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カノープスを見よう(2016年)

冬の夜空といえば、全天一明るい恒星・シリウスやオリオン座など、にぎやかな星々を思い浮かべます。

でももし機会があれば、シリウスのずっと下、地平線や水平線あたりにも注目してみてください。そこには、全天で2番目に明るい恒星・カノープスが輝いています。

カノープスの見つけ方

カノープスは南天の星なので、北限から北ではまったく見ることができません。天球上のカノープスの赤緯は-52°42′(2000年分点)なので、単純計算すれば北限は北緯37°18′(=90° - 52°42′)、福島県いわき市のあたりとなります。

ただし、地平線近くの星の光は大気によって屈折されるので、カノープスが見える位置は実際の位置よりも高くなります。この「大気差」も考慮に入れると、新潟県新潟市から福島県相馬市を結んだ線あたり(北緯37°50′付近)が北限となります。山腹など標高が高いところから見ることによって、さらに北からでも見えた例があるようです。

東京付近では、カノープスの南中高度はおよそ2度です。地平線(水平線)付近は天頂付近に比べて大気による減光の影響が大きいため、カノープスは全天で2番目の恒星とは思えないほど暗くなり、さらに大気越しに見るため夕日と同様に赤く見えます。

2016年2月1日 21時20分ごろの星図(東京)

東京あたりでは、カノープスは地平線すれすれに見える。クリックで星図拡大(ステラナビゲータで星図作成、以下同)

カノープスが南中する(真南に来て地平線から最も高くなる)のは、オリオン座のベテルギウスより後で、おおいぬ座のシリウスよりも先です。東京での南中時刻は、2月1日は21時20分ごろ、2月11日は20時40分ごろ、2月21日は20時00分ごろ、3月1日は19時30分ごろです。西の地域ではこれより遅くなり、大阪で約20分後、福岡で約40分後に南中します。

見やすい時間は、南中の前後約30分です。南の地平線(水平線)が見渡せるところで探してみましょう。展望台など高いところから見下ろすと、視界を遮るものが少なくなるので見やすくなりますが、町明かりなどがあると光害の影響で見えにくいかもしれません。また、思った以上に暗いので、双眼鏡を使って探すのがおすすめです。

カノープスの見つけ方

カノープスの見つけ方。おおいぬ座の前後の足先の星を使う方法や、後ろ足付近の三角形を目印にするとわかりやすい。見晴らしが良ければ、冬の大三角から大きく星をつないでも見つけられる。クリックで星図拡大

アプリやソフトでカノープス探し

モバイルアプリで探す

iPhone用「iステラ」などの天体ナビゲーションアプリでは、端末の電子コンパスやGPSと連動して、現在の場所で見える星空を正確に再現します。

カノープスが地平線上に現れるかどうかや、どのタイミングで見れば良いのかが一目瞭然です。星の名前で検索すると、矢印でカノープスの見える方向にナビゲーションしてくれます。

他の製品は ›› モバイル製品情報

モバイル製品情報

カノープスの方向をナビゲーション。地平線の下までもナビゲートします。クリックで拡大

「ステラナビゲータ」で調べる

ステラナビゲータ

天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ」では、大気の影響や周囲の地形も考慮した正確な再現が可能です。

›› 「ステラナビゲータ10」を活用しよう:カノープスの見え方をシミュレーション
(リンク先は2015年の例ですが、2016年にも応用できます)

稜線からカノープスが見えるかどうかをチェック

稜線から見えるかどうか、見える時間帯はいつか、といったことも調べられる。クリックで拡大

天文現象もチェック! 「アストロガイド 星空年鑑」

「アストロガイド 星空年鑑 2016」

日々の星々や月のほか、決まった日付、タイミングにしか見られない天文現象もしっかりチェックしておきましょう。2016年は3月9日に部分日食、5月31日は火星が地球に最接近、比較的好条件のペルセウス座流星群に中秋の名月、スーパームーン、アルデバラン食、……などなどが楽しみです。

「アストロガイド 星空年鑑 2016」ではそんな見どころや季節の星座を、書籍とDVD番組で詳しく紹介。さらに付属の天文シミュレーションソフトで、現象の見え方や時刻などを調べることもできます。もちろんカノープスの見え方も確かめられます。

「アストロガイド 星空年鑑」で、2016年の天文現象を予習したり観測計画を立てたりしてみましょう。

カノープスとは

カノープスは-0.7等級の白い恒星で、その明るさはシリウスの-1.5等級に次いで恒星として全天で2番目です。しかし、あまりに南寄りの空にあるため、北半球の多くの地域(特にヨーロッパ)では見ることさえできません。比較的緯度が低いエジプト、メソポタミア、インドなどでは観察することができたため、結果としてその存在自体は太古から知られていました。

古代中国の政治的中心地となった黄河流域(現代の西安など)では、カノープスは南の地平線すれすれに現れる奇妙な赤い星として知られていました。見えるときもあれば見えないときもあることや、縁起の良い赤い色であることなどから、中国ではカノープスを「南極老人星」や「寿星」と呼んでいます。

南極老人とは、日本の七福神の寿老人あるいは福禄寿の元になった神様で、長寿をつかさどるとされてきました。そのため、この星を見ることは縁起が良いとされ、とくに、一目見ると寿命がのびるという話が有名です。ちなみに、東京や大阪などの緯度は古代中国の中心地とほぼ同じなので、当時と同じ感覚でカノープスを見ることができるかもしれません。

西洋の星座では、カノープスは「りゅうこつ座」に含まれる星です。りゅうこつ座は、かつては「アルゴ座」と呼ばれる巨大な星座の一部でした。アルゴ号は、ギリシャ神話に登場する船の名前です。アルゴ号の水先案内人の名前がカノープスだったと説明されることがありますが、これは間違いで、別のギリシャ神話で語られるトロイ戦争で活躍した将軍メネラウスがひきいる船団の水先案内人の名前とされています。また、古いエジプト語で「大地(すれすれ にある)黄色(に見える星)」を意味する言葉の変形とする説もあります。

アルゴ座周辺の主な見どころ

アルゴ座は現在は「とも」「ほ」「らしんばん」「りゅうこつ」の4星座に分かれている。カノープスのほかにも見どころが多い。クリックで拡大

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