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日食を見に行こう(2017年8月21日 皆既日食)

「流星雨」「オーロラ」と並んでぜひ見ておきたい天空のイベント「皆既日食」。
その皆既日食が、2017年8月21日(現地時間)に北アメリカを横断するような地域で見られます。

多くのツアーが企画されていますが、アメリカという行きやすい国なので、個人手配での旅行を計画している天文ファンも多くいらっしゃるようです。

ここでは、まだ日食を見たことがない方や、行くかどうか迷っている方に向けて、皆既日食の魅力をご紹介しましょう。

日食の原理

日食は、月が太陽の手前を通ることで、太陽を隠してしまう現象です。

日食には、太陽の一部が隠れる「部分日食」、全部を隠す「皆既日食」と、太陽と月が完全に重なるものの、月の見かけの大きさが少し小さいために太陽の縁の部分だけが見える「金環日食」があります。

太陽の直径は140万km、月の直径は3500kmと大きさがかなり違いますが、それぞれの地球からの距離が1億5000万kmと38万kmで、月と太陽の見かけの大きさがほぼ同じになります。それによって、月が太陽をきれいに隠してくれるのです。なんという偶然でしょう。

皆既日食の説明図

月の影が地球上を動いていく様子(ステラナビゲータでシミュレーション)。

日食の見どころ

では、日食の見どころを紹介しましょう。

2015年3月20日の皆既日食

2015年3月20日 北大西洋・スヴァールバル諸島・北極海皆既日食。ノルウェー領スヴァールバル諸島で撮影(撮影:上山治貴(アストロアーツ))。画像クリックで拡大表示。

皆既日食では太陽が月に完全に隠されて、普段は見ることのできないコロナを見ることができます。空全体は夕方のように暗くなり、地平線付近は夕焼けのように見えます。気温も下がることが多く、動物たちが普段とは違う行動を起こすこともあります。

まさに神秘的な光景で、太陽だけでなく空全体が普段とは全く異なる様相を呈し、体全体で体感できる天文イベントです。この日食に魅せられて、日食の度に外国でも出かけてしまうことを、俗に「日食病」と言うこともあるほどです。

本影錐

地球に月の影が落ちている衛星写真を見るとわかるように、日食が起こっているときは、太陽の光が届かないために夜のように暗くなります。これを地上から見ると、暗い空がだんだんと近づき、皆既日食の時にもっとも暗くなり、その後は暗くなった空が遠ざかっていく様子を見ることができます。この暗くなった空を本影錐(ほんえいすい)といいます。「天の岩戸伝説」は、古代の日食が元になっているといわれていますが、天の岩戸がまさにこの本影錐です。岩戸が閉じて太陽であるアマテラスが隠れてしまう、という皆既日食の様子を表しています。

シャドウバンド

皆既になる直前、ダイヤモンドリングのころには、太陽の光が「点光源」になります。そのため大気の揺らぎが、そのまま地上に映し出され、水面のさざ波のように沸き立つ様子を見ることができます。この様子は、氷原のように地面が均一な場所の方が見やすいでしょう。このシャドウバンドが見えるタイミングはまさにダイヤモンドリングが見えるときと同じなので、どちらを見るか迷うところです。

2015年3月20日の皆既日食の際に撮影された本影錐とシャドウバンド(撮影:上山治貴)。

ダイヤモンドリング

皆既日食が始まる直前に、太陽の光が月の縁からわずかに漏れて見えるものを「ダイヤモンドリング」といいます。この瞬間には、明るい内部コロナが月を取り巻いて見え、これが指輪のリングになります。わずかに漏れる光とは言っても、その輝きはとても力強く、その姿がまさにダイヤモンドのリングのようです。

コロナ

日食というとまずコロナを思い浮かべる方も多いでしょう。月に隠された太陽から花びらのように広がって見えるのがコロナで、実際には太陽から噴き出した100万度にも達するプラズマです。太陽本体に比べてとても暗いので普段は見ることができず、皆既日食の時にだけ見ることができます。

コロナの写真や画像はよく見かけますが、実際に目で見るともっと透明感があり、まさに「天女の羽衣」を思わせる輝きをもっていますので、ぜひ本物をご覧ください。

2008年8月1日 シルクロード皆既日食(撮影:大熊正美(アストロアーツ))。

日食観察のアイテム

2017年8月21日 アメリカ横断皆既日食 アストロアーツ/星ナビ協賛ツアー

そろそろ日食を見たくなってきたのではないでしょうか。

そこで、日食を見たり撮ったりするのに便利なアイテムをご紹介しましょう。

日食専用ソフト「エクリプスナビゲータ」

まずは「エクリプスナビゲータ」という日食専用のソフトウェアがあります。

国立天文台の相馬充さんにご提供いただいた日食の予報データをもとに、0.1秒の精度で日食の予報を行います。日食は、見る場所によって始まる時間や皆既の継続時間などが異なりますので、どこで見るのが一番良いかといった観測地の決定には欠かせないものです。GPSと連動しているので、現地でも正確に時間を知ることができます。

