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ブラックホールの”間欠泉”を発見!


【1998年1月7日 NASA

カリフォルニア工科大学、マサチューセッツ工科大学とNASAの天文学者のチームは、30分の間隔で大量のガスが吹き出す宇宙の”間欠泉”を発見した。 これはGRS 1915+105というわし座にある天体で、伴星を伴ったブラックホールと考えられている。伴星から引き剥がされたガスが渦を巻きながらブラックホールに落下している。このガスの渦巻きを降着円盤という。そして円盤の両極からは光速に近いジェット流が吹き出している。

GRS1915+105の位置

今回の発見は、円盤の内側が何らかの原因で崩壊し、ガスが放出されジェットが発生し、その後ガスの放出で空になった空間へ再び、ガスが引き込まれるといったサイクルが繰り返されている現象だ。放出されたガスの速度は秒速10億kmと光速の3分の1の速度で、しかもおよそ100兆トンと、標準的な小惑星の質量に匹敵するという。

実際に観測されたのは30分毎にX線が5分間消滅し、その間赤外線と電波が発生するといった現象だ。X線は回転する円盤から発生し、赤外線や電波は放出されたジェットから発生する。これらの観測はX線観測衛星RXTEとパロマ天文台の赤外線望遠鏡、アメリカ・ニューメキシコ州ソコロにある電波望遠鏡群(VLA)と連携することで成功した。

ブラックホールが存在する近接連星における宇宙ジェット現象は、そのメカニズムそのものが謎に包まれている。一番の問題は、この現象のエネルギー源で、今回の観測では1回の放出に、アメリカ一国が6兆年かけて消費するエネルギー量が必要となる。高速回転する円盤の圧力やブラックホールの回転エネルギーなどが候補に上がっているが、今回の観測はこれらの理論の検証の手がかりになるだろうと考えられている。また今回のブラックホールより100万倍も大規模なブラックホールが原因と考えられるクエーサーの宇宙ジェットの謎も解明できるかもしれない、と天文学者達は期待を寄せている。

ブラックホール

figure1:左が伴星、右がブラックホールと降着円盤

figure2:円盤の内側が崩壊を始める

figure3:ジェットとなって吹き出す

figure4:円盤の内側が空になり、伴星から再びガスが流れはじめる

figure5:ジェットが間欠泉の様に宇宙空間へ広がっていく。


ニュースリリース原文: ftp://PAO.GSFC.NASA.GOV/newsmedia/JAN_AAS/BH.TXT



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