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アストロガイド1999の金環日食記事の訂正


【1998年11月30日 遠山御幸・アストロア−ツ

お詫びと訂正 11月27日に発売となった『アストロガイド1999』の日食に関する記事中、2月16日の金環日食の説明の中で、この日食が、皆既日食に極めて近いもので、場所によっては、金環日食の最中も、ベイリービーズになるような表現をしましたが、その後、日食情報センターの石井馨氏の指摘により、そこまでは、きわどい金環日食ではないことが、判明しました。ここにお詫びをして訂正いたします。

なお、この日食の金環の状況に関しては、以下の記事を参考にしてください。


【細い細い金環日食の話/日食情報センター】

1999年2月16日の金環日食は、たいへんに環の細い食となります。このような細い環の金環食を観測された日本人の方は少ないと思いますので、今回の環の状況と、過去、及び将来の細い金環食に関する情報を紹介いたします。

基本的には同じ日に見られる金環食であっても、日の出/日の入り近辺で見られる金環食の環が最も太く、正午中心食の近辺(Greatest Eclipse)で見られる環が最も細くなります。今回の場合は、Greatest Eclipseは東経93度53.6分、南緯39度48.8分のインド洋上となりますので、飛行機か船を使わなければ、一番細いリングを見ることができません。ちなみに、この場所での金環帯の幅は29Kmで、金環継続時間は40秒、最大食時に6.3秒角の幅のリングとなります。

陸上で観測する場合、最も細い環が見られるのは、金環帯がオーストラリア大陸の西海岸に上陸したあたり(パース[Perth]の北方約340kmの地点、ジェラルトン[Gerald ton]とドンガラ[Dongara]という都市の間)です。ここでの金環帯の幅は40kmで、金環継続時間は47秒、最大食時に8.4秒角の幅のリングとなるでしょう。月の凹凸は最大でも3秒角の中に納まりますからこの幅では全周にわたってベイリービーズが繋がることにはなりません。おそらくは第2、第3接触時に、全周の3分の1周くらいの長さでベイリービーズが繋がるものと思われます。

オーストラリア大陸の東海岸、金環帯がオーストラリア大陸に別れを告げる、ケアンズ[Cairns]の北約130km地点での中心線上では、金環帯の幅は80kmと広くなります。金環継続時間も1分9秒と長く、リングの幅も17.3秒角と太くなります。比較のために、金環食の規模としては中程度であった1987年9月23日の沖縄での状況を紹介しますと、金環帯の幅は140km、金環継続時間が3分49秒で、リングの幅は35.9秒角でした。

今回、陸上でもっとも細い金環が見られる、オーストラリア大陸の西海岸でも、月は太陽の98.3%を隠しているにすぎません。これは、1998年2月26日の皆既日食の、ベネズエラ近辺の観測で言えば、第3接触1分後ごろの太陽の明るさに相当しますから、晴天であった場合に減光フィルター無しで撮影することは難しいと思われます。眼視で観測する場合は安全なソーラーフィルター無しに、望遠鏡/双眼鏡や望遠レンズ越しに金環食を見ることは、絶対に避けて下さい。

コロナを観測するには太陽が明るすぎますが、第2/第3接触時に接触方向に明るいプロミネンスがあれば、撮影することができるかもしれません。ただし、その場合でも絶対にカメラのファインダーを直接覗くことがないような工夫が必要です。

2002年6月10日の金環食もひじょうに細い金環で正午中心食の金環継続時間は18秒、金環帯の幅は13km、幅2.9秒角のリングとなり、太陽面の99.4%を隠しますので、全周に渡ってベイリービーズが見える”かすり日食(Grazing Eclipse)”となると思われます。もっともこの2002年の金環帯はほとんど太平洋上にあり、陸上で一番細く見えるテニヤン島のあたりでは金環帯の幅は44km、月と太陽の視半径差は10.4秒角もあります。テニヤン島は北限界線に近く、金環継続時間は21秒です。

この2002年の金環日食の、1サロス前の1984年5月30日の金環食はもっと細い金環食でした。北米大陸を通りましたので、多くの米国人が観測しましたが、ミシシッピー州やジョージア州で観測した方の何人かはノーフィルターで写真撮影にチャレンジしております。このときの金環継続時間は15秒以下、金環帯の幅は10km前後、リングの幅は2.3秒角で、太陽面の99.6%が隠されておりました。撮影データによればISO200のフィルムを使い、絞りはF32、露光時間は1/1000で撮影したようです。ただし、眩しすぎてファインダーは覗けなかった、とコメントがあります。

2005年4月8日の金環−皆既日食が陸上で見られる地域は、金環帯であるコスタリカとパナマですが、このとき陸上で一番細い環となる地点は、金環帯の幅が11km、リングの幅は2.0秒角で継続時間は9秒です。これまでの記事中、日食の計算はすべて平均月縁を元にしておりますが、これほど細い金環になりますと月の凹凸が大きく影響しますので、実際の継続時間や見え方は、観測場所が数百mずれるだけで大きく変わってくるでしょう。

この2005年の1サロス前の日食(1987年3月29日)も金環−皆既日食でした。このときは日本から13人のアマチュア観測家が、ガボン共和国ポールジェンティルに遠征しました。ポールジェンティルは皆既帯から金環帯への遷移ゾーンであり、計算上は継続時間1.5秒の皆既で、皆既帯の幅600mでしたが、実際には3秒間の全周ベイリービーズが観測されました。

日食情報センターでは、「日食情報」誌を通じてこのような日食の紹介を行っております。御興味をお持ちの方は、日食情報センター(admin@solar-eclipse.gr.jp)宛てに御連絡ください。


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