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Part-3 気圧配置と晴天域の関係


 Part-2 では、しし群の日の気圧配置は、西高東低の冬型・低気圧通過・移動性高気圧の3つの内のどれかにほぼ限られ、この3つのパターンの現われる確率は、だいたい等しいことを説明しました。

 それでは、各気圧配置パターンのとき、どこが晴れてどこが曇るのでしょうか? 気圧配置のパターンごとにその傾向をまとめてみました。

 

 

※ 雲画像はすべて、東京大学生産技術研究所高木研究室の Satellite Image Archive for Network より。


● 3-1.移動性高気圧に覆われた場合

 天気図では、孤立した高気圧が日本の上空やすぐ近くにあり、同心円状の等圧線がこれを囲んでいる場合にあたります。

 この移動性高気圧の場合は、基本的に全国的に晴れの天気になります。

 移動性高気圧の気圧配置なら、高気圧の東側が快晴域です。高気圧の東側はゆるやかに気流が下降しており、乾燥した晴天域となります。この進行方向の前面(東側)は、ほぼ晴天になりますので狙い目です。これに対し高気圧の西側はハケで掃いたような高い雲(巻雲)が広がることが多くなります。日食や月食なら雲を透かして月を見ることができそうですが、光量の少ない流星となると、マイナス等級の流星でないと見ることは難しいでしょう。東北から北海道にかけての日本海側では、冬型の気圧配置に近い状態が残る場合があり、この場合は冬型に似た天気となります。

 また、高気圧が北に偏り、関東地方に東よりの風が入る場合には、北海道から関東にかけての太平洋岸のみ曇りとなることが多いので気をつけなければなりません。

 移動性高気圧に覆われた夜は風が弱く、放射冷却と冷気の堆積により明け方近くに霧が発生することがままあります。これは、盆地など窪んだ地形の場所に顕著に発生しますので、この気圧配置の場合は、なるべく標高の高い場所に移動したほうがよいでしょう。

 

移動性高気圧の天気図

● 移動性高気圧に覆われたときの天気図の例

 日本列島が広く移動性高気圧に覆われたときの天気図の例。高気圧の中心を間隔の開いた等圧線が同心円状に取り囲む。移動性高気圧の東側は快晴域でここが狙い目。それに対し、西側は薄い雲が広がってくる。

 過去60年の統計では、しし群極大日にこの冬型の気圧配置になる確率は28%(11月17日の出現率と18日の出現率の平均値、1941年〜2001年、気象庁月報より)。

移動性高気圧のとき雲量分布の合成図 ● 移動性高気圧に覆われたときの雲量分布の合成図

 1月10日が移動性高気圧の気圧配置になったことは、過去40年間で4回。このときの朝9時の雲量分布を合成したのが右の図だ。

 一般に移動性高気圧に覆われたときは全国的に晴れの天気になるが、雲量分布の合成図を見ると、それほど雲量が低くなっていない。

 これは、1. 移動性高気圧の東側は晴天だが西側は薄い雲がかかること、2. 北海道方面で冬型に近い気圧配置になる場合が多いこと、3, 移動性高気圧に覆われている期間が短く、冬型が緩むとすぐ次の低気圧の雲がやってきてしまうこと、4. 合成した事例数が4例と少ないこと、などが関係していると思われる。

 

2000年1月29日9時の雲画像 2000年1月10日9時の雲量分布

● 移動性高気圧のときの雲画像(左)と雲量分布図(右)

 ここでは、典型的な移動性高気圧の気圧配置となった、2000年1月29日9時の例を取り上げた。右の雲量分布図をみると、雲量が少ないことを示す赤い面積の部分が陸地で多く、全国的に晴れの地点が多いことがわかる。

● まとめ: 移動性高気圧の場合
・ 移動性高気圧の東側で快晴。
・ 西側は薄く雲がかかる。

 


● 3-2.冬型の気圧配置になった場合

 天気図では等圧線が南北に並び、ひまわりの画像では日本海に筋状の雲が並んでいるときがこの冬型の気圧配置です。

 この場合、天気の傾向はハッキリしていて、太平洋側は冬晴れの乾燥した晴天、日本海側は雪や雨の悪天となります。冬型になった場合、日本海側でしし群を見るのはかなり厳しいと言わざるをえません。南西諸島もほぼ同様です。

 逆に太平洋側の人はラッキーで、冬型になった場合はほぼ確実にしし群を楽しむことができるでしょう。Part-1に書いた、高い山脈により北西からの季節風がブロックされる平野部が晴れやすいという傾向は、この冬型のときの傾向です。ただ、冬型がひじょうに強い場合には、晴れと雪の境界線がより風下側(南西側)に移る場合もありますので、この点には注意が必要です。

 また、山脈が途切れて季節風が侵入してくる場所では、太平洋側でもあまり天気は良くありません。また、冬型の場合は山岳部よりも平野部の方が晴れることは多いでしょう。

 

冬型の天気図の例

● 冬型の気圧配置のときの天気図の例

 日本列島の西側に高気圧、東側に低気圧があり、日本の上では等圧線が南北に並んでいるのがこの冬型の気圧配置のときの特徴。この気圧配置になると、日本付近では大陸からの冷たい北西季節風が吹き、日本海側で雪や雨、太平洋側は晴天になることが多い。

