導かれました。

WMAP衛星は、プリンストン大学のウィルキンソン(David Wilkinson)博士に敬意を表して名づけられました。同博士は、2002年9月に亡くなった世界的に有名な宇宙論の科学者です。

  • 「ラグランジュ点」:主天体(たとえば地球)の周りに従う天体(たとえば月)が回っているとき、さらに微かな天体が従う天体といっしょに主天体を回ることができる力学的に安定な場所を指します。地球と月の関係で言えば、地球、月、微天体の位置関係が常に同じ場所にあり、L1からL5の5つ点が存在します。WMAPは太陽・地球・WMAPと直線に並ぶL2点にいます。
  • 「謎のダークエナジー」:アインシュタインが予言した宇宙定数(ダークエネルギー)。国立天文台の杉山直(すぎやまなおし;宇宙論)さんによれば、「宇宙のほとんどを占める物質やエネルギーは何かという新たな謎も生まれた」ということです。