デジタル一眼 天体写真入門
天体別実践編:
M81・M82銀河を撮ろう

北の空で写しやすい銀河M81・M82

M81とM82は、おおぐま座の頭部付近にある明るい銀河で、北斗七星が北の空に高く上がる春ごろが写しやすい時期です。600mmから1000mm程度の焦点距離なら同一写野に収まりがよく、フォトジェニックな銀河といえます。銀河の中心部分は特に明るく、市街地でも姿を捉えることができます。

M81・M82銀河

2つの銀河を縦方向に配置した構図で撮影
口径81mmF7.7屈折(焦点距離625mm)、APS-Cサイズカメラ、総露出時間60分(300秒×12枚)、ISO 1600、ディザリングガイドなし、撮影地:千葉県南房総市

M81は美しい渦巻銀河です。M82は、過去にM81と接近しすぎたために形状が崩れた不規則銀河で、銀河同士の相互作用で生まれた星々が短い一生を終える際の超新星爆発が引き起こす「銀河風」による赤いジェットが特徴です。

オートガイドとディザリング撮影

じゅうぶん暗い空でM81とM82を撮影してみましょう。空が暗い場所では1枚の撮影に長い露出時間をかけられるので、M81の腕の細部まで写すことができます。オートガイダーを使い、さらにステラショットの「ディザリングガイド」機能を活用して高品質の画像を目指してみます。

構図のポイント

焦点距離600mm前後であれば、横構図と縦構図のどちらでも2つの銀河を写野に収めることができます。両銀河をバランスが良く配置するため、ステラショットの「導入補正」機能を使って構図決め用に撮影した画像をクリックし構図を合わせます。

ディザリング撮影

ノイズはカメラのイメージセンサーの同じ位置に発生するため、正確なオートガイドにより同一構図で撮影した画像をコンポジットするとノイズも強調されます。画像処理でノイズを低減するにはダークフレームを用いますが、気温の変動でノイズを完全には除去できない場合があります。

ディザリング撮影とは、オートガイドの機能を使って1枚撮影するごとに構図をわずかにずらして撮影を行う方法です。構図がずれた画像を、天体で位置を合わせてコンポジットすると、同じ位置に発生するノイズがずれて平均化され目立たなくなります。

ディザリング撮影した画像にダーク補正を行うと、さらに滑らかな仕上がりの高品質画像を得ることができます。

詳細はステラショット製品ページ「はじめてのステラショット:#6 ディザリング撮影」をご覧ください。

オートガイドの準備

機材を組み上げて、極軸合わせとピント合わせが終わったら、オートガイドの準備をします。

ステラショットでは、以下の手順で準備してオートガイダーのキャリブレーションを行います。キャリブレーションの精度を上げるため、天の赤道付近、かつ子午線付近ではない天体を使用します。子午線付近を避ける点は、赤道儀のバランスが釣り合うと赤経のギアのかみ合わせが浮きやすくなり、キャリブレーション中に余計な動きをしてしまうおそれがあるためです。

  1. ガイド鏡にオートガイダーを取り付け、ガイドケーブルでオートガイダーと赤道儀をつなぎます。
  2. USBケーブルでオートガイダーとPCをつなぎます。
  3. ステラショットの[設定パネル]でガイド鏡の焦点距離を入力し、オートガイダーを「接続」します。
  4. 星図画面を表示して、赤道付近でかつ子午線から少し離れた天体を選択して導入します。
  5. オートガイド画面に切り替え、「リアルタイム」画面を見ながら「ゲイン」「露出」を調節し、ガイド鏡のピントも合わせます。
  6. 「赤経/赤緯アグレッシブネス」は70%に設定しておきます。この設定状態を基本とします。
  7. 「キャリブレーション」ボタンでキャリブレ―ションを開始して完了するまで数分待ちます。
  8. 「設定」ボタンから「オートガイド設定」ダイアログを表示し、「ディザリングガイド」をONにします。

