• このエントリーをはてなブックマークに追加
2015年 七夕

新暦七夕(7月7日)と伝統的七夕(8月20日)

おり姫星(織女)とひこ星(牽牛)が年に一度だけ会うことができる七夕ですが、7月7日といえば日本列島の広い地域では梅雨のまっただ中。例年、この時期に2つの星を見ることはなかなか難しいものです。

ではなぜ、天候が悪いこの時期に「星のお祭り」をするのでしょうか。

太陰太陽暦と太陽暦

実はこの問題は、明治の改暦(かいれき、カレンダーの決め方を変えること)に原因があります。もともとの七夕は太陰太陽暦(※)の「七月七日」に祝っていたものです。ところが、明治6年(1873年)からは太陰太陽暦ではなく西洋式の太陽暦を使うようになったため、七夕も約1か月早い時期に祝う行事となってしまいました。

現在でも、「太陽暦の7月7日」ではなく「太陰太陽暦の七月七日に相当する日」や「月遅れ(太陽暦の8月7日)」に七夕祭りを行うケースが多いようです。

※太陰太陽暦(たいいんたいようれき):古来より日本では暦(カレンダー)を作るにあたって、月と太陽両方の動きを計算に入れてきました。太陽だけを基準にする現在の太陽暦(グレゴリオ暦)と区別するために旧暦とも呼ばれます。太陰太陽暦は何度か改良されていて、明治の改暦直前には天保暦(てんぼうれき)と呼ばれる暦が使われていました。現在のカレンダーに「旧暦」として掲載されている日付は、かつての計算法などを参考に独自に算出しているものです。

新暦七夕と伝統的七夕の星空

太陽暦での7月7日は、まだ広い地域で梅雨が明けていません。また、たとえ晴れているとしても、日が暮れた1、2時間後ぐらいでは、おり姫星とひこ星はまだ東の空の低いところにあります。もし、2つの星がもっと高く昇る時間まで待っているとすると、夜半過ぎになってしまうのです。

図は東京での夜9時の空を表した星図で、中心が頭の真上、円のふちが地平線に相当します。おり姫星は東の地平線からだいぶ昇っていますが、ひこ星はまだまだ低いことがわかるでしょう。

新暦七夕、7月7日夜9時ごろの、空全体の様子

新暦七夕、7月7日夜9時ごろの、空全体の様子。クリックで星図拡大(ステラナビゲータで星図作成、以下同)

太陰太陽暦の七月七日は、新暦では例年8月上旬ごろに当たります。梅雨もすっかり明けていることが多く、夏の暑さがピークを迎えているころです。ただし、日本の暦を定める国立天文台では太陰太陽暦の計算をしていません。そのかわり「伝統的七夕」という言葉を使い、旧暦とは別の方法で七夕の日を求めています。2015年の伝統的七夕は、8月20日です。

※二十四節気の一つ「処暑」(8月23日ごろ)以前で最も近い新月の日を1日目(七月一日)として7日目(七月七日)、と定めます。新月から7日目なので、月の形は必ず上弦近くになります。2015年の場合、処暑は8月23日、直前の新月は8月14日です。

8月20日の夜9時には、おり姫星がほとんど頭の真上にあることがわかります。ひこ星も高く昇っていて、天の川がちょうど北から南へ空を横断しています。

伝統的七夕、8月20日夜9時ごろの、空全体の様子

伝統的七夕、8月20日夜9時ごろの、空全体の様子。クリックで星図拡大