常に変化し続ける木星の素顔

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【2012年10月22日 NASA

縞模様がまるごと消えては現れるなど常に変化している木星の大気の詳細が、天文学者とアマチュア天文家の協力で明らかになってきた。


木星の位置

2012年の冬は、木星が夜空の主役だ。宵のころ南東でひときわ明るく輝く。クリックで広域図を表示(ステラナビゲータで作成)

木星大気の変化

可視光線と2つの赤外線波長で見た木星大気の変化。2009年から2010年の間は南赤道(SEB)が姿を消して、2011年から2012年には北赤道縞(NEB)が消えかけていくことがわかる。クリックで拡大(提供:NASA/IRTF/JPL-Caltech/NAOJ/A. Wesley/A. Kazemoto/C. Go)

衝突閃光

今年9月10日に目撃された閃光。木星に隕石が衝突したとみられる。ここ4年間の間、木星で見られる衝突は過去の観測記録を上回っている。クリックで拡大(提供:NASA/IRTF/JPL-Caltech/G. Hall/University of the Basque Country)

小さな隕石の衝突が常に起こっている木星の表面では、大気の縞やホットスポット(明るい領域)などの模様が浮かんでは消え、雲があちこちで凝集しては霧消するといった変化が起こっている。

「わたしたちが見ているこのような変化は、木星全体で起こっています。以前から見られたような変化でも、近年の観測装置の発達でまた新しいことがわかります。この数十年で初めての変化や、あるいは全く見たことのないような状態になっている領域も見られます。さらに、木星に今ほど多くの衝突が発生したこともありません。どうしてこのようなことが起こっているのかを調査しているところです」(NASAジェット推進研究所のClenn Ortonさん)。

研究チームは、2009年から2012年まで赤外線で木星の観測を行い、それらを熱心なアマチュア天文コミュニティーが撮影した高画質の可視光線画像と比較した。南赤道縞と呼ばれる有名な褐色の縞が、2009年から2011年にかけてゆっくり消えて再び現れたことを受け、北赤道縞も調査してみた結果、同様の現象が北赤道縞でも起こっていることがわかった。北赤道縞は2011年、ここ100年以上で見たこともないほどまで薄くなり、今年3月からは再び元の色に戻りはじめた。

NASAの赤外線望遠鏡(IRTF)と国立天文台のすばる望遠鏡によるデータからは、縞の変化と同時に北赤道縞地域の深層部の雲頂面(雲の上面)が厚くなっていくこと、そして上層部の雲頂面は必ずしもそれと同調していないことがわかった。これは、深層部と上層部がともに変化していった南赤道縞とは異なる結果だ。またこの赤外線観測からは、「ブラウンバージ(白い領域でよく見られる褐色の小さな楕円型斑点)」と呼ばれる模様が、乾燥した空気の下降流が発生する、雲の少ない晴れた領域であることも明らかになった。

北赤道縞の南の縁に沿って見られるくすんだ青色の模様も調べられた。これらの模様は、木星で最も乾燥して晴れた領域で、大気の超深部からの放射が出ているため、赤外線では非常に明るいホットスポットとして見えることもわかった。1995年にNASAの探査機「ガリレオ」が小型探査機を落下させたのも、こうした領域の1つだ。これらのホットスポットは2010年から2011年にかけて北赤道縞の消失とともに消え、2012年6月には縞と一緒に再び現れた。

また、木星の閃光現象についても調べられている。木星の大気に飛来物が衝突すると閃光が発生し、多くのアマチュア天文家たちによって観測されている。2010年以降、直径15m以内と思われる天体の衝突が3回観測された。最近では、9月10日にアメリカで閃光現象が目撃されているが、Ortonさんたちの赤外線観測によれば、1994年と2009年の衝突のような恒常的な大気の変化は起こらなかったようだ。

「ここ数年間で木星への衝突が非常に多いように思えます。技術の高い多数のアマチュア天文家が、木星を観測して天文学者たちの研究に貢献してくれるからだと思います。こうしたアマチュアとの協力関係を大事に育てていきたいと考えています」(Orton氏)。

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