大質量星誕生につながる電波源の固有運動を測定

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【2014年3月26日 VERA

大質量星形成領域にある電波源「HW2」の観測から、周囲のガスが回転しながら若い大質量星に吸い込まれていくようすが明らかになった。太陽の10倍もの質量の星がどのようにして生まれるのか、そのメカニズムを知る手がかりになると期待される。


観測したメタノールメーザーの固有運動

観測したメタノールメーザーの固有運動。色付きの点が観測スポット(色はメーザーの速度)、円錐は周辺スポットを平均した固有運動、点線の楕円はメーザースポットが分布している円盤を描いたもの。クリックで拡大(提供:国立天文台、以下同)

観測結果から算出された降着円盤モデル

観測結果から算出された降着円盤モデル。固有運動を示す矢印が回転しながら中心に向いている。クリックで拡大

山口大学の杉山孝一郎さんらの研究グループが、国立天文台のVERAを含むVLBIネットワーク(電波干渉計)を用いて、大質量星形成領域「Cep-A」にある電波源「HW2」を観測した。Cep-Aは地球から2230光年の距離にあるケフェウス座の方向の大質量星形成領域で、Cep-Aに存在するまだ若い大質量星のひとつが電波源HW2だ。

研究グループでは、2006年から2008年にかけて3回にわたってHW2をモニタリング観測した。29点のメタノールメーザー(宇宙に存在するメタノール分子によって増幅されたマイクロ波放射)スポットを調べたところ、固有運動は秒速0.2〜7.4km(平均は秒速3.1km)、回転および落下速度はそれぞれ0.5±0.7kmおよび1.8±0.7kmだった。これらの動きは、スポットがHW2から半径680au(約1000億km)の場所を回転しながらHW2に向かって落下している可能性を示唆しており、電波源の周囲のガスが回転しながら少しずつ中心に落ちていくようすをとらえたものと解釈できる。

太陽の10倍ほどもある大質量星がどのようにしてできるのか詳しいことはまだわかっていないが、(1)星同士がぶつかって合体していくモデル(2)星の周りのガスが回転しながら落ちて(集まって)いくことにより大きくなるモデルの2通りが考えられている。今回観測されたHW2周囲のガスの動きは、(2)を支持する結果となっている。

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