太陽フレアの1万倍、赤色矮星で起こった最強のスーパーフレア

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地球から60光年彼方の赤色矮星で、X線強度が太陽フレアの1万倍、かつ2週間ほど断続的に続いた、最強で最長のスーパーフレアが観測された。

【2014年10月2日 NASA

スーパーフレアが観測されたのは、地球から60光年彼方にある「りょうけん座DG」という赤色矮星の連星の一方だ。連星を成す2つの星はどちらも質量、大きさとも太陽の3分の1ほどで、誕生したのは3000万年ほど前とみられている。2つの星の距離は太陽~地球間の3倍程度と近いため、どちらの星がフレア爆発を起こしたのかは観測では明らかになっていない。

「赤色矮星で起こるフレアは1日以上続かないと考えられてきましたが、NASAの天文衛星『スウィフト』は、2週間の間に少なくとも7回の爆発を検出しました。ひじょうに複雑な現象でした」(NASAゴダード宇宙飛行センターのStephen Drakeさん)。

連星系「りょうけん座DG」の一方の星で起こったフレアの想像図
連星系「りょうけん座DG」の一方の星で起こったフレアの想像図(提供:NASA's Goddard Space Flight Center/S. Wiessinger)

観測された爆発の原因は太陽で起こるフレアと同じで、星の大気中の活動が活発な領域周囲で磁場がねじれ歪んだために発生したものである。「磁気リコネクション」というプロセスで場が不安定となり、蓄積されたエネルギーが爆発的に放出されるのがフレアだ。

りょうけん座DGで観測されたフレアの初期のX線放射量は、これまでに記録されている太陽活動を圧倒するほどの激しいものだった。太陽フレアはピーク時のX線強度に基づいてA、B、C、M、Xの5つに分けられており、各クラスの大きさは1桁ずつ異なる(たとえば、XクラスはMクラスの10倍の強度)。

「太陽で起こったフレアとしては、2003年11月に発生したX45クラスのものが史上最強でした。りょうけん座DGで起こったフレアが太陽の位置で発生し、それを地球から見た場合、そのクラスはX45の約1万倍にあたるX100000となります」(Drakeさん)。

りょうけん座DGのフレアは、それだけでは終わらなかった。最初の爆発から3時間後に、また同規模のフレアが起こったのだ。1度目と2度目の爆発は、おそらく太陽でよく見られる共鳴フレアと考えられている。結局スウィフトは、11日以上にもわたり連続する弱い爆発を観測し続け、X線強度が通常に戻るまでには20日を要した。

太陽の3分の1程度の星がどのようにして巨大な爆発を起こせるのだろうか。その要因は、磁場を増幅させる速い自転だ。今回フレアを起こした星は、太陽の30倍以上の速度で自転している。私たちの太陽も、若いころはもっと速く自転しスーパーフレアを起こしていたはずだが、人類にとって幸いなことに、現在の太陽がスーパーフレアを起こすことはない。