5.21金環日食まであと2か月

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【2012年3月21日 2012年金環日食日本委員会東京理科大学 近代科学資料館

5月21日に日本の広い範囲で見られる金環日食まであと2か月。天文ファン以外にも多くの人々が注目する一大イベントを前に、安全上の配慮や誰でも参加できる観測プロジェクトなどについて広く呼びかける発表が行われた。関連イベント情報も。


今月19〜22日に京都で開催中の日本天文学会春季年会において、日本天文協議会のワーキンググループ「2012年金環日食日本委員会」が日食に関する記者発表を行った。多くの人が金環日食を目にし天文に興味を抱く絶好の機会となる今回、同委員会では安全で適切な観察方法の周知を中心に、日食をより楽しむための情報の取りまとめなどを行っている。

日食を安全に楽しむために

金環日食を肉眼で見るべからず

金環日食を肉眼で見るべからず。1883年10月31日の金環日食前に描かれた錦絵(国立天文台図書室所蔵)に日食メガネと印を加筆したもの。クリックで拡大

太陽光線は非常に強力で目に有害なものだ。皆既食の最中は肉眼で見ることができるが、平時はもちろん、金環食を含めた部分食の間もまぶしすぎて欠けている様子はわからないばかりでなく、適切な方法・器具を用いて観察しなければたとえ一瞬でも目にダメージを与えてしまう

こうした「日食網膜症」の例は、1982年までに日本で報告されただけでも210例ある。5月21日の日食が部分食も含めると日本全国で見られることを考えると、安全な観察方法を最大限に周知徹底する必要がある。

同委員会ウェブサイトでは、日食を安全に観察するための注意事項や観察方法などを掲載した学校向けPDF資料(日食を安全に観察するために)を公開している。

主な注意事項を以下に抜粋する。

  • じかに太陽を見ず、日食めがねなど適切な道具を通して観察する
  • 通学途中に道路で観察すると交通事故などが起こりやすいため、事前に安全な観察のための検討指導を行う
  • 子どもが観察する場合は、必ず大人が同伴し指導を行う

アストロアーツ金環日食特設サイト: どうすれば見られるの?安全に観察するための必須事項と観察方法

金環帯の境界はどこ? 誰でも参加できる観測プロジェクト

予測される限界線

兵庫県の神戸市・明石市付近における金環帯北端の予測線。計算方法に違いによりばらつきがある。水色が探査機「かぐや」のデータを考慮して求めたもの。限界線はこのほか、九州中部、四国北部、近畿、中部、北関東、福島などを通る。クリックで拡大(国立天文台相馬充氏提供。背景地図は国土地理院の電子国土Webシステムより)

金環食が見える地域の範囲を「金環帯」と呼ぶ。この金環帯の境界(限界線)は、ある程度は予測されているものの誤差があり、実際に観測した場合と予測とを精密に比較しようとした研究例はいまだ知られていない。限界線共同観測プロジェクト「みんなで日食マップをつくろう!」は、限界線付近で日食を見られる人なら誰でも気軽に参加できる。場所の情報とともに、太陽のリングがつながって金環食が見えたか否かを報告することで、精密な限界線の調査に協力することができる。

研究者らのチームでは、太陽と月の縁がぎりぎり重なるときの「ベイリーズビーズ」(光がとぎれとぎれの環のように見える)を観測することで、過去最高の精度で太陽の直径を求めるという画期的な観測を行う予定だ。

また、月探査機「かぐや」の月面凹凸データから求めた現時点で最も高精度な限界線の位置も発表された。「せんだい宇宙館」ウェブサイトでは、これを地図上で見ることができる。


4月21日に東京・三鷹で第3回金環日食シンポジウム

いよいよ大きな話題となる金環日食の1か月前にあたる2012年4月21日(土)に、第3回目となる金環日食シンポジウムを開催します。日食へ向けて展開されているさまざまな取り組みの例をご紹介いたします。

また、適切な観察方法や安全確保のための知識など、日食を見せる立場の方にぜひ知っておいていただきたい情報をお伝えします。太陽をじかに見つめてしまったり、不適切な観察方法によって目を傷めてしまうことのないよう、2012年金環日食日本委員会は、より実践的な事故防止を呼びかけます。

参加者によるポスター発表の場や、ディスカッションの時間も設けます。日食当日を迎えるにあたっての疑問や悩みを参加者どうしの情報交換で解決していける場となることをめざしています。

日食前最後の金環日食シンポジウムです。ぜひご参加ください。

■ 日時:
2012年4月21日(土) 10:00〜17:00
意見交流会(懇親会) 17:30〜19:00
■ 会場:
国立天文台 三鷹キャンパス すばる棟(W1)大セミナー室ほか
■ 対象:
日食に関して一般市民対象の活動をされている方
■ 参加方法:
要申し込み。先着150名
■ 参加費:
無料。意見交流会に参加の場合3,000円
■ ウェブサイト:
第3回 金環日食シンポジウム「あと1か月!カウントダウン金環日食」
■ 主催:
日本天文協議会 2012年金環日食日本委員会

21日から東京・神楽坂で日食展 1か月前の公開講座も

2012年5月21日、「金環日食」が起こり、太陽と月と地球は一直線に並ぶ。日本のかなりの地域からリング状の太陽が見られ、国内のその他の地域では大部分が欠けた太陽が見られる。本州で金環日食が見られるのは実に129年ぶりとなる。

本企画展示は日食を通した科学普及活動を目的とし、江戸時代の日食に関する古文書から最新の観測記録まで、日食の魅力とその科学、安全な観察法について展示する。

■ イベント名:
日食展 5.21 奇跡の天文現象
■ 日時:
2012年3月21日(水)〜5月31日(木) 10:00〜16:00
※日・月・祝日・大学休業日休館
■ 会場:
東京理科大学 近代科学資料館 2F 企画展示室
JR総武線、地下鉄「飯田橋」駅から徒歩4分
■ 入場料
無料
■ 期間内イベント:
東京理科大学生涯学習センター 公開講座「金環日食と金星の太陽面通過」
4月21日(土) 14:00〜15:30
講師:武田康男さん(気象予報士)
受講料 3,000円 事前申込制
■ ウェブサイト:
日食展 5.21奇跡の天文現象(PDF)

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