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宇宙はゆっくり膨張?


【1998年10月28日 NASA

ハッブル宇宙望遠鏡を使った重力レンズによるクエーサーの観測により、我々の宇宙は"ゆっくり"と膨張しているという結果が得られた。宇宙の膨張速度を決定することは、すなわち宇宙の年齢を決定することにほかならない。これまで宇宙の年齢には大きな幅があり、短いものでは宇宙の年齢より年老いた星が存在すること(宇宙年齢パラドックス)になり、天文学者たちを悩ませていた。今回の観測結果は、年老いた恒星がじゅうぶんに存在できる長さで、さらに以前のハッブル・キー・プロジェクトにおける結果と一致していることにより天文学者らは胸をなでおろしている。
しかし、宇宙論学者にとっては悩みの種になりそうな結果ともなっている。宇宙論研究においては、宇宙の膨張速度と密度が重要な要素となってくる。最近の観測によると宇宙の密度は従来考えられてきたものより低く、物質の相互に作用する重力が弱いという説が有力になっている。しかし、今回のデータのように宇宙の膨張速度が遅く密度の低い宇宙であるためには、現在のビックバン宇宙モデルになんらかの修正を加える必要があるだろう、としている。

Quasars

左:今回観測した PG 1115+080。しし座にあるクエーサーで地球から80億光年の彼方にある。本来は1個のクエーサーだが、手前にある銀河の重力レンズ効果によっていくつもの像に分かれている。
右:ハッブル宇宙望遠鏡の近赤外スペクトロメータで撮影したもの。中心の銀河は消去してある。

□ニュース・リリース(英文)
http://oposite.stsci.edu/pubinfo/pr/1998/37/



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