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秋の星空を楽しもう

古代エチオピア王家物語

エチオピア王家の姫「アンドロメダ座」

アンドロメダ カシオペヤ ケフェウス

 秋の星空では、星座を総動員するかのような、一大絵巻が繰り広げられています。ヒーローはペルセウス座、ヒロインはアンドロメダ座。おしゃべりな母親にはカシオペヤ座、それをとめられないケフェウス王と、脇役も個性派ぞろいです。

 ギリシア神話の中で最も有名なのが、このアンドロメダ姫を巡る物語だ。登場する星座が秋の夜空にまとまっているので、星空を見ながら神話の世界に思いを馳せることができる。登場人物の一人であるカシオペヤ座は、Wの形でよく知られているから、これを基準に、他の星座が見つけられるはずだ。
 エチオピア(当時はアフリカをこう呼んだ)にケフェウス王とカシオペヤ女王がいた。その娘がアンドロメダ姫だ。アンドロメダ姫の美しさは国内外に知れ渡っており、カシオペヤも鼻高々。娘自慢がエスカレートし、ついには海の妖精たちよりも美しいと公言しまくった。
 これに立腹した海の神ポセイドンは、エチオピアの海岸に化けクジラを仕向け、津波を起こさせた。人々は、化けクジラをおとなしくさせるには、アンドロメダを生贄にするしかないと騒ぎ始める。
 アンドロメダ姫が岩場に鎖で繋がれ、化けクジラの餌食になろうとしていた、まさにそのとき、天馬ペガススに乗って通りがかったのが、メドゥーサ退治から帰還する途中のペルセウスだった。

コラム「化け鯨の心臓はミラ」

ミラ

 海神ポセイドンが古代エチオピア海岸を襲わせた化け鯨の心臓部に位置するのは、ミラ(ラテン語で不思議)という星である。

 ミラは長周期脈動変光星の代表で、平均331日周期で3等から10等まで増減光を繰り返す。約3ヶ月間のみ肉眼で見ることができるという星に、ペルセウス座のアルゴル同様、古代の人々が気づかぬはずがない。ミラ=不思議な星と名づけたのはヘベリウスで、16世紀のこと。ちなみにミラは英語のミラクルの語源でもある。(「まんがで読む星のギリシア神話」収録「金井三男のこだわり星座神話」より)

怪物を退治する勇者「ペルセウス座」

ペルセウス ペガスス 話はペルセウスが生まれる前に遡る。
 孫に殺されるというお告げを聞いたアルゴス国のアクリシス王は、孫が生まれないようにと、娘ダナエを幽閉してしまった。だが、ダナエを見初めたゼウスは、金の雨となってダナエに降り注ぎ、ダナエは子を身ごもった。これがペルセウスだった。孫の誕生に驚いたアクリシス王は、二人を海に流してしまう。
 ダナエとペルセウスが漂着したのはセリポス島だった。ここで二人は漁師のデクテュスに助けられる。
 しかし、母子の幸せは長く続かない。実はデクテュスは王の弟で、王は弟を追放して国を治めていたのだった。さらに、ダナエを気に入った王は、強引にモノにしようとする。そこでデクテュスを監禁し、邪魔になったペルセウスには、ゴルゴンの首を持ってくるよう策をめぐらした。
 これを知った戦いの神アテナは、ペルセウスに空飛ぶ靴と姿が隠せる盾と剣を贈った。アテナの助力のおかげで、ペルセウスは地の果てオケアノスの地で、ゴルゴン三姉妹の一人、メドゥーサの首を取ることに成功する。メドゥーサは、髪の一本一本がヘビでできていて、その目を見たものは、恐ろしさのあまり石になってしまうという妖怪だ。メドゥーサの血がかかった岩からは、空飛ぶ天馬ペガススが現れ、ペルセウスはこれに乗って首尾よくメドゥーサの首を持ち帰った。

アンドロメダ姫を救う勇者「ペルセウス座」

ペルセウス くじら その途中で見たのが、アンドロメダ姫の生贄のシーンだった。アンドロメダの美しさに一目惚れしたペルセウスは、化けクジラに向かってメドゥーサの首を掲げ、化けクジラはあっという間に巨大な岩になって海に沈んでしまった。
 セリポス島にペルセウスが戻ると、デクテュスに続いてダナエも王に監禁されていた。ペルセウスは、約束を果たしたぞと、王にメドゥーサの首を突きつけた。
 息子に救われたダナエはデクテュスと国を治め、ペルセウスはめでたくアンドロメダと結ばれて王となった。
 ペルセウスはアンドロメダ姫を連れて生まれ故郷に帰り、そこで子作りに励んだ。ペルセウスとアンドロメダの子孫の創った国はたいへん栄えたという。それがペルシャ、現在のイランだという。ちなみにペルシャの首都はペルセポリス。

 ところで、ペルシャの特産物に桃があった。中世十字軍らに西洋より持ち帰られておいしさが評判になり、多数輸入されるようになった。そしてフランス語ではペルシュ、英語でピーチと呼ばれたのである。(「まんがで読む星のギリシア神話」より)

コラム「メドゥサの眼はアルゴル」

アルゴル

 神話では、ペルセウスはメドゥサの首を化け鯨の目の前に差し出し、鯨を石に変えて海底に沈めたことになるが、天文学的にはメドゥサの眼の辺りにあるアルゴル(アラビア語で悪魔)が重要な意味を持つ。

 アルゴルは食変光星の代表星で、およそ2日21時間ごとに約1等半暗くなる。かなり明瞭な変化を示し、肉眼でもじゅうぶん変光がわかる。古代の人々も、原因はともかく、不思議な現象に気づき、悪魔の星と呼んだののではないだろうか。(「まんがで読む星のギリシア神話」収録「金井三男のこだわり星座神話」より)

物語を楽しみながら「星のギリシア神話」や星座を知る「まんがで読む 星のギリシア神話」

「まんがで読む 星のギリシア神話」

 「まんがで読む星のギリシア神話」はアストロアーツ発行の天文雑誌・月刊「星ナビ」に、2000年12月から2004年12月号にかけて計49回連載された、藤井龍二氏の「ギリシア神話劇場」を再構成し「星のギリシア神話」についてわかりやすくまとめたムックです。

 また、神話成立時の時代背景や星座にまつわるさまざまなエピソードを「こだわり星座神話」として金井三男氏が解説しています。まんがストーリーとともに、コラムを読み進めると、星座や神話についてより深い理解が得られます。

 巻頭カラーでは、星図や写真を用い、まんがストーリーに登場する全星座を紹介。「資料編」では、登場人物一覧や、家系図・相関図、ギリシア神話時代の地図などを収録しています。