 過去60年の統計では、しし群極大日にこの冬型の気圧配置になる確率は29%。

冬型の気圧配置のときの雲量合成図 ● 冬型の気圧配置のときの雲量分布の合成図

 過去40年間で1月10日が冬型の気圧配置になった年17例を集め、同日9時の雲量分布を合成した。雲量が少なく天気のよいところほど暖色に、逆に雲量が多く天気の悪いところほど寒色になるように配色してある。

 冬型の気圧配置になる日のみを取り出してみると、太平洋側と日本海側とで天気が大きく違うことがいっそうハッキリする。冬型になった場合、しし群を見るなら太平洋側だ。

 

1999年1月10日9時の雲画像 1999年1月10日9時の雲量分布

● 冬型の気圧配置のときの雲画像(右)と雲量分布図(左)

 冬型の気圧となった1999年1月10日9時の気象衛星ひまわりによる雲画像と、地上の気象官署で観測された雲量分布の図、ならびに同日時の天気図を挙げてみた。

 衛星画像からは季節風に運ばれてきた日本海の雪雲が日本の寂寥山脈によってブロックされ、その風下側が晴れていることがよくわかる。その晴天域と雲量分布図で雲量の少ない赤い部分はよく一致している。

● まとめ: 冬型の場合
・ 太平洋側で晴れる。
・ 日本海側は悪天。

 


● 3-3.低気圧が通過する気圧配置の場合

 さて、最後のパターンが、この気圧の谷(低気圧通過)の気圧配置になる場合です。天気図では日本の上やすぐ近くに低気圧があって、天気は全国的に悪くなります。この場合は、残念ながら全国的にしし群を楽しむことは難しい状況です。

 

気圧の谷(低気圧通過)のときの天気図の例

● 気圧の谷(低気圧通過)のときの天気図の例

 日本列島の上やすぐ近くに低気圧があるときが、この気圧配置。この場合は基本的に晴れないが、部分的に雲の切れる場合がある。この部分的な晴天域の動きをいかに読みきるかが、この気圧配置の場合のポイントとなる。

 過去60年の統計では、しし群極大日に気圧の谷の気圧配置になる確率は29%。

気圧の谷(低気圧通過)のとき雲量分布の合成図 ● 気圧の谷(低気圧通過)のとき雲量分布の合成図

 1月10日が気圧の谷の気圧配置になったことは、過去40年間では11回。このときの朝9時の雲量分布を合成したのが右の図だ。日本のほとんどの地域が雲量6以上となっていて、低気圧が通過するときはやはり全国的に天気が悪いことがわかる。

 

 それでは、低気圧がやってきたときは、しし群観望はあきらめるしかないのでしょうか?

 ここで実例をひとつ紹介しましょう。下の図は2000年1月10日9時の雲画像とそのときの地上観測による雲量分布図です。このときも日本の上を低気圧が通過中で、日本の陸地のほとんどは雲に覆われていました。しかし、太平洋岸や内陸部にわずかですが晴れている場所も存在します。

 これらの晴天域は、低気圧の進行にともなって移動します。したがって、低気圧が来た場合は、ひまわりの雲画像のアニメーションから雲の動きをよく読んで、どこが晴天域がなるかを見きわめることが大事です。その際には、単に晴天域を平行移動するだけでなく、天気図に書かれた高気圧低気圧の移動方向と移動速度、そしてそれらが発達傾向であるか消滅傾向であるかの情報を加味します。

 また、低気圧と低気圧が前線でつながり、停滞前線が東西に伸びる場合は、その南北に逃げます。前線の雲域は天気図の停滞前線から南北約数百km程度のことが多いからです。天気予報の解説を聞き、前線が全体として南北どちらへ動くか、発達傾向か消滅傾向かをチェックします。前線が北側へ盛り上がり前線が“へ”の字型になっているところがあれば、それは低気圧に発達する前兆です。雲画像では雲がコブのように北にもりあがってみえます。

 

2000年1月10日9時の雲画像 2000年1月10日9時の雲量分布

● 気圧の谷(低気圧通過)ときの雲画像(左)と雲量分布図(右)

 2000年1月10日は気圧の谷の気圧であったので、このときの気象衛星ひまわりによる雲画像と、地上の気象官署で観測された雲量分布を並べてみた。

 低気圧通過中だけあって雲量分布図は全国的に紫色の雲量9以上になっている。しかしそれでも、太平洋岸の浜松−尾鷲−潮岬と高知−延岡−都城−種子島にかけて、萩−下関、軽井沢、さらに沖縄などの地域に雲量5以下の晴天域がある。

 低気圧の中で雲の切れ間ができやすいのは、低気圧の西側だ。低気圧が発達してくるほど、この西側の晴天域はハッキリしてくる。このとき浜松以西の太平洋岸が晴れたのも、この低気圧の西側の晴天域に入ったためである。また、低気圧の南側にも雲の切れ間がある場合がある。

 しかし、これらの晴天域の有無は個々のケースによって違ってくるので、そのときどきの雲画像で晴天域の位置を確認した方がよい。

● まとめ: 低気圧通過の場合
・ 基本的には晴れない。
・ 部分的に雲の切れ間ができることがある。
 → 雲画像の動きを読んで、しし群極大時刻に晴れるところを探す。

 

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