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シュワスマン・ワハマン第3彗星の
粒子をキャッチ?

国立天文台・天文ニュース (169)


【1998年4月16日 国立天文台天文ニュース

 1991年に採取したダスト粒子が、シュワスマン・ワハマン第3彗星(73P/Schwassmann-Wachmann 3)の放出したものである可能性が高まりました。 採集されたダスト粒子の母天体が特定されたのは初めてです。 これはこの3月に、アメリカ、テキサス州ヒューストンで開催された月惑星研究集会(Lunar and Planetary Science Conference)の年会で報告されたことです。

シュワスマン・ワハマン第3彗星

 太陽系空間に存在するダスト粒子は、年当たり約4万トンが地球大気中にに落ち込んでくると推定されています。 高空で収集したこれらの粒子には、多孔質でもろいものがあり、彗星が放出したダストではないかと推測されています。 彗星中には太陽系創成当時の物質がそのまま保存されていると考えられていますから、太陽系の誕生した時代を研究している科学者は、彗星が放出したダストに大きな関心を寄せているのです。

 1991年6月および7月に、アメリカ航空宇宙局(NASA)は、U-2を改造した航空機を使って、成層圏でこの種のダストを採集しました。 分析をおこなったミネソタ大学のニール(Nier,Alfred,故人)らは、このダストのヘリウム同位体比(ヘリウム4に対するヘリウム3の存在比)が、これまで経験したことがないほど大きいことに気付いたのです。

 このような特徴があると、このダスト粒子がどこで生まれたかが問題になります。 その出所を突き止めようと、国立標準技術研究所(National Institute of Standard and Technology)のメッセンジャー(Messenger,Scott)およびワシントン大学のウォーカー(Walker Robert)は努力を重ねました。 手がかりとなったは、含まれているヘリウムの総量が少ないこと、また、熱による変化をほとんど受けていなかったことです。

 ヘリウムが少ないことは、空間にいた時間が短いことを意味します。 空間で過ごす時間が永くなると、太陽風を受けてヘリウムが飽和してしまうからです。 換言すれば、これは、彗星がダストを放出してからあまり時間が経たないうちに、地球がそのダスト流を通過したということです。 また熱による変化が小さいことは、ダストが地球大気に落ち込んだときに、地球との相対速度が小さかったことを示します。

 これらの条件とダストを採取した日付から、メッセンジャーらは、候補となる彗星を絞り込んでいきました。 その結果、最終的にただひとつ、シュワスマン・ワハマン第3彗星が残ったのです。 つまり、この彗星だけが、すぐ前の5月に、相対速度の小さいダストを放出できたのです。

 こうして、一応ダストの母天体は特定できました。 しかしこれは、可能性が高いというだけで、絶対に確実という結論ではありません。 そして、ヘリウム同位体比の異常の理由には、まだ何の説明もついていません。

 来年2月にNASAが打ち上げる予定の宇宙探査機スターダスト(天文ニュース141参照)は、ビルド第2彗星(81P/Wild 2)のダストサンプルを採取して、2006年に地球に戻ることになっています。 また、探査機コンタワー(CONTOUR)は、上記のシュワスマン・ワハマン第3彗星に接近して、ダスト粒子の解析をする予定です。 これらの結果が得られれば、NASAが収集した前記のダストの母天体について、さらに決定的なことがいえるでしょう。

参照 Kerr,Richard A., Science 280,p.38-39(1998).

     1998年4月16日        国立天文台・広報普及室


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