【1997年4月9日 NASA プレスリリース 97-66】
NASAは4月9日、木星探査機ガリレオが送ってきたエウロパの最新画像から、
同衛星に過去、液状の水が存在した可能性があるとの見解を発表した。
木星探査機ガリレオは1997年2月20日、エウロパから約580kmまで接近した。
このときに撮影されたエウロパの最新画像から、
エウロパの表面には大きな氷の固まりが多数あることや、
表面が比較的なめらかでクレーターが少ないことが分かった。
これらの事実は、従来言われていたよりもエウロパ表面の氷が薄く、
そしてエウロパ自体が若い衛星である可能性を示している。
さらに、ロナルド・グリーリー博士(アリゾナ州立大学)は
「この氷の固まりはエウロパ表面の氷の下に水あるいは
シャーベット状の水があったことを示唆しており、現在も存在する可能性がある」
と述べ、従来言われてきた説(表面の氷の下に、隠れた海が存在する)
の証拠であるとする科学者もいる。
「これらの氷の固まりは浮いているようにもみえ、地球の氷山のようにもみえる」、
と語るのはガリレオ画像処理担当の一人、
マイケル・カール博士である。
ただし彼はまた、「わからないのは、なぜこうした氷の固まりが
回転するかということだ。現在のところエウロパ上の対流の関係を
受けているのではないか。」とも語っている。
また、エウロパ表面の様子から、エウロパの誕生がいつであったかについても、
科学者の間で大きな論争が起きている。
クレーターの少ないなめらかな表面を持つ衛星は比較的若いものだ、
という立場を取る学者たちは、これまで考えられていたよりも、
エウロパはずっと若い衛星だと主張している。
クラーク・チャップマン博士の分析によると、表面の氷はできてから
数百万年以内だとされるが、ただしマイケル・カール博士のように
少なくても10億年はたっているという見方もある。
エウロパ誕生の起源についてはさらなる調査・研究が必要である。
探査機ガリレオが次にエウロパに接近するのは1997年11月6日。
NASAを始めとする科学者たちは、その際新たに得られる画像から、
これらの謎の解明が進むのではないかと期待している。
なお、木星探査機ガリレオのより詳しい説明はNASA/ガリレオのホームページ
にて公開されている。