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彗星がもっとわかる、じっくり読みたいあれこれ。

彗星とは

「彗星のごとく現われる〜」という表現は、誰しも聞いたことや使ったことがあるでしょう。宇宙のかなたの恒星は常に空の同じ場所に、月や惑星のような太陽系の天体は周期的に決まった位置に輝きつづけます。「超新星」や「新星」のように、突如明るくなってまた消えていく星が現われることもありますが、空の中を動くわけではありません。

こうした中で、彗星はひときわ不思議な存在です。これまで知られていなかった天体がどこからともなく近づいてきて、肉眼でもはっきり見えるほど明るくなり、やがて去ってゆくのです。その気まぐれで華麗な姿はかつて不吉な予兆として、近代以降は心躍る天文現象として、また研究対象として人々の記憶と記録に留められてきました。

そんな彗星とはいったいどんな天体なのか、すこしくわしく見てみましょう。

沈むパンスターズ彗星

今年3月、パンスターズ彗星が地平線に沈むようす(撮影:栗田直幸さん。投稿画像ギャラリーより)

彗星といえば、尾をたなびかせて空を飛ぶ姿をイメージする人も多いかもしれません。「尾をたなびかせて空を飛ぶ」、これはその通りなのですが、ほかの星や月と同様、何分間か眺めていてすぐわかるほどには大きく動きません。太陽や地球に最も近づいている時期に毎日同じ時間に見ると、空の中を少しずつ動いているのが見てとれます。

彗星が肉眼でどのように見えるかは、実にさまざまです。毎年多数発見される彗星のほとんどは、天体望遠鏡や双眼鏡でその存在を確認するのがやっと。望遠鏡にとりつけたカメラで長時間露光してはじめて、彗星らしい姿をとらえることができます。

また彗星は、ほかの天体に比べてくっきり光るのではなく、淡くぼんやりとしています。3〜4等級の恒星や惑星は比較的簡単に見ることができますが、同じ等級の彗星は双眼鏡がないと見つけるのは困難です。

彗星が肉眼でもよく見えた最も最近の例は、北半球では2009年のホームズ彗星、その前は1996年の百武彗星、1997年のヘール・ボップ彗星までさかのぼります。百武やヘール・ボップのような歴史的な大彗星クラスになると、長い尾が伸びた、思い描く通りの“ほうき星”の姿を実際に目にすることができます。

発見後のアイソン彗星

1986年、欧州の探査機「ジオット」がハレー彗星に接近し、初めてその姿に迫りました。彗星核からガスが噴き出しているようすがわかります(Halley Multicolor Camera Team, Giotto Project, ESA)

彗星の代名詞のような存在といえば、「ハレー彗星」でしょう。18世紀初め、過去目撃された複数の彗星が同じ軌道を持つことに気づいたイギリスの天文学者エドモンド・ハレーが、次回の彗星の出現を見事に予測しました。

その後も人類は、ハレー彗星の出現ごとに進歩した技術を駆使してその姿に迫っています。1986年の接近では、欧州の「ジオット」や日本の「すいせい」「さきがけ」など各国が探査機を送り込み、その正体をとらえました。

太陽系のかなたに広がる彗星のふるさと

太陽系のかなたに広がる彗星のふるさと(イラスト/KAGAYA)

彗星のふるさとは、海王星の外側にひろがる「エッジワース・カイパーベルト」と、その1000倍以上遠くに球状にひろがる「オールトの雲」の2つがあります。いずれも彗星のもととなる氷と塵の小天体がひしめく領域で、それぞれが太陽を中心とした軌道を回っています。

これらの小天体の1つが、あるときほかの天体の重力の影響で軌道を変えられ、ふるさとを離れて太陽系の中心に向かいます。これが彗星となるのです。

エッジワース・カイパーベルトの天体は、惑星が公転するのと同じ面上に分布しています。したがって、そこから太陽に近づくまでの軌道も、惑星の公転面に対してあまり傾きがありません。また、太陽に接近した後はふたたびエッジワース・カイパーベルトまで戻り、太陽に近づいたり遠ざかったりしながら、比較的短周期で回ります。

エッジワース・カイパーベルトについては、太陽系中心部に入り込まない、つまり彗星としてやってこないままの天体群が実際に見つかっています。

一方オールトの雲については、はるかかなたからやってくる彗星の軌道からその起源を推定したものであり、実際には観測されていません。惑星の公転面に対して角度の大きい軌道のものが多くあるため、オールトの雲の天体も球状に分布しているのだろうと考えられているのです。

オールトの雲を起源とする彗星は、周期が数百年単位とひじょうに長い、あるいは太陽系中心部にやってくるのが一度きりのものもあります。

彗星の構造と、尾が伸びるしくみ

彗星の構造と、尾が伸びるしくみ(イラスト/KAGAYA)

彗星の本体となる「彗星核」は、数百m〜数kmサイズの氷(主に水や二酸化炭素)と泥のかたまりです。太陽に近づくにつれ、熱でじょじょにガスや塵を噴き出すようになり、彗星の姿に変わっていきます。こうして明るくなったところを発見され、太陽接近のようすが地球から観測されるようになります。

彗星の主な構造は、彗星核、「コマ」、そして「尾」です。コマは、核を取り巻くガスや塵が太陽に照らされてぼんやり光る大気のようなもので、大きさは10万〜100万kmもあります。

尾は、彗星核から飛び出した塵が太陽の光の圧力に押されてできる「ダスト(塵)の尾」、そしてガスが太陽風のプラズマ粒子に押されてできる「イオンの尾」の2種類があります。最も長いもので数億km以上伸びることもあります。

イオンの尾は太陽の正反対側にほぼ直線状に伸びています。一方ダストの尾は、イオンの尾とくらべて少し後ろにカーブしてたなびいています。

大きく曲がったダストの尾が見かけ上太陽の方向に伸びているように見えることもあり、これを特に「アンチテイル」と呼んでいます。

2007年、昼間の青空の中で見えたマックノート彗星

2007年、昼間の青空の中で見えたマックノート彗星(撮影:藤井旭)

彗星は太陽に近づくにつれて、だんだんその明るさを増していきます。これは、温度が上がることで彗星の活動が活発になっていくことと、多くの場合は地球からの距離も近づくためです。

太陽に最接近すると、太陽の熱を受けた彗星は活発になり輝きを増します。反対に、彗星核が小さいために蒸発してしまったり、バラバラに壊れてしまったりすることもあります。前者の場合でも、彗星が太陽のすぐ近くにある最接近時は直に見ることはできませんが、直後昼間の空でも見えるほど明るくなることがあります。

太陽最接近後にどのような変化を見せるかは、予測不可能な彗星の最大の見どころでしょう。また色や尾の広がり方などその姿にもさまざまな個性があり、彗星ファンの心をとらえてやみません。