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宇宙望遠鏡で見たものはほんとうに系外惑星か?


【1998年7月23日 国立天文台天文ニュース(192)】

 この5月末に「ハッブル宇宙望遠鏡で系外惑星をはじめて見た」というニュースが世界中をかけめぐりました。その内容は、天文ニュース(178)でもお伝えしました。しかし、この発見にいくつもの疑問の声があがっています。

 この発見は、太陽系外研究コーポレーションのテレビー(Terebey,Susan)らのグループによるものでした。彼女らは「おうし座」の連星 TMR-1 から細い光の筋が伸びて、その先がかすかな光点につながっているのに気付いたのです。そして、「この光点こそ木星程度の質量をもつ惑星である」と推定し、TMR-1C と名付けたのでした。

 これに対するもっとも直接的な反論は、「この光の点が背景の恒星によるものではないか」というものです。遠距離の暗い恒星、ガスやダストで減光した恒星がこのように見えているのかもしれません。

 これに対して、テレビーらは、この視野に恒星が入り込む確率はたった2パーセントにすぎないと述べています。しかしこれは、問題の光点が恒星である可能性を完全に否定するものではありません。背景の恒星でないことを確認するには、その距離を測定して、それが主星の距離と一致する必要があります。

 テレビーらがこれを惑星と推定したもうひとつの主要な根拠は、光の筋で主星とつながっていることです。このつながりから、両星は物理的に関連していると考えたのです。

 これに対してもいろいろの反論がなされています。星形成の盛んな領域に、惑星とは無関係に、さまざまな原因で生み出されたダストやガスの筋やつながりがいくつも存在することは、よく知られた事実です。単に光の筋でつながっているように見えるからといって、それが真に両星を結びつけているかどうかはわかりません。

 もっと大きな問題点は、この光の筋が、ホジャーハイデ(Hogerheijde,M.R.)の作成した恒星からの物質流出のマップで、空洞の縁に沿った濃いガスの峯の部分にちょうど一致していることです。この事実は、光の筋が、惑星と推定された天体と恒星とを真に結びつけているかどうかに疑いをもたせます。さらに、マックロー(Mac Low)らは、木星程度の質量の惑星は、観測されたほど大きな物質の筋を生み出すことはないという研究結果を述べています。これらを比較考量すると、テレビーらが惑星だと主張する根拠は、かなり薄いものに思われてきます。

 目下、テレビーらは、この天体のスペクトル撮影を計画しているそうです。もしそれに成功すれば、物理的性質がかなり明らかになりますから、この問題に大きな前進をもたらすかも知れません。

参照 Kalas,Paul Science 281,p.182-183(1998).


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