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2016年3月9日 部分日食

2016年3月9日(水)、朝10時から昼12時ごろにかけて、日本全国で部分日食が見られます。日本から日食が見られるのは2012年5月21日以来、約4年ぶりです。

欠ける割合はあまり大きくありませんが、生活圏内で日食が起こるのは数年に一度程度しかない貴重な機会です。安全にじゅうぶん気をつけて、ぜひ観察してみましょう。

インドネシアからグアム、サイパン近海では皆既日食が見られます。ツアーに参加する方はエクリプスナビゲータなどで事前の準備をしっかりとしておきましょう。

部分日食の時刻と欠け具合

部分日食の時刻と欠け具合

部分日食の時刻と欠け具合を掲載した地図。クリックで拡大(ムック『アストロガイド 星空年鑑 2016』より)

日食の時刻(欠け始め、最大、欠け終わり)は地域によって異なりますが、おおむね「10時ごろに始まり、11時ごろに欠け具合が最大になり、12時ごろに終わり」ます。

欠け具合は「食分」という値で表します。太陽の直径のうち、どれだけ月に隠されているかを示す数値です(面積ではありません)。日本では、南東の地域ほど食分が大きくなり、太陽が大きく欠けます。

時刻だけでなく方位や高さも重要なポイントです。これも地域によって異なりますが、だいたい「南から南東の方角」「高度40度から50度」あたりです。ビルなどに隠されないか、窓から見えるかどうかなど、観察予定の場所の視界を確認しておきましょう。

星ナビ3月号は「日食観察プレート」が付録!

月刊『星ナビ』2016年3月号(2月5日発売)は「日食観察プレート」が付録。安全に太陽を観察でき、加工して日食めがねや撮影用フィルターを作ることもできます。

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観察、撮影用グッズ

日食の観察や撮影には、安全性を確認された専用の道具が必要です。不確実な道具を使用したり、間違った使い方をしたりすると、失明するおそれもあります。必ず、安全な道具を正しく使用しましょう。

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アストロアーツ
日食グラス

アストロアーツオリジナルデザインの日食グラス

天体望遠鏡に取り付け、拡大像を複数人で観察できる投影板

可視光線の強さを10万分の1以下に抑えるシート。カットして複数の天体望遠鏡、双眼鏡などに使用できます

太陽撮影用の露出倍数10万倍の角形フィルター。日食撮影に最適

その他の日食関連グッズや天体望遠鏡、ソフトウェアやムックなどは「アストロアーツ オンラインショップ」でお取り扱いしています。

安全な観察のために

日食を観察するときは、以下の点に十分注意してください。誤った方法で見ると、失明等の重大な視力障害を引き起こすおそれがあります。

[PDF]「日食を安全に観察する」
(「星ナビ2012年6月号」より)

減光フィルターを正しく使いましょう

日食(太陽)を見るには、観察用の減光フィルターが必要です。めがねやプレートなど、様々なタイプのものがあります。

  • 双眼鏡や天体望遠鏡と組み合わせて使ってはいけません(可能と明記された一部の製品を除く)。普通の視力矯正用眼鏡やコンタクトレンズを着けたまま、フィルターで観察するのは問題ありません。
  • 使用する前に、フィルターに穴が空いたり破れたりしていないか確認しましょう。
  • まず、視線を下げた状態で、体だけ太陽の方向に向けます。
    次にフィルターを顔の前にかざし、それから太陽を見上げます。
    見終わったら、視線を下げてからフィルターを外します。
  • フィルターを使用していても、長時間(目安として2、3分以上)続けて観察してはいけません。時々、目を休めましょう。

日食観察用のグッズは「アストロアーツ オンラインショップ」でお取り扱いしています。

星ナビ2016年3月号は日食観察プレート付き

日食観察プレート(『星ナビ』2016年3月号付録)は顔を広く覆えるので安全です。切って工作すれば数人分の日食めがねを作ることもできます

日食は、減光しなければ肉眼では見えません

「日食めがねなどがなくても、ちらっと見ればいいや」なんて思っていませんか。太陽が欠けているといっても明るさは普段の太陽とほぼ同じです。減光する観察道具を使わなければ、まぶしすぎるために欠けている様子は全くわかりません。そればかりか、短時間であっても肉眼で無理に見ようとすると、目にダメージを与えるおそれがあります。

肉眼では見えません

うす曇りでも肉眼での観察は危険です

うす曇りになると減光する道具越しでは太陽が見えないので、つい道具を外して肉眼で見てしまいがちですが、これも危険です。目がまぶしさに慣れてしまうために危険な光量にもかかわらず見続けてしまったり、雲間から急に太陽が出てきたりするおそれがあります。

