オートガイドの
テクニカルリファレンス

オートガイドについて、技術的な情報をまとめました。
オートガイドの処理を確認したい場合や、ガイドが正しく行われない場合にご覧ください。


オートガイドがうまくいかない場合は「よくある質問と回答(オートガイド)」もご覧ください。

基本的な対応

機材が変わらない限り、1度のキャリブレーションでオートガイドを行います。天体を導入して望遠鏡の姿勢が変わった場合でも、キャリブレーションの再実行や設定の変更は不要です。

ドイツ式赤道儀では、テレスコープイースト/ウエストを反転すると写野が180度回転しますので、赤道儀による違いを考慮し望遠鏡の姿勢を判定して、赤緯のパルスを反転します。

赤道儀による違い

赤道儀によって、テレスコープイースト/ウエストの取得と、赤緯パルスの自動反転には違いがあります。

テレスコープイースト/ウエスト取得
タカハシ TemmaPC・Temma2シリーズは、テレスコープイースト/ウエストの取得が可能で、望遠鏡の姿勢を正確に判定できます。
赤緯パルス自動反転
ビクセン STAR BOOKシリーズは、テレスコープイースト/ウエストの状態に合わせて、赤緯のパルスが自動的に反転します。
赤緯パルスが自動反転する機種、またはフォーク式の赤道儀(赤緯パルスの向きが変わらない)では、「子午線越えで赤緯パルスを反転させない」をオンに設定します。

キャリブレーションの処理

キャリブレーションを開始すると以下の処理を順に行います。キャリブレーション中には、オートガイド画面の左下に処理状態が表示されます。

方向確認のパルステスト
ガイドパルスを4方向に出力して、望遠鏡の現在位置の増減でパルス番号と赤経・赤緯の方向を対応付けます。パルスの発行時間と移動量から、ガイドチップの1ピクセルを移動するために必要なパルスの長さを計算します。パルスの長さには、(パルスの発行時間の合計)/(ピクセル移動量の合計)x 0.8 の値を採用します。方向確認のパルステストは、オートガイドの機材を変更した場合は実行する必要があります。
回転角の計算
オートガイダーで撮影した画像から、写野の回転角を計算します。恒星データとのマッチングを行って、0.1度以下の精度で回転角を計算します。回転角を求めることにより、オートガイダーの東西・南北が赤経・赤緯の方向と平行ではない場合でも、赤経・赤緯の両方の補正パルスで、正確にオートガイドを行います。
キャリブレーションのパルステスト
4ピクセル以上動くまでガイドパルスを4方向に出力して、ガイドチップ上の移動を確認します。この時点で、最終的なパルスの方向を決定します。
キャリブレーションのデータを保存
テレスコープイースト/ウエストの取得が可能な赤道儀では、テレスコープウエストの場合には回転角を180度回転させて、「東」(テレスコープイースト)の状態としてキャリブレーションのデータを保存します。それ以外の赤道儀の場合は、キャリブレーション時の姿勢を「正」として保存します。
マッチングに失敗した場合は、キャリブレーション終了時にメッセージが表示されます。ゲインや露出時間を上げて(大きくして)再度キャリブレーションを行ってください。
※キャリブレーションのログ
キャリブレーションを行うと、ログファイルを自動的に保存します。キャリブレーションが正しく行われない場合には、ログを参照して問題点の診断ができます。

保存先フォルダ:%USERPROFILE%\AppData\Local\AstroArts\stlshot1
ファイル名(ステラショットを起動した日時):stlshot_caliblog_YYYYMMDD_HHMMSS.txt
(例)stlshot_caliblog_20180206_210413.txt

ログファイルの見方については、ログのサンプルをご覧ください。

オートガイドの処理

オートガイドを開始するとパルスを出力する向きを判定し、オートガイドの安定を待って撮影を開始します。

テレスコープイースト/ウエストの取得が可能な赤道儀
テレスコープイーストの場合は、キャリブレーションデータをそのまま使い、ガイドを開始します。テレスコープウエストの場合は回転角を180度回転して、赤緯の反転が必要な場合は反転してパルスを出します。
テレスコープイースト/ウエストが取得できない赤道儀
ガイドを開始する前に赤経方向のパルスを出力して、移動量から回転角を求めます。この回転角とキャリブレーションの回転角を照らし合わせて、回転角が同じならばキャリブレーションのデータでガイドを開始します。回転角が180度異なる場合はキャリブレーションの回転角を180度回転し、赤緯の反転が必要な場合は反転してパルスを出力します。
なお、ここで判定した望遠鏡の姿勢は、別の天体を導入するまで保持されます。
オートガイドの安定待ち
ガイドを開始してから、「パルス発生しきい値」のピクセル以下に収まった回数が「安定判定カウント数」に達するまで、カメラのシャッターを開かずに撮影を待ちます。
オートガイドの調整
ガイドが安定しない場合は、「赤経/赤緯アグレッシブネス」を小さくする、または「パルス発生しきい値」を大きくします。

ステータス表示

望遠鏡ステータス(オートガイド画面の右下)には、望遠鏡の姿勢やパルス反転の状態が表示されます。正しくガイドができない場合は、ステータスと望遠鏡の姿勢などの違いを確認してください。

(例)西<マウント>(赤緯反転)
意味:テレスコープウエストの状態で赤道儀から取得して判定、赤緯パルスが反転
1番目の表示:望遠鏡の姿勢
テレスコープイースト/ウエストの取得が可能な赤道儀では、「東」または「西」が表示されます。取得できない赤道儀は、キャリブレーション時の姿勢と同じときは「正」、逆の場合は「逆」が表示されます。
2番目の表示:姿勢や回転角を判断した根拠
<マウント>:赤道儀から取得したテレスコープイースト/ウエストを姿勢の判断に用いた場合に表示されます。テレスコープイースト/ウエストが取得できない赤道儀でも、パルスで回転角を計測した後は、次の導入までは「<マウント>」が表示されます。
<マッチング>:方向確認のパルステスト直後のマッチングで回転角の検出ができた時には、この表示になります。
<パルス>:キャリブレーション時にマッチングで回転角が計算できなかった場合、パルスと移動量から回転角を計算した状態を示します。 また、テレスコープイースト/ウエストを取得できない赤道儀では、ガイド開始時にパルスを出力して回転角を計算します。キャリブレーションデータと比較して回転角を求めた場合にも、「<パルス>」の表示になります。
3番目の表示:赤緯パルス反転
赤緯パルスを反転してガイドを行う場合は、「(赤緯反転)」が表示されます。