また日食の最中には、音声によるカウントダウンもしてくれます。皆既日食の始まりは見ていいてわかるのですが、数分の皆既中は、平常心がなくなると言っても過言ではありません。そのため、皆既の終わりは突然やってくるように感じられます。そうなると双眼鏡で見るのを忘れるなど、いろいろなことをやりのがしてしまうのですが、エクリプスナビゲータがあれば、皆既の終わりをカウントダウンしてくれるので、それを頼りにいろいろと行動することができます。

エクリプスナビゲータ3の紹介動画。様々な情報を多角的に表示。カメラ制御で撮影にも対応(›› 製品情報ページ)。

日食グラス

太陽は少しずつ欠けていき、やがて皆既日食になりますが、それまでの部分食を見るためには、太陽の光を減光する「日食グラス」が必要です。また、双眼鏡や望遠カメラで撮影する場合は、それぞれに合った日食グラスや減光フィルターが必要になります。ただ単に黒いものを使うと目や機材を傷めることもありますので、必ず専用の日食グラスや減光フィルターを準備しておきましょう。

双眼鏡でしっかり見る

先ほども述べたように、皆既日食中は太陽だけでなく空全体が様変わりして別世界になります。しっかり自分の目で感動を焼き付けておきたいものです。

さらにもっと楽しみたいときは、双眼鏡があると便利です。皆既中は、双眼鏡にフィルターを付けなくても「コロナ」をしっかり見ることができます。双眼鏡で見ると、コロナの細い流線の様子もよく見ることができます。また、太陽の縁には、赤紫色のプロミネンスも見ることができます。これはまさに火を食らう竜のようです。

紫外線や赤外線も弱める必要があります

[PDF]「日食を安全に観察する」
(「星ナビ2012年6月号」より)

観察グッズはアストロアーツのオンラインショップで

「日食グラス」など日食観察用のグッズはアストロアーツのオンラインショップで取り扱っています。日食撮影の機材や設定などをわかりやすく解説した冊子「別冊星ナビ 日食を撮る」やフィルターなど、撮影に関するグッズも。

日食観察、撮影グッズ

日食を撮る

日食の様子は、スマートフォンのカメラやコンパクトデジカメ、アクションカメラで動画として撮影することもできます。このようなカメラでは細かい操作はできませんが、三脚にしっかり固定して皆既の始まる前に録画を開始しておきましょう。動画にしておくと周囲の歓声なども記録でき、その時の感動を思い出すこともできます。

コンパクトデジカメでもマニュアルモードでいろいろ操作できるものもありますが、皆既中にそんな操作をしている時間はもったいないので、フルオートで撮影しておきましょう。

これらのカメラは広角なので、空の様子、地上の風景などを絡めて写すとよいでしょう。

カメラ

様々な種類のカメラ。

セッティング

カメラのセッティング例。

2016年3月9日の皆既日食

2016年3月9日、インドネシア〜太平洋で見られた皆既日食。インドネシア・テルナテ島で撮影(撮影:上山治貴)。画像クリックで拡大表示。

コロナを撮る

「ちゃんとコロナを撮りたい」といった場合には、しっかりした機材を用意してください。

以下のような機材が必要になります。

  • レンズ交換のできるカメラ
  • 望遠レンズまたは望遠鏡(焦点距離は300mmから600mmくらい)
  • 太陽を追尾するための赤道儀、ポータブル赤道儀
  • 減光フィルター(部分食も撮影する場合)

コロナの作例

焦点距離500mmの場合の画角(ステラナビゲータでシミュレーション)。画像クリックで200mm、500mm、800mmの場合を拡大表示。

セッティング

セッティング例。画像クリックで拡大表示。

コロナは、その内側と外側で明るさが1万倍も違うので、ワンショットですべてを写し出すことができません。そのためシャター速度を変えて数枚から十数枚の写真を撮影し、その後画像処理で合成して、目で見た感じに近いコロナを再現します。

この多段階露光を手動操作で行うと、カメラの操作をしているうちに皆既食が終わってしまった! ということにもなることも多いので気をつけてください。

そのため、エクリプスナビゲータでは、この撮影をカメラの制御を含めて自動化することもできます。

また、撮影した画像は「ステライメージ」で処理することができます(›› 処理方法解説ページ)。

コロナの作例

コロナ(撮影:上山治貴)。画像クリックで拡大表示。

皆既日食は天文現象の中でも格別なイベントです。ぜひ一度ご覧ください!