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中秋の名月(2015年9月27日)

地球から一番近いところにある身近な天体、月。模様をウサギに見立てるなど、古くから人々に親しまれています。とくに天保暦(旧暦)八月十五日の月は「中秋の名月」として有名で、供え物をしてお月見をする習慣があります。

暦の関係で、中秋の名月は必ずしも満月になるとは限りません。2015年は9月27日が「中秋の名月」で、満月の1日前です。とはいえ、見た目にはほぼ真ん丸の月です。澄んだ夜空に浮かぶ名月を眺めてみましょう。

今年は満月の前日が名月

お月見といえば「9月の満月」と思われがちですが、今年2015年の場合、中秋の名月は9月27日で、満月は9月28日です。このように、中秋の名月は満月とは限りませんし(むしろ満月でないことのほうが多い)、10月にずれ込むこともあります。中秋の名月の日は、どのように決まるのでしょうか。

名月といえば秋

「中秋の名月」には月を眺めて供え物をする習慣がありますが、そもそも「中秋の名月」とはなんでしょうか。

昔から、秋こそが月を見るのに良い季節とされていましたが、秋である七月〜九月のちょうど真ん中の日が「中秋」、八月十五日です。そのため、八月十五日を「中秋の名月」と呼んで月を愛でることにしたのです。

なぜ、秋に月を見るのでしょう。その理由は、月の高さと天気です。太陽が天球上で通る道は、夏は高く、冬は低いことはご存じでしょう。月の通り道も太陽とほぼ同じですが、満月は地球から見て太陽の反対側にありますから、夏は低く冬は高くなります。そこで、ちょうど見上げるのに適した高さの満月となると、春か秋になります。しかし「春がすみ」や「秋晴れ」という言葉があるように、天気の良さでは断然秋。そこで、秋が月見のシーズンとなったとされています。

季節ごとの満月の高度

季節ごとの満月の高度。月は大きめに描画(ステラナビゲータで作成)

「中秋」八月十五日の決め方

「秋が七月〜九月」「中秋の名月は八月十五日」というのは現在の暦ではなく、天保暦(いわゆる「旧暦」)による日付です。現在、正式に旧暦を発表する機関はありませんが、かつての法則と同様に太陽と月の動きを元にして旧暦を計算することは可能です。具体的には「秋分の日(祝日としてではなく、天文学としての日付)以前の、一番近い朔(新月)の日を1日目(旧暦八月一日)として、15日目を中秋とする」と決められます。2015年の場合、秋分の日は9月23日、直前の朔の日は9月13日です。

このようにして中秋(旧暦)を決めると、ほぼ現在の暦から1か月遅れていることから、中秋の名月は9月になることが多いのです。しかし、「閏(うるう)月」と呼ばれる月が入るときにはさらに遅くなるため、中秋が10月になってしまうこともあります。たとえば2017年には「閏5月」があるため、中秋は10月4日になります。

十五夜と満月は、ずれやすい

さて、「十五夜」というのは「新月の日を1日目としたときの15日目の夜」ということですが、この日に満月になるとは限りません。

ある日付が「満月の日」というのは、その日のうちに「月が望、つまり地球から見てちょうど太陽の反対方向を通る瞬間を迎える」ことを意味します。「新月の日」も「月がちょうど太陽と同じ方向を通る瞬間(朔)」を含む日です。

新月から新月まで(月の朔望周期)は約29.5日なので、新月から満月までは平均すると約14.8日ということになります。たとえば「1日の午後11時に朔」だとすると、十五夜は(14日後の)15日となりますが、望は平均的には14.8日後の「16日午後6時ごろ」なので満月の日は16日になり、1日ずれるわけです。

さらに、月の軌道が楕円であることなど様々な理由で、朔から望までの期間が14.8日からずれることもあります。こうした複合的な理由から、十五夜と満月の日は一致しないことが多くなるのです。

でも、やっぱり「秋の真ん中」は八月十五日なので、たとえずれていても十五夜が中秋の名月。このように立派な根拠があるのですから、しっかりと月を眺めたいものですね。

ちなみに、2015年の場合は9月28日の11時50分ごろが望です(朔からの日数は14.84日)。つまり、「十五夜」27日の宵から28日明け方にかけては望の直前の月が、「満月」28日の宵には望の直後の月が見えることになります。

今後10年間の、中秋の名月の日と満月の日

※2021年から2023年は日付が一致、その他の年は名月が1日か2日早い。

中秋の名月満月
2015年 9月27日 9月28日
2016年 9月15日 9月17日
2017年10月 4日10月 6日
2018年 9月24日 9月25日
2019年 9月13日 9月14日
中秋の名月満月
2020年10月 1日10月 2日
2021年 9月21日 9月21日
2022年 9月10日 9月10日
2023年 9月29日 9月29日
2024年 9月17日 9月18日

2015年の中秋の名月

2015年9月27日の「中秋の名月」。東京で真南の空に上るころ(夜11時過ぎ)の見え方。望の約半日前で、左(東)がわずかに欠けている(ステラナビゲータで作成)

28日の満月は今年最大

2015年は中秋の名月の翌日、9月28日が満月の日ですが、この満月は2015年で最も大きく見える満月です。

月は地球の周りを楕円軌道で公転しているので、地球の中心から月の中心までの距離は約36万kmから40万kmの間で変化します。また、最接近の距離も一定ではなく、「近い最接近」と「遠い最接近」があります。9月28日は月と地球が最接近するタイミング(午前11時前)と満月(望)のタイミングが近く、しかもこの最接近が2015年で一番の接近(満月に限らず、2015年を通じての最接近)であるために、とくに大きく見えるというわけです。