うす曇りのときもじゅうぶん注意が必要です

「日食(太陽)観察用」以外の道具で見てはいけません

サングラスや黒いビニール袋など日食観察に使えそうなものでも、可視光線が十分カットされていなかったり、紫外線や赤外線といった目に有害な光線を通したりすることがあるので危険です。

必ず「日食(太陽)観察用」と明記された製品を使いましょう。

また、撮影で用いるNDフィルターも、肉眼での観察には使えません。

紫外線や赤外線も弱める必要があります

天文ソフトでシミュレーション

ステラナビゲータで日食をシミュレーション

ステラナビゲータ

天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ」では、任意の場所や時刻を設定して日食の見え方を確かめたり、宇宙空間から見た様子を再現したりできます。

「ステラナビゲータ」で日食をシミュレーション

地球に落ちる月の影

地球に落ちた月の影は皆既帯(赤い帯の領域)を西から東へと動いていきます。本影の中では太陽が完全に月に隠される皆既日食が見え、その周りに広がる半影の中(オレンジ色の線の内側)では太陽の一部が月に隠される部分日食が見えます。

月の影が地球上を動いていく様子

東京、札幌、那覇での部分日食

東京、札幌、那覇で見た部分日食のシミュレーションです。3か所のなかでは那覇が最も食分が大きくなり、日食の継続時間が長くなります。

東京、札幌、那覇での部分日食の様子

インドネシアでの皆既日食

インドネシア・テルナテ島では2分41秒間、皆既食が見られます。シミュレーションでダイヤモンドリングの方向や時刻なども再現できます。途中、広角に引いた星図では、周りに惑星や1等星が見えることもわかります。

他の天文現象の動画やソフトウェアのデモンストレーションも多数公開!
›› アストロアーツYouTubeチャンネル [YouTube]

インドネシアでの皆既日食

エクリプスナビゲータで日食をシミュレーション

「エクリプスナビゲータ」でテルナテ島での皆既日食をシミュレーション

日食シミュレーションソフト「エクリプスナビゲータ」では、さらに高精度に日食をシミュレーションできます。

  • 「地図」「拡大」「時刻表」など6つのウィンドウで日食を多角的に表示
  • ベッセル要素や月縁補正で接触時刻やダイヤモンドリングを正確に再現
  • GPSで時刻や場所を校正
  • カウントダウン機能で観測や撮影をアシスト

詳しくは製品情報ページをご覧ください。

エクリプスナビゲータ

モバイルツールでシミュレーション

iOS用の「iステラ」「iステラ HD」やアンドロイド用「スマートステラ」などのモバイルアプリでも、日食をシミュレーションできます。

iステラでのシミュレーション

大阪における食最大のころの様子を「iステラ」でシミュレーション。クリックで拡大。太陽を中央に固定してアニメ表示すると日食の経過がよくわかる。場所をインドネシアなど皆既帯の中に設定すれば、もちろん皆既食の様子も再現できる

他の製品は ›› モバイル製品情報

スマートステラでのシミュレーション

東京における食最大のころの様子を「スマートステラ」でシミュレーション。クリックで拡大。実際には見えないが、周りの星座や惑星の様子もわかる

日食について

日食とは、太陽−月−地球がほぼ一直線上に並んだときに地球から見て月が太陽の前を通り、太陽の一部または全部を隠してしまう現象です。大きく3タイプに分かれます。

皆既日食

太陽と月の中心がほぼ重なり、太陽がすべて隠されるタイプの日食です。今回の日食も地球全体で見れば皆既日食です(詳しくは後述)。

皆既中の数分間は空が夜のように暗くなり、肉眼でも太陽の外気層である「コロナ」が輝いて見えます。あらゆる天文現象のなかでも、とりわけドラマチックなもので、とくに皆既食の始まりと終わりに瞬間的に見える「ダイヤモンドリング」はハイライトです。

皆既日食が起こるのは「皆既帯」と呼ばれる領域の範囲内だけで、皆既帯の南北の中心に近いほど、また東西の中央付近ほど、皆既食の継続時間が長くなります。また、皆既帯の外の広い範囲で部分日食が起こります。

皆既日食の説明図

金環日食

太陽と月の中心がほぼ重なるという点で皆既日食と似ていますが、月が地球から遠い場合には月の見かけの大きさが小さいので、太陽をすべて隠すことができません。そのため、太陽と月がちょうど重なっているときにも太陽の外縁部分がリング状に見えます。金環日食では空は真っ暗にはなりません。

金環日食も「金環帯」と呼ばれる領域の範囲内だけで起こり、その外の広い範囲で部分日食となります。2012年5月21日には日本の太平洋岸を金環帯が通りました。

金環日食の説明図

部分日食

月が太陽の一部だけを隠すタイプの日食です。皆既日食や金環日食の際に中心食帯の外側で見られ、中心食帯に近いほど太陽が大きく隠されます。また、世界中のどこでも部分日食しか起こらないという場合もあります。

