HALLEY's AstroGuide


★天体望遠鏡を使おう

 月のクレーターや惑星表面の模様、暗い星雲や星団を観察するためには天体望遠鏡が必要ですね。最近ではさまざまな光学系の天体望遠鏡が発売されていますが、大別すると次の3種類ということになります。

1.屈折式望遠鏡

 最もわかりやすい光学系で、筒先に置かれた対物レンズで集めた光を接眼レンズで拡大して見るものです。特に初心者は、天体望遠鏡といえばこのタイプを思い出す人が多いでしょう。取り扱いがとても楽で、細かい調整がほとんど不要な点は初心者にはありがたい長所と言えます。しかし、口径が10センチを超えると非常に高価になるのが難点です。屈折式望遠鏡の最大の欠点は、レンズの収差を完全に補正することが難しいことです。収差とは星からの光を完全に1点に集めることができないために起きるもので、屈折式望遠鏡の場合には、色収差の補正が難しくなります。これは、光の波長によって屈折率が異なるために起きる収差で、星を見ると虹色の色のにじみが発生します。最近では、レンズの組み合わせ方や光学ガラスの素材の発達で、かなり色収差を補正できるようになりましたが、そうしたレンズは非常に高価となります。購入時の選択基準としては、口径比(焦点距離をレンズの大きさで割った値)10以上なら、アクロマートレンズでOKですが、口径比8以下のものでは、同じアクロマートレンズでも、蛍石(フローライト)、や低分散ガラス(SDレンズ)を用いたものが必要です。口径は、初心者なら8センチ前後が使いやすいでしょう。

2.反射式望遠鏡

 反射式望遠鏡にはいくつかの種類がありますが、最も一般的なのはニュートン式と呼ばれるもので、凹面鏡で集めた光を筒の中で90°曲げ、筒外に引き出した所で接眼レンズで拡大して見るものです。屈折式に比べて安価で、口径を大きくできるという利点はありますが、光軸が狂いやすかったり、筒の中の気流の影響をうけやすかったりと、取り扱いにはやや注意が必要です。購入時の選択基準としては、初心者なら口径10センチくらいの有名メーカーのものを選ぶようにしましょう。もちろん口径は大きいにこしたことはありませんが、口径15センチ以上になると赤道儀(架台)を含めたシステムがかなり大きくなりますので、取り扱いが大変になります。

3.シュミットカセグレン式望遠鏡

 屈折式と反射式を組み合わせたような光学系で、凹面鏡で集めた光を凸面鏡で反射し、凹面鏡中央に開けられた穴から筒外に引き出したうえで接眼レンズで拡大するものです。筒先には補正板が取り付けられ、収差の補正を行っています。筒の長さを極端に短くできるのが最大の特徴で、口径20センチの望遠鏡でも全長は40センチほどしかありません。安価で持ち運びやすく、1クラス小さな赤道儀で済む、といった利点があります。しかし、低倍率を得にくく、光軸の調整が難しい、像の切れがいま一つ、といった欠点もあります。購入時の選択基準としては、口径20センチを目安にすればいいでしょう。

 以上のことから、取り扱いやすさを考えると、初心者用には屈折式望遠鏡なら口径8cm、ニュートン式反射望遠鏡なら口径10センチ、シュミットカセグレン式望遠鏡なら口径20cmが良いということになります。

より良い天体望遠鏡を手に入れるために

 さて、天体望遠鏡の性能はレンズの大きさで決まります。口径が大きいものほど、細部を見分ける力や、暗いものを見分ける力が大きいので、可能な限り大きい口径のものを選ぶようにしたいところです。

 実際には、持ち運び方法や、どんな天体を見たいのかなど、様々な要素が絡み合ってきますので、自分に合ったシステムを選ぶようにしましょう。また、惑星や月などを高倍率で観測するためには、光学系の優秀な望遠鏡でなくてはいけませんから、信頼できるメーカーのものを選びたいものです。
 初心者ほど倍率を気にする傾向にありますが、望遠鏡の倍率は接眼レンズを取り替えることで変えられるので、そう気にする必要はありません。もちろん、接眼レンズ自体の光学系も得られる像に影響を与えますので、良いものを選ぶようにしましょう。
 100倍の倍率で観測するということは、天体が100倍の大きさに拡大されて見えるということですが、このとき望遠鏡自体の振動も同じように拡大されてしまいます。ですから、筒を支える赤道儀(架台)部分は可能な限り重く、しっかりした、ガタのないものを選ぶようにしましょう。また、初心者にはモータードライブ付きの架台をお勧めします。多少は高価になりますが、日周運動で動く天体を自動的に追いかけてくれるので、観測がしやすいからです。さらに、最近ではコンピュータ制御で、自動的に見たい天体を導入できる望遠鏡も発売されています。目では探せない暗い天体を次々と、見ることができるので、こうした望遠鏡も初心者にとって力強い味方となってくれます。

 さて、どんな天体望遠鏡を選んだらいいのかわからなくなってしまったら、望遠鏡販売店で相談してみることをお勧めします。どんな天体を見たいのか、予算は、運搬方法は、といったことを話せば親切丁寧に教えてくれます。何よりも現物を見ながら選択できるのですから安心感もあります。



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