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惑星がたくさん見えます

国立天文台・天文ニュース (147)


【1997年12月11日 国立天文台・天文ニュース】

 いま、日没後の空を見ると、惑星がいくつも見えます。 西に傾いてとても明るく見えるのが宵の明星の金星、 南西の空にやはりかなり明るく、黄色に光っているのが木星です。 この二つはよく目立つので、だれでもわかります。 明るさがやや劣って、色もややくすんでいますが、南に見えるのが、 環があるので有名な土星です。 金星に比べると明るさはずっと暗いですが、金星のすぐ西に火星も見えています。 このように四つの惑星が同時に見えるのは比較的珍しいことです。 これらの惑星をずっとつなぎますと、恒星が見えなくても、 天の黄道がどこを通っているか、およその見当を付けることができます。 なお、肉眼では見えませんが、金星のそばには天王星、海王星もありますから、 夕方には六個の惑星が出ていることになります。 いまは、一般の方に惑星を説明するのには、もっとも都合のよい季節です。

 水星は11月29日が東方最大離角で、西空にありましたから、 その前後には空に七惑星が見えていたはずです。 しかし、12月17日に内合になった後は明け方の空に移りますから、 水星が一緒に見えることは当分ありません。

 来年の4月には、水、金、火、木、土の五惑星が寄り集まって、 天球上で60度以下の範囲に入るという珍しい現象が起こります。 しかし、このときは太陽までもこの範囲に割り込みますから、 残念ながらこれらの惑星が一度に見られるわけではありません。

 ついでに述べておきますと、2年あまり後の2000年4月始めから6月末までは、 再び、水、金、火、木、土の五惑星が60度以下の範囲に集まります。 その少し前の2月15日が水星の東方最大離角ですから、その前後数日には、 60度より多少広がってはいますが、夕方にかなり固まった位置にある五惑星を、 夕方に、同時に見るチャンスがあるかも知れません。 この年の5月半ばには、五惑星がほぼ20度の範囲にまで集まります。 その次にこの五惑星が60度以内に集まるのは、2002年5月4日前後の数日で、 そのあと15年間、このような集合は起こりません。

 すべての惑星が一列に並ぶ状態を俗に「惑星直列」といいます。 このときは「惑星の潮汐力がそろって同時に地球に作用するので、地震、 火山噴火などさまざまなの異常現象が地球に起こる」などという説が まことしやかに述べられることがあります。 以前、1984年にも惑星直列が起こるといわれ、そのような噂が流れました。 しかし、これはまったく根拠のない話です。 まず、惑星が一列に並ぶという事態はまず起こりません。 1984年には、五惑星が辛うじて60度以内に入ったに過ぎませんでした。 一方、潮汐力は距離の3乗に反比例して小さくなりますから、 遠い惑星の潮汐力はごくごく小さく、たとえ合計しても、 地球に影響を与えるにはあまりにも小さすぎるのです。 したがって、このような説を気にする必要はまったくありません。

     1997年12月11日        国立天文台・広報普及室



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