キャリブレーションが完了したら、オートガイドの調整をします。

  1. M81またはM82を導入し、オートガイド画面の「ガイド開始」ボタンでガイドを開始します。
  2. オートガイドのグラフをしばらく観察し、赤経・赤緯ともに安定していることを確認します。
    • グラフの赤線が大きく動く場合は「赤経アグレッシブネス」を、緑線が大きく動く場合は「赤緯アグレッシブネス」を少し下げます。グラフが安定するまで「アグレッシブネス」を調節します。
    • 天候があまりよくなくシンチレーションによりガイド星が大きく揺らぐ場合には「アグレッシブネス」を下げていきます。

撮影を開始

オートガイドが安定したら撮影を始めましょう。

  1. [撮影パネル]で下記のように設定し、導入補正のための撮影を行います。
    • 露出:5秒
    • ISO感度:最高感度
    • 画質:JPEG
  2. 再生画面に撮影画像が表示されたら、2つの銀河の中間付近をクリックし構図の中心として指定します。「導入補正」をクリックして「クリックした位置を中央」を選択します。導入補正が終わったら、もう1度撮影して構図を確認しましょう。
導入補正前

導入補正後に撮影した画像
構図を調整するためにはM81とM82の中間付近をクリック(緑色の×マーク)して導入補正を実行

  1. 構図が決まったら適正露出を確認するため、次のように段階的な露出で仮撮影を行います。
    • 露出:15秒、30秒、60秒
    • ISO感度:最高感度の半分
    • 画質:JPEG
  2. 撮影した画像が表示されたらヒストグラムを確認します。ヒストグラムの山が左(シャドウ側)から4分の1から3分の1になる露出を探ります。
ヒストグラム

仮撮影でヒストグラムを確認して適正露出を判断(この例は露出アンダー)

  1. 本撮影では画質を「RAW+JPEG」にして、総露出時間が10分以上になるように露出時間と枚数を設定します。また、長時間露出で風などで星像が流れることを考慮して、予定の1.5〜2倍程度の枚数を撮影しておくと無難です。
  2. オートガイド画面に切り替えて、「ガイド開始」ボタンをクリックしオートガイドを開始します。
  3. [撮影パネル]で撮影設定を確認し、撮影を開始します。
  4. 撮影が終わったら「ガイド中」ボタンをクリックしてオートガイドを終了します。
  5. 鏡筒の対物レンズまたはカメラのレンズにキャップを被せて、同じ露出時間でダークフレームを撮影します。枚数は、ライトフレームの4分の1程度を目安にします。

明るい銀河とはいえ1200万光年彼方の天体ですので、精細な画像にするためたっぷり露出時間をかけましょう。また、枚数を増やして総露出時間を長くすることで、より滑らかな画像に仕上げることができます。

画像処理

  1. ステライメージの「自動処理モード」で、[コンポジットパネル]にライトフレームとダークフレームを読み込みます。
  2. 画面右上部分で下記のように設定し、「実行」ボタンでコンポジットを実行します。
    • 色調整:ON
    • 自動位置合わせ:ON、回転を計算:ON
    • ガイド状態で選別:ON、上限値:1.1
    • コンポジット方式:加算平均
  3. コンポジットが終わったら[画像調整パネル]に切り替え、画像を調整します。
    • 背景は真っ黒にせず、ほのかに明るくなる程度に「シャドウ」を調整します。
    • M81銀河の腕の部分が浮き出るように「ハイライト」を調整します。
    • 銀河の中心部分が浮き出るように「中間調」を調整します。
    • 中心部分が白飛びしすぎないように「ハイライト」「白飛び」を調節します。
    • M81の腕がくっきりと出るように「ハイライト」「シャドウ」「シャープネス」を調節します。
    • M82の赤いジェットの色が映えるように「カラー強調」を調節します。
M81・M82銀河

ディザリングガイドで撮影して自動処理モードで仕上げた画像
口径130mmF5反射(焦点距離650mm)、APS-Cサイズカメラ、総露出時間 60分(450秒×8枚)、ISO 800、撮影地:神奈川県湯河原町

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