星ナビ天体画像処理コンテスト
 
☆トップ賞発表 テーマ「M81 M82」
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「M81・M82」のテーマには、9点の応募がありました。票が割れて混戦となりましたが、トップは埼玉県の吉野幸宏さん。両立が難しいとされるM81とM82ですが、それぞれの銀河に別個の処理を施し階調豊かに仕上げています。吉野さんは3つのテーマでトップ賞に輝きました。


 

M81, M82
素材提供/山田啓作

素材は星ナビ2003年5月号付録CD-ROMに収録されています。

作品003
トップ賞

吉野幸宏さん

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【使用ソフトウェア】 AdobePhotoshop7.0

【主な処理】

 16ビットモードのトーンカーブ調整により、色調と輝度分布を適正化。周辺減光の補正は必要なしと判断して行いませんでした。ここでごみの修正をスタンプツールで行います。次にM81とM82の処理ですが、2つを同一条件で処理するには無理がありますので、M81とM82を元画像から別個に切り出して処理しました。色については既に調整済みなので輝度だけをグレースケールモードで処理します。

 レイヤーでの処理が必須のため8ビットモードです。まずフィルターとレイヤーの機能を組み合わせて恒星像を消去して銀河だけを抜き出します。次に銀河像に強力なアンシャープマスク処理を加えます。輝度の飽和度、ノイズの量、画像のボケ具合でアンシャープマスクのパラメータを決定しますが、単一パラメータの単一画像ではバックグラウンドノイズが目立ち、階調も貧弱なため、最適ぼかし量の前後数段階の処理を行いコンポジットします。今回は10段階で処理してコンポジットしました。当然ながらM81とM82では処理パラメータがかなり異なります。このアンシャープマスク処理画像と元画像を使って、銀河だけを強調した画像を作成します。M81では中心核をつぶさないように中心核付近は元画像のまま、腕およびハロの部分が強調されるように、M82では本体を横切る暗黒帯と中心核から噴出する水素の赤いジェットがよりはっきりするように処理するのですが、ストレートにアンシャープマスク画像を重ねるとノイズ成分が耐えがたいほどになるため、今回はアンシャープマスク画像(恒星像は消去されたまま)をアルファチャンネルにペーストしてマスクとして使用しました。

 このアルファチャンネルを「選択範囲→選択範囲を読み込む」で切り出したカラーの元画像上に呼び出し、「選択範囲→選択範囲を変更→滑らかに」でノイズ分を平滑化して、トーンカーブでバックグラウンドの輝度を維持したまま上記のような画像になるようにトーンカーブを変更します。当然、トーンカーブはかなり極端な形となります。本来はここで強調に伴って目立ちはじめたノイズ成分を『輪郭以外をぼかす』コマンドで平滑化するのですが、今回は、元画像のバックグラウンドののノイズも高コントラスト化によって目立ち始めているので、大元の画像にペーストしてからノイズの平滑化を行いました。

 完成した銀河の画像を調整の済んだ大元の画像にペーストして、位置合わせをして合成します。レイヤーを統合し、最後に『輪郭以外をぼかす』コマンドを3回実行して最終画像の完成です。

 

【処理の感想、コメント】

 上記の方法は淡い部分を強調するいくつかの方法の中で、 最もノイズが強調されにくい方法です(もちろん比較の問題で、本質的には高コント ラスト処理ですから粒子は荒れます)。ただしこの方法hは対象を選び、構造のはっ きりしないもやもやとした散光星雲にはあまり効果がありません。M81の処理は銀塩 の印象とは大きく異なるため賛否両論あると思いますが、もし、時空を超越して数十 万光年くらいの間近からM81を眺めたら、肉眼の驚異的な階調圧縮能力により、こん な風に見えるのではないでしょうか。


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