M-Vロケット見学記



『ようこう』をはじめとする科学衛星は、文部省宇宙科学研究所によって鹿児 島県内之浦から打ち上げられる。ロケットの打ち上げというと種子島が思い浮 かぶが、こちらは宇宙開発事業団が放送衛星などの実用衛星を打ち上げるため の基地だ。両者を混同しがちだが、日本のロケット開発は科学衛星の宇宙科学 研究所、実用衛星の宇宙開発事業団の2本だてとなっている。今回の打ち上げ は宇宙科学研究所ご自慢の世界最大級の固体燃料ロケットM-V(エムファイブ) の初号機、搭載されるのはこれも世界初の本格的な電波観測衛星MUSES-Bだ。 特にM-Vは、これまでの宇宙研の細長いロケットと打って変わりNASAのタイタン などに似た武骨な姿で各所に意欲的な新技術を盛り込んだ最新のロケットだ。 これがあれば惑星探査機を宇宙に送り込むことができる。

整備塔 発射直前まで整備塔に格納される。

ランチャー M-Vの全景。ランチャーを傾けて発射するのが宇宙研のロケットの特徴だ。

先頭部 M-Vは1.8トンのペイロード能力を持つ新型のロケットだ。

さて、内之浦の発射基地だが、自動車しか交通手段がない。そこで宮崎空港 からレンタカーを借りて内之浦へと向かう。約2時間で内之浦の隣り町の波見 (はみ)にはいる。『ロケット実験情報』の看板が基地が近いことを実感させ る。ちなみにこの波見からも山越しにロケットの打上を見ることができるそう だ。さらにそこから約30分で内之浦にはいる。一見日本のどこにでもあるよう な漁村だが、ロケット型をしたパチンコ屋のの看板や橋の欄干など、目立たな いながらロケットの町を感じさせる。

看板(1) 内之浦の隣り町、波見(はみ)にある打ち上げのお知らせの看板。打ち上げが延び るたびに書き換えられる。

発射基地は町からさらに山奥に入ったところにある。発射の際にはロケットから 半径2.25km以内は立ち入り禁止になる。その外側に報道席や来賓席、それに一般 観望席が設けられている。

看板(2) 打ち上げ時には、発射台から2.25km以内は関係者以外は立ち入り禁止になる。 もし誰かが見つかれば打ち上げは中断される。

発射の前日に、基地構内の管制室などを見学させてもらったが、光電管ででき た旧式の時計表示から最新のペンティアムノートパソコンと新旧の機械が混在 し歴史を感じさせられる。打上前日ということだろうか、食事はインスタント のラーメンや焼きソバで済ませている。時間が無いのか不精なのか。インスタ ントラーメンの袋に名前と各人好みのレシピが書いてあるのには泣かされる。

2月12日の打上当日は穏やかな天候に恵まれ、はるか遠方のロケットが山を背景 にきらきら光っている。報道席には管制室のアナウンスが聞こえ、発射に向けて 準備が進む様子が分かる。1分前にいよいよカウントダウンが始まり、またたく 間にロケットに点火される。打ちあがってから遅れて轟音がくる。みるみるうちに ロケットは小さくなり、白煙を残しながら青空の中に消えていく。子どものこ ろ初めてサンダーバードの映像を見たときの感動以上のものがあった。管制室 の感激や安堵の声も聞こえてくるので、関係者の喜びが生で伝わってくる。
軌道に乗ったMUSES-Bは「はるか」と命名され、9月以降本格的な観測を行う予定だ。

打ち上げ 打ち上げの迫力は生でなくては分からない。

彗星のようなロケット 望遠レンズでは、核が明るい彗星の様に見える。

発射シーンQTムービー 望遠

(240x180 3.6M)
(160x120 2.6M)


発射シーンQTムービー 広角

(240x180 3.1M)
(160x120 2.6M)

次回の打ち上げは8月、月探査機を打ち上げる予定。一般の観望席も用意され ているので夏休みを利用して打ち上げを見てはどうだろうか?天候など理由で 延期になるかもしれないので、期間を長めにしておくこと。発射場の近くには ホテルなどは無いので、宿泊は鹿屋がお勧め。発射場までは車で約1時間。

なお、MV-1についてはスカイウオッチャー5月号(4月5日発売)、はるかについ ては6月号(5月5日発売)をご覧ください。


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