冬の夜空といえば、全天一明るい星・シリウスをはじめとした、にぎやかな星の集まりを思い浮かべます。

でももし機会があれば、はるか下の、地平線や水平線あたりに注目してみてください。そこには、全天で2番目に明るい星・カノープスが輝いているからです。

カノープスの見つけ方

カノープスの見つけ方

カノープスは南天の星なので、北限から北ではまったく見ることができません。天球上のカノープスの赤緯は-52°42′なので、単純計算すれば北限は北緯37°18′、福島県いわき市のあたりとなります。ただし、地平線近くの星の光は大気によって屈折されるので、実際の位置より浮き上がって見えます。これを「大気差」と呼びますが、大気差も考慮に入れると、新潟県新潟市から福島県相馬市を結んだ線あたりが北限です。標高の高いところから見ることによってさらに北でも見ることができた例があるようです。

東京付近ではカノープスの南中高度はおよそ2度です。地平線(水平線)付近は天頂付近に比べて大気の影響が大きいため、カノープスは全天で2番目の恒星とは思えないほど暗く、夕日と同様に、低空の大気ごしに見るため赤く見えます。南中するのはオリオン座のベテルギウスより後で、おおいぬ座のシリウスよりも先です。

東京での南中時刻は2月1日は21時19分、2月10日は20時44分、2月20日は20時04分、3月1日は19時29分で、西ではこれより遅くなります(大阪で約20分、福岡で約40分)。見やすい時間は、南中の前後約30分です。見る場所は、南の地平線もしくは水平線が見渡せることが絶対条件です。高いところから見下ろすのも手ですが、高層ビルから見る場合は光害に邪魔されて難しいかもしれません。

モバイルアプリでカノープスを探す

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iPhone用「iステラ」などの天体ナビゲーションアプリでは、端末の電子コンパスやGPSと連動して、現在の場所で見える星空を正確に再現します。

カノープスが地平線上に現れるか、またどのタイミングで見れば良いのかが一目瞭然です。星の名前で検索すると、矢印でカノープスの見える方向にナビゲーションしてくれます。

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カノープスとは

カノープスは-0.7等の白い恒星で、その明るさはシリウスの-1.5等についで恒星として全天で2番目です。しかし、あまりに南寄りの空にあるため、北半球の多くの地域(特にヨーロッパ)では見ることさえできません。比較的緯度が低いエジプト、メソポタミア、インドなどでは観察することができたため、結果としてその存在自体は太古から知られていました。

古代中国の政治的中心地となった黄河流域(現代の西安など)では、カノープスは南の地平線すれすれに現れる奇妙な赤い星として知られていました。見えるときもあれば見えないときもあることや、縁起の良い赤い色であることなどから、中国ではカノープスを「南極老人星」や「寿星」と呼んでいます。

南極老人とは、日本の七福神の寿老人あるいは福禄寿の元になった神様で、長寿をつかさどるとされてきました。そのため、この星を見ることは縁起がよいとされ、とくに、一目見ると寿命がのびるという話が有名です。ちなみに、東京や大阪などの緯度は古代中国の中心地とほぼ同じなので、当時と同じ感覚でカノープスを見ることができるかもしれません。

西洋の星座では、カノープスは「りゅうこつ座」に含まれる星です。りゅうこつ座は、かつては「アルゴ座」と呼ばれる巨大な星座の一部でした。アルゴ号は、ギリシャ神話に登場する船の名前です。アルゴ号の水先案内人の名前がカノープスだったと説明されることがありますが、これは間違いで、別のギリシャ神話で語られるトロイ戦争で活躍した将軍メネラウスがひきいる船団の水先案内人の名前とされています。また、古いエジプト語で「大地(すれすれ にある)黄色(に見える星)」を意味する言葉の変形とする説もあります。

今は4つの星座に分かれたアルゴ船の星座

今は4つの星座に分かれたアルゴ船の星座(ステラナビゲータで星図作成)

天文ソフト「ステラナビゲータ」でのシミュレーション

Windows用ソフトウェア「ステラナビゲータ」では、大気の影響や周囲の地形も考慮した正確な再現が可能です。

≫ 「ステラナビゲータ10」を活用しよう:カノープスの見え方をシミュレーション

「ステラナビゲータ10」を活用しよう:カノープスの見え方