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2005年火星大接近

2005年の大接近

2005年の火星は視直径20秒超の接近、次回は2018年

 2003年の8月に、6万年ぶりと言われる記録的な超大接近となった火星。様々なメディアで取り上げられ、大きな話題になったことは記憶に新しい。あれから2年2カ月が過ぎ、2005年10月30日に再び火星が地球に最接近する。

 協力:あさだ考房

火星は2年2カ月ごとに接近

火星接近の様子

 火星は、地球のすぐ外側の軌道を回っているが、直径が地球の半分ほどしかないため、およそ2年2カ月ごとに地球と火星が軌道上で隣どうしに並ぶときでないと、表面の詳しい観測ができない。ところが、接近時ならば必ず視直径の大きな火星が見られるかというとそうではない。地球は、真円に近い軌道で太陽の周りを回っているが、火星は離心率0.093と、少しつぶれた楕円軌道を描いている。そのため、地球とどこで隣どうしになるかによって、地球−火星間の距離は大きく変化するのだ。

小口径望遠鏡で火星面が見やすくなるのは、視直径が15秒を超えるころから。2005年は9月上旬から12月上旬までの4カ月間は楽しむことができる(画像はクリックで拡大)。

 視直径が20秒を大きく上回る大接近は、15〜16年に一度しか巡ってこないが、その前後の接近の年も火星との距離は比較的近くなる。特に記録的な大接近の次にあたる2005年は条件が良く、最接近時の視直径は20.2秒。2003年に比べると約20%ダウンとなるが、視直径が20秒を超えれば十分に大接近と言えるだろう。ちなみに、前々回2001年6月22日の最接近時は20.8秒だった。このときの火星の大きさとほぼ同じだ。

おひつじ座で最接近

火星の軌道

 地球のすぐ外側を周期687日で回るだけあって、火星の動きはめまぐるしい。2005年1月に、さそり座で1.5等というおよそ火星らしくない明るさで光っていた火星は、黄道に沿うように、ぐんぐん東に進み、6月下旬には、2003年に最接近したみずがめ座を抜けて、うお座に入り0等星で輝いていた。明け方に明るい星のない秋の星座の中でひときわ目立っていたのを思い出す。

今年の火星は、さそり座からおうし座まで順行し、10月1日に留のあと逆行に転じ、10月30日におひつじ座で最接近、11月7日に衝となり、12月11日に再び留となって順行に戻る(画像はクリックで拡大)。

 7月13日には太陽の西側に90度離れて西矩となり、9月に入ってもスピードを遅めながらも東に進む。そして10月1日に、おうし座に入ったところで、今度は西に進路を変える。惑星が東に進むことを順行、西に進むことを逆行といい、順行から逆行(あるいは逆行から順行)へと移り変わるときを留という。もちろん、火星が軌道上を逆方向に進むわけではなく、天球上に投影した見かけの動きだ。

 10月1日の留のときの明るさは−1.7等、視直径は18秒台となり、いよいよ小口径の望遠鏡でも火星ウオッチングチャンスがやってくる。そして10月17日には、木星と変わらない−2等まで増光し、22日には視直径は20秒台の大台を突破。10月30日に、おひつじ座で最接近を迎える。この後、11月6日までほぼ2週間にわたって、視直径20秒台の火星が見られる。

 火星はその後も逆行を続け、12月11日に留となって再び順行に戻る。留を過ぎた火星はまるで風船がしぼむように小さくなり、12月末には光度0等級、視直径は13秒を切ってしまう。2005年が終わるとともに、火星大接近も幕となる。

2003年よりも南中高度が高い

南中高度

 2003年の超大接近に比べると、視直径で20%ほど小さくなってしまうのは残念だが、大きなメリットもある。

2003年の超大接近のときは、南中高度が34度しかなかった。表面の模様を詳しく観察するなら高度は高いにこしたことはない。今年の接近では70度に達する好条件だ(画像はクリックで拡大)。

 2003年の火星は、みずがめ座に位置していたため、南中高度は東京で34度と低く、夏とはいえ気流の乱れの影響を受ける夜が少なくなかった。視直径が25秒を超えたからといっても、必ずしも火星面の模様が見やすいとは限らなかったわけだ。しかし2005年は、おひつじ座で接近となるため、南中高度は70度にもなる。10月下旬ともなると気流はやや不安定になるが、それを補って余りある高度だ。2003年よりも落ち着いた火星像が見られるチャンスが増えることだろう。

観望チャンスは視直径が15秒を超えるころから

 火星の模様は、視直径が15秒を超えるころから小口径の望遠鏡でも見やすくなってくる。2005年の接近で視直径が15秒を超えている期間は、9月上旬から12月上旬までの4カ月間。さらに18秒を超えるのは、10月上旬から11月下旬の2カ月弱ある。秋の夜長、心ゆくまで火星を観望できるだろう。

 ただ、視直径15秒とはいっても、木星の3分の1ほどの大きさしかない。観望倍率は、倍率を200倍から300倍ぐらいにしたいところ。各自の望遠鏡の有効最高倍率(目安として望遠鏡の口径をミリ単位にした数の2倍)を考えながら、できるだけ高倍率でじっくり観察しよう。長時間観望していると、だんだん目が慣れてきて、最初は見えなかった淡い模様が見えるようになるものだ。

満月の明るさにも負けない火星の赤

10月19日午後9時ごろの東の空のようす

10月19日午後9時ごろの東の空のようす(拡大)

 10月30日に大接近をひかえた火星が、おひつじ座とおうし座の境界付近で輝いている。宵のうちは、まだにぎやかな冬の星座が出そろわないので、東の空に目を向ければ、−2等の火星は真っ先に目に飛び込んでくるはずだ。

 そんな火星のそばを18日から20日にかけて、満月過ぎの月が通り過ぎる。両者が最も近づくのは19日で、そのときの間隔は4.3度。倍率7倍の双眼鏡の視野にすっぽり収まる。秋の澄み渡った夜空にかかる月齢16の月は、まぶしいほどだが、火星もその明るさに負けずに印象的な赤い色で輝いている。双眼鏡程度の倍率では、火星は光点にしか見えないが、恒星のようにまたたかないので、面積をもっていることがわかるだろう。

火星は、明るい星がない秋の星座の中で、−2等級の強烈な赤い光を放っている。10月19日に月齢16の月が接近する。月と火星の左にはプレアデス星団も光っている。図は10月19日午後9時ごろの東の空のようす(画像はクリックで拡大)。

月と火星の間隔は4.3度。7倍双眼鏡の視野にすっぽり入る。満月過ぎのまぶしいほどの光に負けじと、火星が赤く輝いている(画像はクリックで拡大)。

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 2005年10月号では火星大接近の概要を、11月号では「2005年火星大接近のすべて」と題して巻頭特集を組んでいます。

関連リンク

星ナビ.com
2005年10月号2005年11月号「火星大接近特集」