第2回CCDカンファレンス
「CANP'98」開催


 
岡野邦彦氏によるLRGB4元カラー合成プロセス実演
LRGB4元カラー合成法を
実演する岡野邦彦氏

CAN(CCD Astronomy Network)による、CCDカメラについての研究会、CCDカンファレンス「CANP'98」が去る1998年5月16日〜17日にかけて、会場である東京西新宿のアスキー内にて開催された。 昨年ダイニック・アストロパークで催された第一回カンファレンスにもまして盛り上がりをみせた、本カンファレンスの模様をお伝えする。

 実行委員・川崎誠志氏の「誰でも参加できるオープンな場の提供。 そして堅苦しくなく、ざっくばらんに話し合える。そんな意味をこめて、本カンファレンスをCANP(CCD Astronomy Network Party)と名付けた。」という挨拶から第一日目は開幕した。


 
岡野邦彦氏によるST-7撮像実演
SBIG・ST-7を使って
撮像手順を実演する岡野邦彦氏

 「LRGB4元カラー合成などの新しい技法をマスターするには、その手順を習得するだけではなく、その根底をなす基礎理論を理解することが、完全な理解への指標となるだけではなく、次へのステップのためにも重要」という認識から、先ずキヤノンの蒔田剛氏にデジタル画像と色彩理論の基礎について講演をいただいた。 解像度や、RGB,CMYK,XYZ,Labなどのカラー空間について基礎的な知識はもちろん、Labカラー空間を使ったカラーストレッチ(色彩強調)など実践的な応用例も紹介され、「これまで、あいまいにしか理解していなかった基礎理論がこれではっきりした」など、参加者に好評だった。 これを受けて岡野邦彦氏からは、フォトショップとピクチャーパブリッシャーを使った、L,R,G,Bの各画像からLRGB4元カラー合成法によって実際にカラー画像が合成されるまでの実演が行なわれた。 また、アストロアーツからは、これらの技法をワンアクションで実現できる、総合天文画像処理ソフト・ステライメージ2を使っての、LRGB合成、デジタル現像、オートコンポジット機能など、豊富な機能群の実演があり、参加者の注目を集めていた。

 
冨田弘一郎先生による公演「天体画像に潜む情報への期待」
天体画像が持つ情報の
重要性を力説する
冨田 弘一郎先生

 元東京天文台の冨田先生からは、先生がこれまで蓄積された観測成果と画像を使って、それに潜む情報の重要性を、経緯を交えて説明いただいた。 観測デバイスとしての冷却CCDカメラの可能性、すなわち情報量の多さに対する先生の期待が伝わってくるようであった。

 夜間催された、懇親会、シンポジウムは、CANP'98のネーミング通り、立席パーティの形式で、食事をとりながらの会談となった。 こちらは、冷却CCDカメラユーザの生の声を中心に、活発な論議が行なわれた。 昼の部とうってかわって和やかな雰囲気のもと、普段メールでしかやり取りのないもの同士が共通の話題で盛り上がっているのが、印象的だった。 富士山などの観測地で初顔合わせのもの同士が、同じ話題で盛り上がりすぐ打ち解けてしまう、そんな光景とだぶるようだ。

  2日目は、清田 誠一郎氏の冷却CCDカメラによる超新星の探索と観測、阿久津 富夫氏の冷却CCDカメラによる惑星の観測の講演で幕をあけた。 お二人の観測としての冷却CCDカメラの利用法は、実践的で大変興味深いもので、これから超新星の探索や、惑星の観測をはじめてみようという参加者には、大変貴重な話となっただろう。 また、CCDカメラを使うことで観測が容易くなる方法、赤外域を使った日中の惑星の観測や、惑星の展開図の作成などの紹介もあった。 また、吉田誠一氏が推し進める、天体画像をデータベース化し再利用するという試み「MISAOプロジェクト」も大変興味深く、氏が開発した、天体画像を解析して、不明天体をリストアップするアプリケーションは多くの参加者の注目を集めていた。 これは、現状数多く撮影されている、画像を資産として活かし、それらを有効利用して新天体サーベイに活用、またその資源を世界中に再利用可能なように公開するというものだ。


作品展示風景
会場には作品の展示スペースも

 多数の参加を得て議論が盛り上がった本カンファレンスだが、改めて冷却CCDカメラが切り拓くパワーを感じずにいられないものだった。 新しいこの分野で、実際のユーザーの生の声、経験に基づいた最新の情報を交換できる場として、またユーザ全体の技術を高めるための交流の場として、初心者からベテランまで参加できる貴重な存在ともいえる本カンファレンスをますます盛り上げて行ってほしいものだ。

 また、弊社が開発したステライメージもこういった場で鍛え上げられ、画像処理技術の向上に寄与できるよう目指したい。

●CANP'98主な講演内容(講演順に掲載)

デジタル画像と色彩理論の基礎 蒔田 剛氏
天体画像に潜む情報への期待 冨田 弘一郎先生
LRGB4元カラー合成プロセス実演 岡野 邦彦
ステライメージ2紹介 上山 治貴
武藤CV-16レビュー 中田 昌氏
ミード416XTレビュー 大橋 洋二氏
自作冷却CCDカメラ紹介 笠原 誠氏
彗星スペクトル撮像システム紹介 牛渡 聡氏
電子冷却CCDカメラによる天体撮影における経済
〜川崎家の、高画質化への道と無駄遣いの歴史〜
川崎 誠志
ビットラン・カラー冷却CCDカメラ紹介 三田 明氏
フィルター分光特性の測定 大橋 洋二氏
超新星のCCD探索と観測のレビュー 清田 誠一郎氏
惑星のCCD観測レビュー 阿久津 富夫氏
冷却CCDが切り拓くデータベース天文学の未来
〜MISAOプロジェクト〜・・・
吉田 誠一

 

第2回CCDカンファレンス「CANP'98」参加者

最後に、CANP'98実行委員会の各氏が運営するサイトを紹介する。
・岡野邦彦氏のページ「Digital Astronomy Gallery
・近藤弘之氏のページ「SPACE GALLERY
・川崎誠志氏のページ「ほしぞら☆ぎゃらりー
・「第2回CCDカンファレンスCANP'98概要報告」公式ページ

※CANからのお知らせ
 CANは、CCDユーザーのボランティアによって運営されているインタネット・メーリングリストです。 メーリングリストに参加希望の方は、<can@nhao.go.jp>宛てに、題名を「参加希望」とし、本名のみを本文に書いた電子メールをお送りください(その他のいかなる情報、挨拶文なども無用です)。 数日以内に、案内メールと共にメールの配信が始まります。

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