● VLTによる GQ Lup A b この観測は、ある天体からの光を中心星から空間的に分離して とらえるという、本来の意味での「直接観測」である。 しかし、この天体は「惑星候補天体」であって、現段階では、 「惑星」であるという確証は得られていない。 問題を難しくしているのは、この直接観測された天体が形成されて 100万年程度またはそれ以下しかたっていないことである。この年齢は 中心天体の年齢からの類推である。形成直後の天体は惑星であっても、 自身の収縮によるエネルギーで一般に明るく輝くが、どれくらい輝くかの 見積もりが非常に難しく、観測された明るさから 天体質量を見積もるところに非常に大きな不定性が生じる。 そのため、原論文では、天体質量の推定値は木星質量の1〜42倍と、 かなり大きな幅で与えている。これが木星質量の20倍以上などと いうことになると、惑星ではなく褐色矮星伴星だということになる。 したがって、原論文でも、「惑星」とは呼ばずに「低質量伴星」と 呼んでいる。 このように、現時点では「系外惑星の直接観測成功」と言うことは できないが、今後の詳細な観測により、天体質量の見積もりが 木星の10倍以下ということになれば、この天体が「惑星」だという可能性が 高くなり、この観測が「初の系外惑星の直接観測」になる可能性はある。 今後の詳細な観測を待ちたい。 東京工業大学・理・地球惑星科学 井田 茂