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星ナビ news file 2004年ペルセウス座流星群スペシャル

ペルセウス座流星体の月面への衝突

2004年8月12日未明、月の夜の部分で衝突発光の可能性

情報提供: 柳澤正久(電気通信大学・情報通信工学科)、大西浩次(長野工業高等専門学校)

夏の風物詩ともいえるペルセウス座流星群、今年の8月12日(木)未明のペルセウス座流星群の活動(1862年に放出されたダスト・トレイルによる)に伴い、月面衝突発光が見られる可能性があります。

月面衝突発光とは、月面に流星体が衝突して発光する現象で、1999年のしし座流星群のときに初めて確認されました。明るさは、数等級、約0.1秒間の発光として観測されています。

(1999年11月18日に撮影された月面衝突発光の写真) 1999年11月18日(日本時間)に日本(電気通信大学)から観測された月面衝突発光。約6時間の観測中に検出された3つの明るい発光を一枚の画像にまとめた。月面の夜側が視野に入っており、視野外(下側)では昼側の月面が輝いている(上弦の半月)。右上が天の北の方向。

ペルセウス座流星群は、スイフト・タットル彗星(109P/Swift-Tuttle)を母天体とする流星群で、8月中旬(お盆ごろ)に数多く出現する流星群として知られています。周期約130年のスイフト・タットル彗星が回帰した1992年前後に突発的に流星数が増大しており、1991年、1992年にはZHR(理想観測条件下での1時間あたりの流星数)400個以上の流星が出現しました。このペルセウス座流星群に関して、今年、たいへん興味深い予報が出されています。ライチネン(Esko Lyytinen)氏によると、2004年8月12日5時50分(日本標準時)に、1回帰前の1862年に放出され形成されたスイフト・タットル彗星のダスト・トレイルが地球軌道に0.00132AU(18万キロメートル)まで近づくと計算されています。しかし、残念なことに、この地球への最接近の時刻は、日本では、夜明け後ですから、この1回帰前のダスト・トレイルによる流星は、主に電波による観測が中心となるでしょう。しかし、夜明けごろの流星出現の様子は注目に値するでしょう。

(明け方の太陽、地球、月の位置関係とペルセウス座流星体の流れ) 2004年8月12日の明け方の太陽、地球、月の位置関係とペルセウス座流星体の流れを示しています(クリックで拡大)。3次元的には、流星体は画面上側からかなりの角度をもって衝突してきます。

ところで、この1回帰前のダスト・トレイルは、地球に最接近する約3時間前に月にひじょうに接近します。日本流星研究会の佐藤幹哉さんの計算によると、8月12日3時7分(日本標準時)に0.00039AU(5.9万キロメートル)まで近づきます。このダスト・トレイルの流星体は、月面に秒速59kmで衝突します。もし、大きな粒子であれば、この衝突によって発光が観測される可能性があります。この月面衝突による発光現象の観測によって、ダスト・トレイル内の1〜10kgの流星体の流量を調べることができます。

地球から見た月の様子 地球から見た月の様子です。月は東の空低くにあります(下弦の月)。黄色い部分は三日月として光っている部分、白い部分は流星体が衝突する部分です。

当日の月齢は25.3、月の出:0時54分、南中:8時36分、午前3時での高度が21度(東京)ということで、1回帰前のダスト・トレイルによる月面上の流星嵐のほぼ全容が観測可能です。

月面衝突発光の観測でもっとも大事なのは、離れた2地点以上の観測者が同時に観測を行って、月面での現象であることを確認することです。地球の周りには多くの人工衛星が飛んでいてそれらが一瞬キラリと光ることがよくあります。2地点から観測すれば人工衛星は月面の違った場所に見えるので区別することができます。

(電通大の観測システム) 電通大の観測システム(クリックで拡大)。観測法についてはhttp://www.ice.uec.ac.jp/yanagi/if_obs.htmlを参照。

観測は望遠鏡にビデオカメラを取り付けて月の夜の部分(天の北西部、月の様子の図参照)を撮り続け、後で再生しながら0.1秒ほどの一瞬の発光を捜すだけです。実際に、ビデオ画像から探すのは難しいのですが、パソコンの力を借りたりして探します。望遠鏡は口径20cm程度のもので良いです。また、時間ができるだけ正確にわかるように工夫する必要があります。詳しくは、次のウェブページをご覧ください。
http://www.ice.uec.ac.jp/yanagi/impactflash.html

観測の領域は、視野が30分×30分弱(例えば、焦点距離が500mm程度 + WATEC WAT-100N白黒CCDカメラ)の場合は、三日月の天の北端が画面の左端に入るようにして、地球照が写るように撮影するとよいでしょう。視野が10分×10分程度の長焦点で撮影する場合、天の北側からやや西の地球照部分をれて、氷の海、アリストテレル、ヘラクレス、アトラスあたりを中心に撮像してください。また、発光の等級を確認するため、一度、月の近くの星も撮影しておくとよいでしょう。

電気通信大学と長野工業高等専門学校のグループは、調布市(東京都)および信楽(京都大)において、夜半過ぎから明け方まで、小型望遠鏡に取り付けた高感度ビデオカメラの出力をビデオ録画する計画です。発光が見えたら、次の情報を報告して下さい。見えなかった場合でも、ビデオテープを送って下さい。詳しく解析します。

送付先:〒182-8585 東京都調布市調布ヶ丘 1-5-1
電気通信大学・情報通信工学科
柳澤正久 yanagi@ice.uec.ac.jp

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