Location:

2005年3月30日 アンタレス食を見よう!

3月30日の深夜に、さそり座の1等星アンタレスが月に隠される「アンタレス食」がほぼ全国で見られます。日本で見られるのは14年ぶりのことです。

情報提供/相馬充(国立天文台)、早水勉(せんだい宇宙館)

食のようすを捉えた画像や動画は、「投稿画像集1 / 2」をご覧ください。

はじめに

アンタレス食イメージ図:東京の出現時のようす 月が背後の星を隠す現象を「星食」と言います。月は天球上で黄道の近くを動くので、黄道の近くにある星は星食で隠される可能性があり、1等星では、次の星が星食で隠されることがあります。

このうち2005年3月30日の夜中(正確には31日未明)には、さそり座の1等星アンタレスの星食が起こります。前回アンタレスの星食が見られたのは1991年だったので、14年ぶりの現象になります。次に日本で夜間にアンタレスの星食が見られるのは2023年ですので、この貴重な機会を逃すことなく観測しましょう。

アンタレスの食で何が分かるか

アンタレスの食を観測することで、次のような成果が得られます。

月縁地形を精密に求める

月縁は月の地形(クレーターや山脈、谷など)の影響で、見かけの大きさで±2″程度の凹凸があります。1963年、アメリカ海軍天文台のC.B.ワッツが地上の写真観測を基に月縁図を作成し、これが現在まで星食の予報や解析に使用されていますが、細かな凹凸は示されていません。また、様々な系統誤差があることもわかっています。

星食を多数の地点で精密に観測すると、月縁の凹凸が詳しく求められ、月の地形を調べることができます。また、この月縁データを過去の日食観測と組み合わせれば、太陽直径が変化しているかどうかを調べることもできます。

アンタレスの視直径を求める

アンタレスは赤色超巨星で、恒星干渉計による観測から視直径が0″.04と見積もられています。この大きさがあると、星食の際に月へ潜入したり月から出現したりするのに0.08秒かかり、ビデオでは複数フレームに記録されることになります。アンタレスの大きさを(見かけ上も、実体も)実感することができるでしょう。

このほか、「基準座標系の誤差を求める」、「アンタレスの伴星を捉え、位置関係を正確に知る」といった成果が得られます。

ステラナビゲータでアンタレス食を再現

アンタレスが月縁のどこから潜入してどこから出現するのかは、観測地によって異なります。もちろん、その時刻も異なります。

プラネタリウムソフト「ステラナビゲータ Ver.7」を使ってシミュレーションすれば、自分の住んでいるところでは何時ごろ、どのように見えるのかを再現することができます。また、沖縄方面では接食(月縁ぎりぎりをアンタレスが通過する現象)が見られますが、このようすも再現できます。

その瞬間を見逃さないためにも、事前にしっかりと予習しておきましょう。

→ステラで再現「アンタレス食を再現しよう」(星ナビ2005年4月号掲載)

観測してみよう

各地での見え方 ▲ アンタレスは、月の明るく輝く東側から潜入し、月の夜の側である西側から出現する。北日本では、アンタレスが月の中心に近いところまで入り込む(クリックで拡大)。 各地で の月の位置 ▲ 潜入時の地平高度は、札幌や福岡では10°に満たない。観測場所で南東から南南東の空を見通せるかどうか事前に確かめておこう(クリックで拡大)。

眺めてみよう

アンタレス食は肉眼でも観望することができますので、ただ眺めるだけなら特別な観望機材は必要ありません。しかし、潜入や出現の瞬間をしっかりと見るためには、月を拡大して見ることができる双眼鏡やフィールドスコープなどが便利です。双眼鏡やフィールドスコープは、アストロアーツのオンラインショップでもお取り扱いしています。

潜入・出現の時刻を測ろう

アンタレス食は眺めるだけでも楽しい現象ですが、潜入と出現の時刻を正確に測定すれば、より楽しめるはずです。

アンタレスが月の縁に潜入してから出現するまで、約1時間かかります。特に出現時にはアンタレスを見失わないように気をつけましょう。赤道儀で自動追尾しておくとよいでしょう。できれば天体望遠鏡で観測するのが望ましいですが、小型の双眼鏡でも観測可能です。

星食の観測で、光学系よりも大切なのが、時刻を正確に知る報時手段です。GPSを使用したシステムがもっとも高い精度を得られますが、専用の機器が必要です(オンラインショップでもお取り扱いしています)。NTTの時報サービス「117番」も、精度はやや劣りますが有効な手段です。

食の様子をビデオで録画しよう

高倍率のズームレンズを搭載した家庭用ビデオカメラを使って、同じ画面の中で月とアンタレスの両方をはっきりと写すことができれば、潜入や出現の瞬間を録画することも可能です。ただし、月とアンタレスの明るさの差があまりにも大きいため、マニュアル露出またはマニュアルでの明るさ補正機能が必須となります。この場合にも、正確な時刻が測れるように準備しておきましょう。

詳しくは

時刻計測やビデオ撮影の方法について、詳しくは「星ナビ2005年4月号」をご覧ください。

各地の予報

方向角
(角度の説明図) 月縁で、アンタレスが潜入(または出現)する位置を、東回りの角度で表しています。
方位
地平座標での月の方向を、北から東回りに測った角度で表しています。90°は真東、180°は真南です。
地名潜入時刻方向角高度方位出現時刻方向角高度方位
(JST)北極天頂N→E(JST)北極天頂N→E
札幌0h33m44s105°137°140°1h44m42s300°320°16°155°
青森0h31m38s111°145°11°139°1h43m29s295°317°18°154°
仙台0h30m33s117°152°12°139°1h43m02s291°313°20°154°
福島0h30m04s119°155°12°138°1h42m18s289°313°21°153°
東京0h29m09s125°163°14°137°1h40m28s283°309°22°152°
松本0h28m05s127°166°12°136°1h37m54s282°309°20°150°
金沢0h27m24s128°168°11°135°1h36m02s280°308°19°148°
名古屋0h27m34s132°172°12°135°1h35m37s277°306°21°148°
京都0h27m06s134°175°11°134°1h33m37s275°305°20°147°
大阪0h27m05s136°177°12°134°1h32m54s274°304°20°146°
岡山0h26m38s139°181°11°133°1h30m20s271°303°19°145°
広島0h26m29s142°186°10°132°1h27m32s267°301°18°143°
高知0h27m01s143°186°11°132°1h28m37s267°301°20°144°
福岡0h26m54s149°194°130°1h23m08s261°297°17°140°
宮崎0h28m09s152°198°11°131°1h22m49s258°295°19°140°
鹿児島0h28m39s156°202°11°130°1h20m40s255°293°19°139°
那覇0h51m28s206°255°16°131°(接食)