ちなみに、満月のうちで一番小さかったのは3月6日の月でした。横並びにしてみると大きさの違いに気づきますが、実際の空で並べて比べることはできないので、その違いにはなかなか気づきません。拡大率を同じにして撮影するとわかりやすいでしょう。来年の「最小の満月」は4月22日、「最大の満月」は11月14日です。

2015年の満月の大きさ比べ

2015年の満月の大きさ比べ。最小は3月6日、最大は9月28日(ステラナビゲータで作成)

28日の満月は大西洋方面で皆既月食

今年最大の満月となる9月28日には、ヨーロッパやアフリカ、南北アメリカなどで皆既月食が起こります。今年最大の満月が月食と重なるということで、欧米では大いに注目されそうです。

ヨーロッパなどでは現地時間28日未明から明け方にかけて低くなっていく月食、アメリカなどでは現地時間27日の宵から深夜にかけて高くなっていく月食となります。

日本時間で28日の朝10時過ぎから欠け始め、食の最大は12時前、食が終わるのは昼1時半ごろです。日本からはまったく見えませんが、インターネット中継などがあるかもしれませんので、興味のある方はチェックしてみましょう。

27日、中秋の名月を眺め「明日の昼には月が食される」と想像しながらお団子を食べるのも一興?

2015年9月28日 ロンドンで見た皆既月食の様子

2015年9月28日 ロンドンで見た皆既月食の様子。月は大きめに描画。8時間プラスすると日本時間になる(ステラナビゲータで作成)

いろいろな月の呼び方

十五夜:芋名月

中秋の名月(十五夜の月)は、芋をお供えすることから「芋名月」とも呼ばれています。

なお、広い意味では十五夜は旧暦八月十五日に限ったことではなく、旧暦の毎月十五日の夜を指す言葉です。

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十六夜

十五夜の翌日の月は十六夜(いざよい)と呼ばれます。「いざよう」とは「ためらう」という意味で、前日十五夜の月よりも遅くためらうようにして出てくることからの呼び方です。

南米チリのALMA電波望遠鏡は66台のパラボラアンテナから構成されており、このうち日本が開発した16台には「いざよい」という愛称がつけられています。

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立待月、居待月、寝待月、更待月

十六夜以降の月には、順に「十七夜:立待月(たちまちづき)」「十八夜:居待月(いまちづき)」「十九夜:寝待月(ねまちづき)」「二十夜:更待月(ふけまちづき)」の呼び名があります。立待月は「立って待っていると出てくる月」という意味で、その後「座って」「寝て」「さらに夜が更けて」となります。

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十三夜:後の月、豆名月、栗名月

十五夜から約1か月後となる旧暦九月十三日の月は「十三夜」「後(のち)の月」と呼ばれており、この日にもお月見をする習慣があります(十五夜と同様、毎月十三日の夜が十三夜ですが、とくに九月十三日を指すことが多いです)。2015年は10月25日です。

豆や栗をお供えすることから「豆名月」「栗名月」とも呼ばれます。

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スーパームーン

中秋の名月の翌日、9月28日の満月は今年の満月のうちで一番大きく見える満月と説明しました。このようにとくに大きく見える満月を、近年では「スーパームーン」と呼ぶようになってきているようです。

もともとは占星術師が提唱した言葉のようで、天文学用語ではありません。したがって天文学的な定義はありませんが、「月と地球が最接近するタイミングの前後で、満月(望)もしくは新月(朔)となったとき、その月をスーパームーンと呼ぶ」というのが一つの説です。この意味では「タイミングが合えば、当年で2番目の大きさの満月でも」「新月でも」スーパームーンとなりますが、「満月のうちで一番大きく見えるもの」が、とくに広く話題になるようです。

  • 満月と、月と地球の最接近とのタイミングの一致は、満月14回ごとに起こります。2015年9月28日の次(14回後)は2016年11月14日、その次は2018年1月2日、…となります
  • 新月のスーパームーンは、前回は2015年2月19日、次回は(2月19日から数えて14回後の)2016年4月7日です
  • タイミングの幅の取り方によっては、ある期間に複数回のスーパームーンがあると考えることもできます。2015年9月28日の場合は「満月と最接近のタイミングの差は約1時間」ですが、8月30日は約20時間、10月27日は約23時間で、「差が1日以内ならタイミングが合った」と考えれば8月も10月もスーパームーンと呼べることになります
    ※アストロアーツの天文現象カレンダーなどでは、現在のところ「タイミング差が12時間以内の満月」のことを便宜的にスーパームーンと記載しています

ブルームーン

1か月の間に2回満月があるとき、その2回目の満月のことを「ブルームーン」と呼ぶことがあります。もともとは「一つの季節の間に4回満月があるときの3回目の満月」を指す言葉だったようですが、現在では「ひと月で2回目の満月」のほうがよく知られています。実際に満月が青く見えるわけではありません。

前回は2015年7月31日の満月がブルームーンでした。次回は2018年1月31日の満月がブルームーンですが、この日は皆既月食が起こるので「ブルームーンが赤く見える」ことになります。

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月について、もっと知りたい方は

星ナビ.comの「こだわり天文書評」で月に関する本の書評を掲載しています。科学的に、文化的に、あるいは鑑賞の対象として、月をより深く知ってみましょう。

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