この観測は、惑星からの光を恒星から空間的に分離して とらえるという、本来の意味での「直接観測」ではない。 これらの惑星はトランジットを起こす系外惑星として以前から 知られている。 このトランジットをするという性質を利用すると、惑星の 大気に関する情報が得られる。これまでにも、ハッブル望遠鏡を 使って、食のときとそれ以外のときの恒星からのライン放射の 強度の差をとって、惑星大気の Na, C, O の情報が取り出されて いた。食のときには恒星の光に惑星の大気を透過してきた 成分が混ざるので、差をとれば、その成分がとりだせるのである。 今回のスピッツァー望遠鏡の観測は、惑星が裏に隠れたときと それ以外ときの赤外線放射の差をとるという、似たような 発想の観測である。惑星が裏に隠れたときは完全に恒星だけの 放射だが、表に出ているときは、惑星の赤外線放射が まざる。惑星の赤外線放射は微弱なので、非常に微妙な差を とるという難しい観測である。 赤外線放射の連続波成分がわかれば、惑星の温度が見積もれる。 つまり、多くの異なる波長の観測結果を黒体輻射でフィットすると 温度が出る。しかし、今回のスピッツァー望遠鏡の観測は1波長で しかやってないので、正確な温度の見積もりはできない。 原論文を読むと、「仮にこういうモデルを仮定すると、温度は こうなる。ただ、そうすると常識的な値よりかなり低い値が出てしまうので、 今回の波長にはラインの影響があるのかもしれない。本当の温度はもっと 高いかもしれない。もっと別の波長での観測が必要。」と 書いてある。 このように今回の観測は、本来の意味での「直接観測」では ないが、とても重要な観測であり、今後このような観測を 続けることによって、惑星大気に関する重要な情報が得られるであろう。