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ハッブル宇宙望遠鏡が銀河の形成を撮影


【9月4日NASA発】

Young Galaxies ハッブル宇宙望遠鏡による観測で、銀河が形成されつつある区域が 発見された。これは、長い間謎に包まれていた銀河がいかにして形成され るかという問題に大きな影響を与える。

ハッブル宇宙望遠鏡の広角惑星カメラ(WFPC-2)は、 地球からほぼ等距離にある18個の巨大な恒星団をとらえた。 これらは、今後互いに接近・融合し、銀河クラスのサイズを持つ 固まりを作るのに十分な範囲に集まっている。 これらは地球から110億光年の彼方にあり、銀河の形成が始まったと 思われる場所の映像である。

この発見は、星々が集まり、衝突や融合を繰り返しながら大きな固まりと なって巨大な銀河を作り上げるという、これまでの銀河形成理論を より前進させるものとなる。

また、宇宙の初期またはビッグバン直後に起きたであろう 銀河のもととなる現象・物質を解明しようとしている天文学者にとっても 大きな一歩である。

Galaxy Building Blocks アリゾナ州立大学およびアラバマ大学では、これら18のかたまりが、 差し渡し200万光年のエリアに集まっていることを明らかにした。 アリゾナ州立大学のRogier Windhorstは次のように述べている。 「これほど狭い場所に多量の星を形成する物質が発見されたのは初めてである。 200万光年といえば、われわれの銀河系からもっとも近い銀河である アンドロメダ大銀河までの距離ほどでしかない。」

アリゾナ州立大学のSam Pascarelleは、同大学のRogier Windhorst、 Stephen Odewahnおよびアラバマ大学のTuscaloosaとともに、9月5日発行の Nature誌にこの発見に関する記事を掲載する。

ハッブル宇宙望遠鏡が発見したそれぞれの星の固まりは、10億もの若い星の集ま りで、多くの青い星やガスが内部で形成されつつあることを示している。 これらの物質はわずか2,000光年の範囲に集まっている。Odewahnは「われ われの銀河系の直径が10万光年であることを考えれば、いかに狭い範囲 であるかがわかる」と述べている。われわれの銀河系の中央のふくらん だ部分でさえも8,000光年の直径がある。

Keelは、「これらは融合を繰り返しながら、それぞれの銀河のバルジと 呼ばれる中央の膨らんだ部分に成長すると思われる。」と述べている。 また、ハッブル宇宙望遠鏡を使った別の研究成果は、銀河の衝突や融合は、 これまで考えられていたよりもさらに頻繁であることを示している。 「実際、少なくともこの視野の中の数千光年離れた4つの星の集合体は、 互いに引き合い、落ち込みつつあるようだ」とも言う。

このようにハッブル宇宙望遠鏡は、銀河の前段階の詳細を明らかにした。 これは直径2,000光年という狭い範囲でのことで、 地球から見ればわずか角度の0.1秒という小さなものである。 この画像は北天のりゅう座に近いヘルクレス座の中の 狭い範囲で2日間かけて撮影されたものである。

また、Pascarelleは次のように述べている。 「これまで、これほど狭い範囲の一度の撮影で、 こんなにも多くの星の集合体が撮影されたことはない。 しかし、これは特殊な状態ではなく、銀河形成の初期にはあちこちで 発生していた現象であると思わざるをえない。」

星の形成は現在も続いているため、天文学者たちは実際にこれを観測している。 しかし、銀河の形成は非常に古い出来事であるため、 これまで誰も直接には見た者がなかった。

これまで銀河形成についての地上からの観測では、小さな物質が集まってできた、 または巨大なガス雲が崩壊してできたと考えられていた。ハッブル宇宙望遠鏡の 観測は、直接的な証拠を与えるものだとPascarelleは述べている。

「この画像ではそれぞれの星の集合体が分離しているが、やがて は融合してしまうであろうほどに近くに密集している。」とWindhorst は言う。彼は、2つまたはそれ以上のオブジェクトが互いに近づく様 子を、星を形成する多くの部分である水素ガスの動きを含めてスケッチ を書いた(「衝突」という言葉が使われたが、実際に衝突してしまうわ けではない)。

この銀河形成の理論が正しいとすれば、われわれの銀河系もこのような 形成期のなごりを含んでいるはずだ。われわれの銀河系のバルジと呼ば れる中央部分にある赤い老いた星は、融合した星々の集まりから来たこ とになる。太陽系を含む銀河の腕の部分は、後になって水素が板状に集 まってから形成されたもので、140ほどの銀河を取り巻く球状星団は、こ のときの融合に取り残された星の集まりであると考えられる。

天文学者たちは、ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された深宇宙の 画像の1つから、小さな電波銀河のそばにある18のオブジェク トを発見した。研究者たちは、新しく生まれる星から放射される紫外線 を検出するために、光学フィルターを精密に調整したが、宇宙の膨張に よる波長のずれが大きすぎた。Windhorstは次のように述べている。 「ハッブル宇宙望遠鏡は非常に遠い深宇宙を研究するのに必要である。 地上からこれほど狭い範囲を正確に見ることは不可能である。」

アリゾナのHopkins山天文台にあるマルチミラー望遠鏡の分光観測で、 少なくとも5つの星の集団は地球から同じ距離にあることが判明した。 ともにハワイのマウナケア山にあるNASAの赤外線望遠鏡および10m望 遠鏡を使った水素の輝線の赤方偏移から、他の5つのオブジェクトも 同距離にあることを確認した。赤方偏移は110億光年の距離を示して おり、巨大な銀河の形成を観測できる十分な距離である。

アストロフィジカル・ジャーナル・レターに Stephen Odewahn、 Windhorst、Keelおよび Simon Driver (ニューサザンウェールズ大学、 シドニー)が掲載したところによれば、この画像にあるような小さな青 いオブジェクトは、ここ特有のものではなく、どの方向を観測しても 同じようなものが見つかるという。つまり、110億光年かなたでは、い たるところでこのような銀河形成が起きていることになる。

GIFおよびJPEGによるイメージ、キャプションはftp.stsci.eduの /pubinfoにある。

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NASA RELEASE 96-176


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