新機能のオートストレッチで
天体写真のカラーバランスを整える

オートストレッチの実際

では、実際の作例=画像Aを見てください。

M42(左)オリジナル、(右)オートストレッチ補正後

画像A:M42(左)オリジナル、(右)オートストレッチ補正後

まず左側のオリジナル画像ですが、赤にかぶっているのがわかります。そして右側がオートストレッチによる補正を行ったものです。どう変わったかは一目瞭然ですね。

オートストレッチでフィルター係数に次いで大切なのが、どのエリアをバックグラウンドとして指定するかです。間違って星雲の淡いガスがある部分を選択すると、良い結果は得られません。画像Bの左側の画像は、バックグラウンドのエリア指定が適切でなかったために、バックグラウンドの緑かぶりが消えていない例です。オートストレッチの結果はリアルタイムで確認できますので、何度か試して正しいバックグラウンドを探ってください。

バックグラウンドの指定。右が適切な例

画像B:バックグラウンドの指定。左(画像の右上あたりを指定)は不適切、右(画像の右下隅を指定)は適切な例

このM42の完成形(画像C)も載せておきます。「ステライメージ7」のテーマ画像にも使っていただいた作品です。この作品では、L画像に画像復元処理をかけてガスのディテールを向上させました。対象が明るかったことに加え、11枚という枚数をコンポジットしたことで充分に高いS/Nが得られ、強い復元処理をかけることができました。通常、星雲のディテールアップを狙う場合、Hαフィルターを使った狭帯域撮影を行い、コントラストを上げるのが普通です。しかし、オリオン座大星雲に関しては水素のHα輝線が大部分を占めているわけではなく、Hβ輝線や、酸素など他の元素の輝線、さらには、反射星雲部分が複雑に入り組んでいることから、Hα撮影を行わずに通常の撮影を行いました。通常の撮影を行ったもうひとつの理由は、Hα画像を使うとLRGB合成を行った場合に、恒星像の周囲に色がついて画像の質を落とすという問題があるためです。

色に関して言うと、この作品でチャレンジしたのは、暗部まで色を出すことでした。人間の眼の特性として暗部にはあまり色を感じないようになっているので、通常の処理では暗部の彩度を落とすのが普通です。S/Nの問題もあるわけですし……、しかし今回は充分なS/Nが確保できているので、逆に暗部の彩度を上げる処理をしています。これらの処理を経て仕上げたのが下の画像Cで、色彩豊かな作品に仕上がったと思います。

M42

画像C:M42
タカハシ FSQ106(焦点距離550mm) FLI ML-8300 L:10分×11 RGB各色:10分×4

色彩を出すことにこだわるのは、色彩によっても、ディテールがアップすると信じるからです。同じ明るさのガスであっても「色が違う」という表現ができると情報量が増え、絵の奥行き感に繋がります。ガスがどういう輝線の比率で輝いているか、またどんな色の星の光を受けているのかをきちんと表現することによって、絵に立体感が生まれます。