アマチュアこそ可能な「トランジット法」で系外惑星を探れ!ページ: 1 / 2 / 3 / 4

. トランジット法はアマチュアでもできるのか?


 木星クラス以上の大きさの惑星の場合、恒星面通過による減光は1%から数%である。これはアマチュアの使うCCDで検出可能な数字だ。系外惑星を新たに発見という面では、現状のプロの大規模観測や、将来の専用宇宙望遠鏡にはかなわないように思えるが、これらがカバーする空の範囲は限られるので穴はあるかもしれない。

 また、あらかじめターゲットを絞ることもできる。ヒッパルコス衛星などであらかじめトランジットらしい兆候がありそうな候補星や、重元素量の多い(理由はまだよくわかっていないが系外惑星を持つ恒星には重元素が多いらしい)候補星が選択され、公表されている。こういった恒星を狙うと、やみくもにトランジット法で捜索するよりも可能性が高くなるだろう。

英国のWASP(The Wide Angle Survey Patrol)プロジェクトは、ニコン200mm望遠レンズと冷却CCDカメラApogee AP10の組み合わせで観測に成功している。




 さらに可能性が高いのは、ドップラー偏移法ですでに見つかっている(あるいはこれから見つかる)系外惑星の恒星面通過をきっちりと検証することである。こちらは数十個に一個の確率なので、チャンスは大きい。なにしろ、ドップラー偏移法で見つかる惑星を持つ恒星は、大型望遠鏡を使っても10等級程度がせいぜいで、これまで発見されたもののほとんどは8等級よりも明るい。したがって、ドップラー偏移法で見つかった系外惑星の恒星面通過を狙うのであれば、8等級程度の恒星の測光観測ができる望遠鏡、つまり、口径十数センチの望遠鏡があればじゅうぶんなのである。というか、こんな明るい恒星を数メートル以上の大口径望遠鏡で撮像すると、あっという間にCCDが飽和してしまって実際上は観測できないのだ。

 先にも述べたが、なにしろドップラー偏移法で観測されて、さらに確実に恒星面通過の観測に成功した系外惑星は、これまでのところHD209458のひとつだけで、さらなる観測が望まれている。しかしながら、プロの科学者の場合、観測・解析において確実な成果を求められることが多く、この種の観測に挑める状況にはない。また、プロの大望遠鏡群は、いわゆる共同利用のため、各観測チームの割り当てられる使用時間は僅かなものでしかない。つまり、プロの科学者にとっては、トランジット法のような観測はやりにくいのである。また大型望遠鏡を使うには事前に申請が必要で、多くの人が順番待ちをしている。あらかじめ時間割り当てがきっちりと先々まで決まっているために、ドップラー偏移法で新惑星検出のニュースがあっても、すぐに望遠鏡を向けることはできないのだ。

 そこで、全世界の科学者で情報を共有し協力して探そうというプロジェクトが立ち上がっており(左のウェブサイト参照)、このサイトでは種々のデータが公開されている。このプロジェクトはアマチュアの参加も呼びかけている。アマチュアの必要性はプロの補助ではない。アマチュアならではの豊富な観測時間を有効に使い、新惑星の報告にもすぐに対応できるので、このようなプロジェクトでは主力になり得るのだ。



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NASAのTim Castellano らが ミードの20cm 望遠鏡と 冷却CCDカメラSBIG ST-7E で HD209458を 観測した例


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