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ハッブル宇宙望遠鏡で小惑星捜索


【1998年3月10日 NASA発】

地球に小惑星が衝突する危険性が叫ばれ、さまざまな小惑星捜索プログラムが実行に移されているが、このほど強力な手段が発表された。
ジェット推進研究所の天文学者ロビン・エバンスとカール・スタペルフェルトの両氏が研究ジャーナル「イカルス」の2月号に発表するもので、ハッブル宇宙望遠鏡の広視野惑星カメラ2で撮影した数万枚の画像を使うというものだ。彼らは2万8千枚の画像を調査する事で、約100個の小惑星を発見した。これらの小惑星は地上ベースで発見できる小惑星より暗いもので、小惑星の地球衝突の可能性を探る上で貴重なデータとなるだろうと期待されている。
元来、ハッブル宇宙望遠鏡は小惑星捜査に使われる事はない。今回彼らが用いた画像は、クエーサーや遠距離の銀河、超新星爆発など他の目的で撮影されたものである。これらの撮影中に偶然に小惑星が横切った場合、その軌跡を残す。(惑星広角カメラの写野角は約2.7分だ。)これらを丹念に見つけていく訳だ。ハッブル宇宙望遠鏡の撮影対象は全天に散らばっているが、予想したとおりに小惑星は黄道面に沿って発見される確率が高かったという。
彼らは最初から小惑星を捜していたわけではなく、元々は新規に据え付けられた広視野惑星カメラ2が、遠くの銀河を鮮明に写し出す性能が発揮されているかをチェックしていたのだが、その作業中にスタペルフェルトの妻(彼女も天文学者)が偶然にも小惑星を発見した事から今回の研究がスタートした。
また昨年ルイス・フランク博士が、ポーラー衛星のデータを元に地球には1分間に数ダースの小さな彗星が降り注いでいると発表したのを覚えているだろうか。エバンスとスタペルフェルトの両氏は、もしこの説が正しいのならば、ハッブル宇宙望遠鏡の画像の中に数千以上の彗星の軌跡がなければならないが、その様なものは発見できなかった、としている。

HST image

左上)画面中央の青いカーブがケンタウルス座を通過中の18.7等級の小惑星。大きさは約2kmと推定される。

右上)しし座の銀河の前を通過中の21.8等級の小惑星。途中色が変わるのは、3色分解で撮影中に捉えたため。最初が青フィルター、途中から赤フィルターで撮影している。直径は1km弱。

左下)おうし座を通過中の23等級の小惑星。これはハッブル宇宙望遠鏡で捉えられる限界だ。これも3色分解で撮影中のため軌跡の色が青から赤に変わっている。直径は1km弱。

右下)かみのけ座のNGC4548の外縁部に写り込んだ小惑星。途中で露出を何度も中断しているため軌跡が途切れている。明るさは20.8等で大きさは1km強。

なお、詳細は http://oposite.stsci.edu/pubinfo/pr/1998/10/ にて公開されている。

●小惑星の捜索状況
30万個以上あると考えられている直径1km以上の小惑星のうち、発見されたものは1万数千個に過ぎない。さらに軌道が決定されたものはそのうち8319個である。

●オマケ
現在ハリウッドでは地球に小惑星が衝突するというSF超大作「ハルマゲドン」がNASAの全面協力のもと撮影が行われている。主演は「ダイハード」のブルース・ウィリス。今から公開が楽しみだ。

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フランク博士の微小彗星説については『スカイウオッチャー』3月号特集「最新太陽系の科学」でも取り上げているで参考にしてください。



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