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赤外線背景放射の測定に成功


【1998年1月9日 STScl(宇宙望遠鏡研究所)発】

このほどCOBE(宇宙背景放射探査衛星)を使って、宇宙の初期に放射された赤外線を測定することに成功した。これは宇宙望遠鏡研究所のマイケル・ハウザー博士らが発表したもので、ビックバン以降に恒星によって加熱された星間物質から放射された赤外線を捉えたもの。測定された赤外線の量から、これまでに恒星から放射されたエネルギー量を推定することが可能になった。これにより、ビックバン以降の恒星や銀河の進化の過程を研究する宇宙論の分野でより精密な理論構築の手がかりを得ることができた。


恒星から放射される光や赤外線などは星間ガスに遮られて、地球にとどくのはその一部である。しかし、赤外線で暖められた星間ガスは、再び赤外線を放射するので、その赤外線を測定することで、間接的に全宇宙で放射されている恒星のエネルギーを推定することができる。


赤外線背景放射の観測は、太陽系の諸天体や恒星、銀河、さらに観測機器から放射される赤外線がノイズとなっていままで非常に困難であった。このため、まず観測機器を絶対温度2、3度の極低温まで冷却し、1989年12月から90年の9月までの10ヵ月をかけて全天走査を行った。その後データから太陽系や恒星、銀河から放射されている赤外線を除去していった。その結果銀河の両極の方向に数十億光年以上彼方の赤外線背景放射を発見した。


また観測された赤外線の量は可視光による観測から推測されたものよりはるかに多いことから、宇宙には予想より星間ガスが多いのか、宇宙の初期において、星々が突発的に誕生し多量のエネルギーを放射したものの、現在までに死滅したのか、の2通りの考え方が提起されている。


なお、COBEは赤外線からマイクロ波にかけての宇宙背景放射を精密に測定する機器を搭載し1989年に打ち上げられた。ビックバン宇宙の進化を明らかにするため、宇宙開闢の1年後と20〜30万年後、そして2億年後のそれぞれの時代の宇宙の放射を測定する事を目的としていた。1つめと2つめは、それぞれ黒体輻射、3K宇宙背景放射として観測に成功し、今回の赤外線の観測は3番目にあたるもので、これで初期の目的を達成したといえる。

COBE : Infrared

(上)
宇宙から観測される全赤外線のマップ。中心を横切る明るい黄色またはオレンジ色の部分は銀河系の星間ガスから放出される赤外線。青いS字の部分は太陽系の惑星間のダストから放出される赤外線。

(中)
上から太陽系の赤外線を除去したもの

(下)
さらに銀河系などの赤外線を除去したもの。中央の黒い部分は銀河系に遮られて観測できなかった部分。

なお、今回の発表の詳細は以下のURLに掲載されている。

http://oposite.stsci.edu/pubinfo/pr/1998/01.html



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