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■しし座流星群の基礎知識

●11月18日に「しし座流星群」が出現するのは?

 そもそも流星は、地球に降り注ぐ「チリ」によって起こる現象だ。
 「しし座流星群」の素となる微小なチリは、テンペル・タットル彗星から放出されたもので、このテンペル・タットル彗星のことを、しし座流星群の母彗星(ぼすいせい)と呼んでいる。
 母彗星自体は、1998年2月28日に太陽に最接近した後、1998年3月8日に地球軌道面を北から南に通過した。しかし、母彗星の軌道上には、過去の接近で放出されたチリが拡散して分布しているので、母彗星の軌道に地球が接近するたびに流星群が見られるのである。そして、母彗星の軌道と地球が接近するのが毎年11月18日ごろで、ある特定の時期に流星群が見られるというのはこうした理由による。また、この時の地球の公転方向と、流星素物質の流れのベクトルの合成されたものが、地球大気に飛び込んでくる流星の方角となる。「しし座流星群」の場合は、それが見かけ上、しし座の方角にあるので「しし座流星群」と呼ばれるわけである。

<下:テンペル・タットル彗星>
テンペル・タットル彗星

<下:テンペル・タットル彗星の軌道>
テンペル・タットル彗星

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●流星群の素となるのは、彗星から放出されたチリ

 しし座流星群の母彗星であるテンペル・タットル彗星の回帰は3年前の1998年2月28日であり、現在は太陽から遠ざかりつつある。この母彗星の周りには、太陽接近時に放出されたチリが濃密に分布している。下は太陽に接近して、激しく揮発成分(水や一酸化炭素、シアンなど)を放出するテンペル・タットル彗星の想像図。彗星の核は、小さな岩石成分を含んだ氷の塊(汚れた雪だるまと形容される)だと考えられていて、太陽熱で融けた揮発性成分がガスとなって、核から噴出している。

<下:太陽に接近してガス成分を吹き出すテンペル・タットル彗星 想像イラスト/遠山御幸>

 このとき彗星核から噴出したガスは、イオン化して、太陽とは反対に伸びるイオンの尾(ガスの尾、プラズマの尾とも呼ばれる)を形成する。一方、ガスとともに放出された岩石成分の中で、流星の素となるチリより小さいミクロンサイズものは、太陽からの光圧で、しだいに彗星の外側に拡散していき、ダストの尾(チリの尾)となる。

ヘール・ボップ彗星1997年3月のヘール・ボップ彗星。太陽の反対方向に伸びる青色のイオンの尾は、プラズマ化したガス成分で、白く太く右方向に伸びているのがダストの尾。
写真撮影/高岡誠一


下:近日点通過前の1998年2月17日に撮影された、55P/テンペル・タットル彗星。この彗星は、それほど大きなものではなく、ごくありふれた周期彗星で、ダストの量も多いほうではない。写真提供/国立天文台
テンペル・タットル彗星

 彗星核から放出されたダストの中で、流星の素となる『ミリサイズ』の破片は、彗星核近傍にとどまり、放出時のスピードを得て、わずかに彗星核とは違う軌道をとり、しだいに彗星軌道上付近に拡散していく。この時、太陽接近時に彗星核から前方に放出されたチリは、加速され彗星核より大きな軌道となり、公転周期は長くなる。逆に後方に放出された場合は減速されて、軌道が小さくなり周期が短くなる。こうして、何回かの母彗星の回帰の後、彗星核のまわりに流星素物質の流れ(ダスト・トレイル)ができる。さらに、流星の素となるチリは、彗星核からの放出スピードだけでなく、太陽からの光圧の影響を受け、わずかに軌道が外側に変化する。これによって、チリの軌道は、彗星核より大きくなる傾向があり、全体としては彗星核の前方より後方の方により多く分布することになる。これが、流星群の素となるチリの流れの形成過程であって、彗星核自体が地球近傍を通過する前後、とくに通過後2〜3年にわたって、流星群が大きな出現を見せる理由でもある。

<下:母彗星のテンペル・タットル彗星の軌道に拡散していく流星の素となるチリの流れ>
チリの流れ

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