皆既日食の説明図

2006年3月29日 エジプト皆既日食(撮影:大熊正美(アストロアーツ))

2008年8月1日 シルクロード皆既日食(撮影:大熊正美(アストロアーツ))

2012年5月21日 日本横断金環日食でのベイリーズビーズ(撮影:大熊正美(アストロアーツ)、協力:磯谷英志(ウェザーニューズ)、早出誠、宮林健治(信州スカイパーク))

今回の日食

今回の日食は、地球全体でみると皆既日食です。皆既帯は東インド洋から始まってインドネシアを通り、グアムやサイパンの近海を経て北太平洋に至り、ハワイの北あたりで終わります。部分日食は日本をはじめインドや中国、オーストラリア、アラスカなど広い範囲で見られます。

図の説明

  • 細い帯状の部分が「皆既帯」で、この範囲で皆既食が見られます。3本ある線のうち真ん中の「中心線」のところでは太陽と月の中心が一致し、皆既食が長時間見られます。
  • 図の中心にある「Greatest Eclipse」という地点が、今回の皆既日食で最も太陽が大きく欠ける(皆既の継続時間が長くなる)ポイントです。皆既食は4分8秒間続きます。
  • 部分日食が見られるのは黄色の線、オレンジ色の線で囲まれた範囲です。
    黄色の線の内側では部分食の最大を見ることができます。
    オレンジ色の線のうち外側は日出もしくは日没時に部分食が終わる(つまり部分日食もほぼ見えない)、内側は日出もしくは日没時に部分食が始まる(つまり部分日食を全過程見られる)限界を表します。

日食帯の図

「エクリプスナビゲータ」で作成。クリックで拡大

過去、将来の日食

2012年〜2020年の日食の一覧です。日付はいずれも「Greatest Eclipse地点で日食が最大となる時刻を含む日本時間」で表しています。

日本で次に日食が見られるのは2019年1月6日で、全国で午前中に部分日食が見られます(今回と反対で、北の地方ほど大きく欠ける)。また、皆既日食が見られるのは2035年9月2日(皆既帯は北陸〜北関東)、金環日食が見られるのは2030年6月1日(金環帯は北海道)です。

日付種類主な観測可能地域日本での見え方
2012年
5月21日
金環中国、日本、北太平洋、北アメリカ太平洋岸で金環日食、
全国で部分日食
2012年
11月14日
皆既オーストラリア北部、南太平洋
2013年
5月10日
金環オーストラリア、中部太平洋
2013年
11月 3日
金環・皆既大西洋、アフリカ
2014年
4月29日
金環南極
2014年
10月24日
部分北太平洋、北アメリカ
2015年
3月20日
皆既北大西洋、スバールバル諸島、北極海
2015年
9月13日
部分南アフリカ、南インド洋、南極
2016年
3月 9日
皆既インドネシア、北太平洋全国で部分日食
2016年
9月 1日
金環中部アフリカ、南インド洋
日付種類主な観測可能地域日本での見え方
2017年
2月26日
金環南大西洋、アフリカ
2017年
8月22日
皆既北アメリカ、中部大西洋
2018年
2月16日
部分南極
2018年
7月13日
部分オーストラリア南部、南極
2018年
8月11日
部分ロシア、中国
2019年
1月 6日
部分中国、日本、北太平洋全国で部分日食
2019年
7月 3日
皆既南太平洋、南アメリカ
2019年
12月26日
金環インド洋、インドネシア全国で部分日食
(東日本では日没帯食)
2020年
6月21日
金環アフリカ、アラビア半島、インド、中国、台湾全国で部分日食
2020年
12月15日
皆既南太平洋、南アメリカ、南大西洋

過去の日食で日付からリンクされているものは、投稿画像ギャラリーへリンク。

その他の天文現象もチェック! 「アストロガイド 星空年鑑」

「アストロガイド 星空年鑑 2016」

日食以外にも面白い天文現象はたくさん起こります。5月31日には火星が地球に最接近し、8月中旬には毎年恒例のペルセウス座流星群、中秋の名月やスーパームーンなど秋は月も楽しみです。もちろん、季節の星座の見え方もしっかりチェックしておきたいところ。

「アストロガイド 星空年鑑 2016」ではそんな見どころや季節の星座を、書籍とDVD番組で詳しく紹介。さらに付属の天文シミュレーションソフトで、現象の見え方や時刻などを調べることもできます。もちろん日食の見え方も確かめられます。

「アストロガイド 星空年鑑」で、2016年の天文現象を予習したり観測計画を立てたりしてみましょう。

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